ソフトバンクは22日の楽天戦(みずほPayPayドーム)に11-5で勝利した。「9番・右翼」で先発起用された川村が、2回1死一塁で右翼席にプロ初本塁打となる1号2ランを放った。チームにこれ以上ない勢いを与えたヒーローが明かしたのは、盟友への「まじリスペクトっす」との言葉。正木との関係性が表れたシーンが前夜にあった。
「特に意味はないですけどね。『俺でも打てたし!』って言っていました」
2軍監督時代から川村をよく知る小久保裕紀監督から「ザ・いい人」と表現される人柄。その優しさが垣間見えたシーンだった。正木はヘルメットを被り、エルボーガードを着用したままサヨナラの輪に加わった。柳町は慶大の先輩とはいえ、プロ野球選手なら自分のバットで試合を決めたかったはずだ。川村とのやり取りの中では、いつもと同じ爽やかな笑顔が見られた。
川村は1999年8月生まれで、2021年育成ドラフト2位で仙台大からホークスに入団。正木は同年のドラフト2位で慶大から入団と、2人は同学年&同期入団という間柄だ。少しずつチーム内でも増えてきた“1999年組”。川村も「仲田(慶介内野手)とかリッチー(リチャード内野手)が(1軍に)いた時もそうですけど、同級生の野手って少なかったので。そういった面では心強いですよ。お互いにいろんな部分を言い合っていますし、他愛もない話もします。ライバルではあるんですけど、刺激を受けながらです」と笑顔で話す。
3月19日に支配下登録を勝ち取った川村。6月21日に正木が1軍昇格すると、同じ外野手ということもあって関係性はどんどん深くなっていった。「正木は肝が据わっていますね。メンタル強いです。打てなかったら『わぁ!』とか言うんですけど。一緒にいることも多くて、(アウトになった時も)『惜しかったくね?』みたいな。切り替えがすごくできている選手だと思います」と言う。
7月以降は正木が右翼に定着。川村は守備固めがメインとなり、ベンチから盟友の姿を見守ることが増えた。「(シーズン)後半に試合に出ている中で、僕もわからないことだとか、いろんな経験をしたと思うので。まじリスペクトっす」と語っていたが、今度は自分が待望のプロ初アーチを放った。この日の試合後も、「正木がずっと試合に出ていて、仲もいいので。打ったら僕も嬉しいですし、刺激を受けながらできています」と言うのだから、正木もきっと喜んでくれているはずだ。
1号を放ったバットは、2軍の名古屋遠征に行った時に、昨年までチームメートだった中日・上林から授かったものだった。「たまたま話す機会があったので。『1本ください』とお願いしたんですけど、振ってみたらすごく感覚がよかったんです。1本しかないので、折れないようにしたいと思います」。3日前の19日には試合後の打撃練習では栗原陵矢内野手から「体全体で振る」と助言をもらい、「その感じでやってみたら(打球が)えぐかった」と変化を実感した。周囲の人たちも川村が“ザ・いい人”だから、手を差し伸べてくれる。
優勝へのマジックナンバーはついに「1」となった。川村はヒーローインタビューで「残り少ないシーズンですが、僕たちは勝つためにやっていくので、応援よろしくお願いします」と、高らかに宣言した。若手を積極的に起用してきた“小久保ホークス”の悲願が、もうすぐ叶う。