支配下掴んだ「上位3人」の裏で…実はいた“4位”の投手 倉野コーチが明かす選考の舞台裏

ソフトバンク・前田純、三浦瑞樹、中村亮太(左から)【写真:竹村岳】
ソフトバンク・前田純、三浦瑞樹、中村亮太(左から)【写真:竹村岳】

支配下になった3投手…倉野コーチから伝えた「君たちが一生懸命にやった結果」

 舞台裏を激白した。「上位3人」と、“4位”だった選手の話だ。ソフトバンクは24日、前田純投手、中村亮太投手、三浦瑞樹投手、そして石塚綜一郎捕手を支配下登録することを発表した。今季、育成から2桁を掴み取ったのは8人。その中でも、投手はこの3人が初めてだった。倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)も「上位3人」と表現し、1軍の舞台に立つ権利を与えた。

 支配下登録された時点での3人の成績から紹介する。前田純はウエスタン・リーグで12試合に登板して7勝1敗、リーグトップの防御率1.46。結果という面では、3人の中でも抜けたものを残していたと言えるだろう。三浦も11試合に登板して2勝3敗、防御率1.52と、前田純に迫る数字を示していた。中村亮にとっては、2022年以来2度目の支配下登録。18試合に登板して3勝1敗3セーブ、防御率3.19と多様な起用に応えるユーティリティ性を見せていた。

 倉野コーチは3人について「なんで支配下になったのかと言えば、育成の中の競争に勝ったから。本人にも『君たちが一生懸命にやって結果を出したから。この上位3人が今回は選ばれたということ』と言いました」と言及していた。「上位3人」と表現するということは、決断にまで競争する相手がいたということ。惜しくも“4位”で、2桁を掴めなかった選手の存在を倉野コーチは「もちろんです」と認めた。その“内情”について、こう明かす。

「惜しくも……という選手は、正直いました。それが誰なのかは絶対に言えないし『今あなたは何位です』だなんて途中経過を選手に言うこともしないですから。選手たちは自分がやるべきことをやるしかないんですけど、実際に3人が選ばれたというのは純粋な評価です」

 その選手の気持ちを考えれば、名前を挙げることは絶対にできなかった。まずは1軍の舞台に立つための権利を得てもらうために、目の前の1球に集中していないといけない。「(今回)選ばれなかった人も、まだここからチャンスはあると思う。どう実力をつけて、どうアピールしていくかという方が大事です」。育成という厳しい環境から勝ち抜いていくためには、落ち込んでいる暇はない。今回は支配下を逃したとしても、チャンスは諦めない選手に転がってくるからだ。

 チームは前半戦を首位で終え、2位にも10ゲーム差をつけた。リーグ優勝という最大の目標に向かって走っているが、8月になれば新戦力を補強することはできない。枠を空けたまま後半戦を迎えるのではなく、ギラギラした気持ちを持ち続けて結果を残した3人に、2桁を与えた。今季、1軍で先発を務めたのは9人。前半戦の1軍を振り返った中で、課題だと認識していた部分を補うために、3人が選ばれたと倉野コーチは言う。

「先発が必要なのに、中継ぎしかできないショートリリーフを3人も入れても仕方ないわけじゃないですか。先発と中継ぎ、というのはピースとして必要だと思う人選をしました」

 育成選手だけでも50人前後の大所帯。倉野コーチも開幕時から「僕の中では、早く投手を支配下にしたい気持ちはあります」と“親心”を語っていた。だからこそ、今回競争を勝ち抜いた投手3人を「育成の中でもトップ3という評価を得たということ。それは自信にしてほしいし、よく50人以上いる中から競争を勝ち抜いたと、僕も誇りに思います」とリスペクトする。「キャンプの時には8枠が空いていた。もっと(支配下に)してあげられたら、とも思うんですけどそこには野手とのバランスもある」と、選ぶ側にとっても複雑な思いはあった。

 一方で24日に発表されて以降、今回は支配下になれなかった投手たちを集めて、倉野コーチから話をしたとも明かす。「ここでモチベーションが下がって『もう支配下がなくなった』と、それはみんながっくりは来ると思います。そこから自分でどう奮い立って、立ち上がるのかは本人次第なんです」と背中を押すしかない。「僕が言ったのは『今からの方が大事。今からどれだけ力を見せられるかで道は開けてくる』と。どこまで伝わったかはわからないですけど、僕なりの思いは伝えました」と続けた。

 支配下登録の期限は、31日で終わる。支配下は69人となり、あと1枠だ。前田純ら2桁を掴んだ選手にも「今度は支配下の選手たちとの競争になる。そこを勝ち抜かないと、今1軍にいるメンバーよりもいいものを残さないと出られないですから」と、アピールが必要であることは変わらない。どんな瞬間もマウンドに立てるのは1人だけ。競争を勝ち抜き、選ばれた1人だけだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)