フロントが増強する「コーディネーター」とは? 城島健司氏が語る“ベールに包まれた役割

ソフトバンク・城島健司会長付き特別アドバイザー【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・城島健司会長付き特別アドバイザー【写真:藤浦一都】

「選手の指導方法、育成方針、そういうのを含めて、フロントがしっかり管理する」

 3年連続でリーグ優勝を逃しているソフトバンクはこのオフ、アダム・ウォーカー外野手をトレードで、山川穂高内野手をFAで獲得するなど補強を行った。選手層の強化だけでなく、フロントにおいても更なる増強が図られた。1軍投手コーチとして復帰した倉野信次コーチがヘッドコーディネーター(投手)を兼任。昨季までヘッドコーチだった森浩之氏をバッテリー、荒川久雄氏を野手統括兼守備走塁のコーディネーターとして置いた。

 そして、城島健司会長付き特別アドバイザーが各コーディネーターを統括する役割としてシニアコーディネーターに就任することがキャンプイン直前に発表された。ホークスは近年、この「コーディネーター」という役職の整備、体制作りを進めている。昨秋のキャンプは、このコーディネーターが中心となってメニュー作りを進めるなど、その力が徐々に強まってきている。

 この「コーディネーター」という職は一体、どんな役割をこなすのか。城島氏が、課される仕事について語った。

 役割の1つが球団全体で選手の育成方針、指導方針を一貫させること。城島氏は「選手の指導方法、育成方針、そういうのを含めて、フロントがしっかり管理する。指導は現場のコーチの人にお願いするんですけども、その意見の共有をフロントもする」と語る。

 ホークスは昨季から4軍制を敷き、120人超の選手を抱えている。1軍と2軍、2軍と3軍、3軍と4軍といった昇降格が各軍で行われ、属する軍が変われば、担当コーチも変わることになる。この時に各コーチが思い思いの指導を行っていては、方針は一貫せずに選手を迷わせることになりかねない。どのコーチが指導してもその教えが一貫するよう、球団として“この選手はこう育てる”という方針を全軍に浸透させるのがコーディネーターの役割となる。

 それとともにチームの核となる1軍におけるルールやサイン、方針を速やかに、2軍から4軍にまで浸透させることも重要な役目となる。

「小久保さんとも話をした。今までは現場だけで共有していたルールっていうのを、フロントにも上げてもらって、コーディネーターが1軍が使っているサインだったり、ルールだったりというのを、速やかに2軍、3軍、4軍に落としていく。使っているサインが変わったり、減ったり、増えたりしたときも、当然、同じ組織の中で戦っている以上、全て次の日には4軍まで書き換えられてるっていうのが必要」

 プロ野球球団は1軍がリーグ優勝を果たすことが目的となる。ファームは育成の場である一方で、活躍できる選手を1軍に輩出する場でもある。1軍に昇格してすぐにチームにフィットするためには、日頃から1軍でのルールや決まりごと、サインの中でプレーしているに越したことはない。常に1軍と2、3、4軍が同じ方針、ルール、サインの中で動くようにするのもコーディネーターの仕事という。

 ルールを浸透させるのはなにも日本人に限ったことではない。ホークスは5人の支配下登録選手に加え、育成選手でも7人の外国人選手を抱えている。城島氏は「日本人じゃない人たちにも、ホークスの選手である以上はこのルールで動いてもらうとか、こういう方針で野球をしてもらわないといけない。そのルールの作成、選手に対しての説明もコーディネーターの仕事になってくる」と語る。

 日本人選手にとっては“当たり前”のことであっても、文化のまるで違う外国人選手にとって未知のこと、というのは数多くある。「室内だったら帽子を脱ぎましょう、とか、家に帰ってきたら靴を脱ぎましょう、ご飯粒は残さないようにしましょう、みたいなものは日本の人は大体、教育されている。でも、彼らはその文化じゃないので、当たり前じゃない。であれば、そういうルールを作った方が簡単じゃないかな、と」。そうした“外国人選手教育”もコーディネーターが担う。

 ホークスが増強しているコーディネーター職は、メジャーリーグの球団ではごく当たり前のシステムだという。メジャーチームから傘下のマイナーチームまで球団の方針を伝え、浸透させる役割をこなすスタッフがいる。ホークスのコーディネーターシステムも、これを参考にしたもの。城島氏を筆頭にした新たな体制作りを進めている。

(鷹フル編集部)