“台湾AKB”がなぜ日本で野球チアに? 「視野を広げた」アイドル時代の日々

ハニーズ新メンバー・邱品涵(ちう・ぴんはん)【写真:福谷佑介】
ハニーズ新メンバー・邱品涵(ちう・ぴんはん)【写真:福谷佑介】

「AKB48での日々は非常に貴重で重要な時間であり、私の考えを変え、視野を広げてくれました」

 ソフトバンクのオフィシャルパフォーマンスチームの2024年度メンバー22人が28日、発表された。「ハニーズ」は継続メンバー9人、新規メンバー10人と大幅に顔ぶれが変わった。その中でも注目を集めるのが初の外国人メンバーとなる邱品涵(ちう・ぴんはん)。台北出身で「AKB48 Team TP」の1期生として活動してきた元アイドルだ。

 15歳の時に「AKB48グループ」の研究生となり、2018年の「AKB48 Team TP」発足と共に正規のメンバーとなった。2023年までの5年間、活動を続け、グループで7枚のシングルを発売、AKB48選抜総選挙や2019年の紅白歌合戦にも参加した。2023年8月の卒業後はインスタグラムのフォロワー5万人超のインフルエンサーとして活動してきた。

 そんな彼女がなぜ球団のチアになろうと思ったのか。インタビューの後編では「AKB48」時代の経験や日本での生活を志すようになったキッカケなどについて言及。チアチームには、インフルエンサーとはまた違った魅力を感じたと言う。

「過去のアイドル活動では、舞台でのパフォーマンスが一番好きで、ファンの方々と一緒に舞台の雰囲気を楽しむことがとても好きでした。ファンの皆さんと一緒に何かを成し遂げるような感覚があり、その瞬間でしか共有できない特別な思い出があります。この経験は非常に貴重で幸せでした」

 AKB48のメンバーとして活躍していた間はライブや握手会など、ファンと直接、交流する機会が数多くあった。多くのファンが応援に駆けつける中で行うライブパフォーマンスが彼女にとっても最も楽しい瞬間だったという。一方でインフルエンサーはなかなかファンと直接交流する機会はないのが現実だった。

「インフルエンサーは主にオンライン上でファンの皆さんと交流しており、対面する機会は少ないのが実際です。ですが、チアリーダーは毎日、ファンの方々と直接、顔を合わせることができます。球場での毎日を大切にし、皆さんと一緒にチームを応援し、試合を楽しむことができるように、毎日が忘れられない思い出に満ちていくことを楽しみたいです」

 かつて在籍していた“AKB48グループ”での活動も、大きな経験だった。

「AKB48の時はよく練習しましたし、メンバーたちと交流する時間も多かったです。まるで女子校のような感じでした。もともと私は非常に内向的な性格だったんですけど、毎月の公演の練習やテレビ番組に出演する練習を経験し、徐々に臆することがなくなりました。15歳から23歳まで在籍し、皆と一緒に成長し、大人になったことを感じました。ファンの皆さまも私たちを見守ってくれ、ゆっくりと成長し、良くなっていくのを一緒に感じてくれました」

 研究生から合わせて8年間、活動した「AKB48」で、日本への関心も徐々に強くなっていった。今回「ハニーズ」を志すようになったのも、そこに源があった。

「10回以上、日本に来ていますし、それぐらい日本のことが大好き」

「日本語に触れ始め、日本に興味を持ち始めたキッカケもAKB48でした。AKB48は海外にも様々な姉妹グループがあり、仕事の関係で多くの異なる国を訪れることがありました。異なる文化の人々と交流する中で、非常に面白いと感じ、異なる国で生活してみたいという思いが芽生えたんです。AKB48での日々は非常に貴重で重要な時間であり、私の考えを変え、視野を広げてくれました」

 日本語を学び、日本の文化に触れることで、次第に日本への興味が大きくなっていった。いつか日本で生活してみたい――。そんな思いが、いつしか強くなっていっていた。

 台湾の人たちにとって、日本はかけがえのない存在だ。彼女も同様で、何度も日本に旅行で訪れたことのある親日家だった。

「台湾には多くの日本からの輸入品があり、日本の食べ物やレストランも人気があります。日本の方々も台湾に慣れ親しんでいただいていると思いますし、台湾からも多くの人が日本を訪れています。私自身も10回以上、日本に来ていますし、それぐらい日本のことが大好きなんです」

「台湾では日本のプロ野球が非常に注目されています。野球について詳しくなかった私でも小さい頃から日本の甲子園のことを耳にしたことがありましたし、さまざまな日本のドラマやアニメでも日本の学校に野球部があることを見ました。最近では、台湾のニュースでも大谷翔平さんが頻繁に報道されているんです。これが日本のプロ野球に対する良い印象をさらに深めていると思います」

 だからこそ日本と台湾を、ホークスと台湾を繋ぐ架け橋になりたいという思いは強い。「台湾と日本のプロ野球のファン同士がお互いの応援や文化を知り、交流できるようにしたいと思っています。台湾の野球ファンがより多く日本の球場に足を運び、それと同時に日本のファンが台湾の文化を理解し、台湾の女の子の魅力、チアの魅力を知っていただけると嬉しいです」。ハニーズの新メンバーとしてだけでなく、初の外国人メンバーとしての役割の大きさを自覚している。

 慣れない日本での生活には当然、不安もある。「周りに知り合いがいなくて、少し寂しい気持ちになったりもします。日本語力がまだ十分ではないので、メンバーとのコミュニケーションにも心配はあります」。新生パフォーマンスチームのお披露目は3月3日、本拠地PayPayドームで行われる韓国・斗山とのプレシーズンマッチとなる予定。それまでの約1か月は練習と新生活に慣れる日々となる。

 最後には、ファンへのメッセージを残した。

「ホークスファンの皆さん、こんにちは! PayPayドームで皆さんと一緒に応援できることを楽しみにしています。まだ私の日本語は完璧ではありませんが、皆さんから学びながら成長していきたいと思っています。だから、皆さんから日本語を教えていただけたら嬉しいです。たくさんの笑顔で皆さんに素敵なパフォーマンスをお届けし、一緒に素晴らしい思い出を作りましょう!」

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)