若手の姿にどう思う? 柳田悠岐が語ったこと「実力があっても…」運が大切な深いワケ

自主トレを公開したソフトバンク・柳田悠岐【写真:竹村岳】
自主トレを公開したソフトバンク・柳田悠岐【写真:竹村岳】

昨年12月の契約更改で牧原大成、和田毅が育成選手に苦言「プロ野球選手じゃない」

 押しも押されもしないチームの顔は、若手たちの姿を見て何を思うのか――。どんな時も飾らない、大きな器を持つギータらしい考えだった。ソフトバンクの柳田悠岐外野手が18日、・大分・佐伯市内で自主トレを公開した。昨年末から、チーム内で相次いだ育成選手への苦言。2022年、2023年にはキャプテンを務め、間違いなくチームを代表する1人である柳田の意見を聞いた。独特な表現で、プロとして大切な要素を表現した。「己の運」――。

 昨年12月、口火を切ったのは牧原大成内野手だった。契約更改の場で、ファームの育成選手に対して「自覚を持ってやらないと終わってしまう」と、現実を突きつけたことを明かした。その4日後、今度は和田毅投手が「育成の選手はプロ野球選手ではないと思っている。ソフトバンクホークスというチーム名を背負ってプレーができるのは本当に贅沢なこと」と、牧原大の言葉に同調するように厳しい言葉を発した。

 事実、2023年シーズンは支配下67人でスタートして、2桁背番号を勝ち取ったのは木村光投手だけ。その木村光も、怪我の影響もあってまだ1軍で登板していない。育成をはじめ、若手が成長しきれていない現状を象徴している。柳田は常に1軍の最前線で戦っているだけに「あまり見たことがないので、ちょっとわからない」とした上で、自分なりの考えを語った。

「今、カジ(DeNA、梶原昂希外野手)とか直樹(佐藤直樹外野手)とかイヒネ(・イツア内野手)がいますけど、ポテンシャルは本当に高い。本当にワンチャンスというか、あとは己の運じゃないですか。実力があっても……って感じなので。己の引きと、実力があればいけると思います」

 柳田は1年目の2011年、1軍で6試合出場に終わり「楽勝で(クビに)なると思いました」と振り返る。通算1542安打、260本塁打を誇る柳田ですら、プロの壁にぶち当たったのだ。初めて規定打席に到達したのは2014年。レギュラーへの道を駆け上がっている時も「なるようになるかなと。やることやってダメだったらしゃあないなと思っていました。あとは運が良ければいけると思っていました」と、自分の力では左右できないことは考えず、プロとしての準備を貫いてきた。

 実際、プロ野球選手にとって運は重要な要素の1つだ。指導者との出会いで成長する選手もいれば、才能を潰してしまう選手もいる。先発から中継ぎへの配置転換など、きっかけ1つで花開く選手を何人も見てきた。小久保裕紀新監督も2軍監督時代、2軍でチャンスを待つ若手の姿勢を「打てる・打てないはありますけど、同じような準備ができているかとか。『どうせ俺は……』みたいな感じで準備をすると、絶対に女神は微笑まない」と表現したこともあった。

 当然、ワンチャンスを掴むには自分自身の実力が必要であり、運が舞い込んできた時のために備えを欠かしてはいけないことは言わずもがな。柳田も「運だけじゃないですよ。運も大事です」と言うが、尽くすべき準備を徹底している選手に、最後には必ず運も味方してくれる。運という言葉でプロとして大切な心構えを表現するのが柳田らしかった。若手に関して話している時は、言葉に厳しさはなく、終始穏やかな口調だった。

自主トレを公開したソフトバンク・柳田悠岐【写真:竹村岳】
自主トレを公開したソフトバンク・柳田悠岐【写真:竹村岳】

 大分・佐伯市内での自主トレは2年目となった。今回は3人の後輩の面倒を見ながら、キャンプインに向かって準備を進めている。高卒2年目のイヒネは、柳田に直接電話をかけて自主トレ参加を伝えた。「断る理由もないですし『いいですよ』って感じで」と快諾し、大切なこの時期をともに過ごしている。「まだまだやと思いますけど、ポテンシャルは高いと思うので、あとは彼が頑張るだけじゃないですか」と、イヒネにも佐藤直にもホークスの未来を担う1人になってほしい。そのためには「もちろん」と、運も大切だ。

「それ(若手からの刺激)もありますし、頑張ったろかなって感じです。(数字の目標は)3割、30本、5盗塁で。個人の成績ではまず納得のいく成績を残して、優勝して、辰年を終わらせたいと思います」

 柳田自身が重点を置いているのが、守備。アダム・ウォーカー外野手を巨人からトレードで獲得したことで柳田も「去年よりDHは減ると思う。守れるようにというのは意識しています」と、足にも肩にも気を配る日々だ。2023年は全143試合に先発出場して外野守備に就いたのが76試合、指名打者での先発が67試合だった。10月には36歳となるが「いけるんじゃないですか。楽勝です」と、外野守備も含めて1年間を完走してみせるつもりでいる。

 2024年は辰年。柳田は年男だ。漢字で意気込みを問われると「龍(りゅう)。龍(たつ)です、タツ。昇り龍です、イメージは。昇っていきます」と柳田らしい回答。報道陣を笑わせたが「え、なんで笑ってるんですか?」と真面目な回答だったようだ。新年が明けて、初めての公の場だった。さまざまなニュースがチームを揺らし、飛び込んでくる今。柳田の笑顔がチームを、ファンを強く照らしてほしい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)