東浜巨から「お疲れ様」 店の前で知ったサプライズ…重田倫明広報の大切な“宝物”

ソフトバンク・重田倫明広報(右)と東浜巨【写真:竹村岳】
ソフトバンク・重田倫明広報(右)と東浜巨【写真:竹村岳】

重田広報は昨年に現役引退、東浜巨からのいきなりの連絡で向かった場所は

 第2の人生に進む決断を、一番に伝えた。ソフトバンクの重田倫明広報は、5年間の現役生活を終えてユニホームを脱いだ。「自分が一番ワクワクする方向に進めたら」と進路について語っていた中で、選んだのは球団広報。2024年から、主にファームを担当することになる。その背景も、決断も、最初に伝えたのが東浜巨投手だった。そんな重田にとって、東浜からもらった大切なアイテムがある。

 重田広報にとって東浜は、オフの自主トレをともにしていた存在。ファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」の近辺に一軒家を借り、寝食まで同じ空間で過ごした。「人間的にもすごく参考にしている部分がある」と、心からのリスペクトをハッキリと口にするほどだ。広報への転身を報告すると、東浜も「喜んでくれました」と反応を代弁する。

 戦力外通告を受けたのは昨年10月28日。育成として5年間を過ごし、潔く、現役生活に区切りをつけた。広報としての新入団が発表されたのが12月22日。球団からのオファー、自分自身の決断など、節目でしっかりと東浜には報告を入れていた。広報への転身がすでに決まっていた12月中旬、東浜からいきなり連絡が来たという。

「いきなり『買い物行きたいからついてきて』って言われて、買いたいものがあるんだって思ったら自分の(ための)買い物でした。『5年間、お疲れ様』ということで、プレゼントをしてもらいました。本当にいきなりで何も知らなくて、買う店の前くらいでやっと知った感じでした」

 すでに重田は地元に帰省していた時で、東浜も自主トレの一環で都内を訪れていたそう。お互いのタイミングが重なったことで東浜がカッコよすぎる形で舞台を用意してくれた。「『ご飯行こうよ』って言われて『時間が空いているから買い物に行こう』って言われた感じでした」。重田が選んだのは長財布。ブランド名を明かすことはなかったが「でもすごく高級なものです」という。現役引退の節目でのプレゼントを“師匠”からもらったのだから、大切な宝物だ。

 財布に至るまでの経緯も、2人らしい思いが交差していた。東浜は「広報で使うものがいい」「ネクタイとかはもらうこともあるだろうから、財布にする?」と、あくまで思いを尊重してくれたという。一方で重田広報は「僕としては、自分が欲しい物というよりは巨さんのパワーをいただきたかったので『巨さん決めてくださいよ』って言ったんですけど」と、リスペクトするからこそ東浜の手で選んでほしかった。最終的に2人で話して財布という結論に至った。重田広報の5年間と、東浜の優しさがたくさん詰まった財布だ。

ソフトバンク・重田倫明広報(右)と東浜巨【写真:竹村岳】
ソフトバンク・重田倫明広報(右)と東浜巨【写真:竹村岳】

 クールでストイック。群れることもなく、我が道をいく。そんな印象が東浜にはある。重田広報も、初めて自主トレをお願いした時は「僕は鈍感なのか、結構ズカズカと行っちゃっていた。最初は確かにバリア、壁がある感覚はありました」と、緊張感を持って距離を図っていたそうだ。そんな東浜の印象が「本当にちゃんと接するようになっての1日目と、今の巨さんは全然違う」と変化していったのも、人間らしさにたくさん触れてきたからだ。

「根本的な部分から、人として尊敬できる人と出会えた気持ちが強いです。僕からしたら可愛い人間だなと思います。茶化したりもしますよ(笑)。意外にも“かまちょ”な部分だったり、寂しがりな部分だったりが見えて、巨さんも人なんだなって。そう思ってからの印象は変わっていないですね。一見は怖そうですけど、すごく可愛げのある、尊敬できる先輩だなって(自分の現役生活が)終わってみて思いますね」

 先発投手は、中継ぎや野手とも生活のリズムが違う。東浜自身も、遠征先に行っても「登板の2日前くらいから外に出ない」と語り、チームメートと食事に行くチャンスすら少ないようだ。重田広報も「人として怖いとかは全くないですよ。単純に勝手なイメージというか。それは巨さんと東京でご飯した時も話しました」と代弁する。「(自分からも)イジれますし『何なん』とかも言います(笑)。でもそれも、本気で嫌がる人じゃないです。節度を持っていれば受け入れてくれますから」とも笑う。思い切って懐に飛び込んだ重田広報だから知っている、東浜の一面がたくさんある。

 現役時代、支配下昇格という形で恩返しをすることはできなかった。今後は裏方さんの1人として選手、ホークスの力になることが恩返しだ。「巨さんのペースもあるとも思いますし、そこは自分からも察しながら。その中であんまり変わらずにいけたら」と今後の関係性についてもイメージする。これからは違った形で、またそばから東浜を支えていく。

(竹村岳 / Gaku Takemura)