優しさ、信念、怒り…小久保裕紀監督の「言葉力」 今シーズンの“切れ味鋭い”コメントまとめ

ソフトバンク・小久保裕紀監督【写真:福谷佑介】
ソフトバンク・小久保裕紀監督【写真:福谷佑介】

ファームも徹底取材してきた鷹フルが送る「小久保語録」…切れ味鋭い言葉の数々

 ソフトバンクの来季の新監督に小久保裕紀2軍監督が就任する。23日には福岡市内で就任会見が行われたばかり。これまでファームも徹底取材をしてきた鷹フルが、今季の“小久保語録”をまとめました。「ザ・いい人」「支配下になれない」「レベルの話じゃない、準備の話」など……。言葉の1つ1つから伝わってくる指揮官の姿勢、選手育成の信念に迫ります。(会員登録で2軍監督時代のコメントも見放題)

【負けるはずがない】
・春季キャンプ序盤に2軍の選手たちに伝えたこと。
――選手たちにはどんなことを伝えた。
「技術が劣っているのは仕方ない。技術はこのキャンプで当たり前だけど練習しなさい、と。野球に対するそもそもの考え方が上の選手よりも劣っているようでは、という話は初日にしたので。このオフに1軍の選手とも接点はあったけど、相変わらず意識は高いよって話もした」

――1軍の選手と接して、結果を出る理由がわかる。
「それはそうですよ。僕が現役の時もそうだった。ファームの選手に負けるはずがないと思っていたので。それは逆に、そこに殴り込んでいかないといけないからね。同じようにとか、それよりも意識が低かったら勝てるわけがないので。能力は一番最初にくる問題やけど、そもそも野球に対する考え方、取り組み、真剣さで1軍の選手を上回らない限りは、ね」

【ザ・いい人】
・3月17日のウエスタン・リーグ中日戦後、育成の川村友斗外野手について。
――川村選手がオープン戦で1軍を経験して感じる変化は。
「相変わらず『ザ・いい人』なので。いい人なんですよ。あまりがっつかないし、人を蹴落とすとか、足を引っ張るのは良くないけど、かき分けてでも1軍に行ってやるというのはあまりないタイプ。今回で欲が出てくればいいなというところですね。俺でもできるやん、みたいな。お坊ちゃんみたいな感じ……生まれも育ちも知らんけど」

【映画でもクサいくらい】
・侍ジャパンのWBC優勝について。
――WBCで日本が優勝した。
「最後、ちょこっと裏で見ましたけど、役者がそろったっていうか、こんなストーリーって映画でも考えたら、ちょっとクサいくらいの、なかなかないシーンでしたね。トラウトが最後で三振で、ダルビッシュから大谷にリレーなんて。でも本当に、本当に野球ってすごいなっていうか。栗山さんじゃないけど、すげえなって。昨日(メキシコ戦)のサヨナラ勝ちも含め、あのアメリカにアメリカの地で勝つわけですから。感動しました」

【1軍だったら乱闘】
・4月20日のウエスタン・リーグのオリックス戦後。3回2死一塁、左中間への打球で生海外野手と緒方理貢内野手が交錯。その後3失点を喫した。
――監督の現役時代も、投手を助けたいと思ってグラウンドに立っていた。
「助けたろうと思っていたし、あんなことがあったら平謝りでした。1軍だったら、多分チーム内で乱闘になっているくらいのものですよ、本当に。1軍は、投手と野手の仲が悪い時期は、めちゃくちゃ仲悪いので。お互いに生活がかかっている。点を取って打たれたら『しっかり抑えろや』って思うし、抑えてるのに点を取れなかったら『打てや』って思うし。西武の黄金時代なんて、投手と野手はめちゃくちゃ仲悪かったので。それが本当のチームですからね。勝つためにやっている。いつまでも仲良しこよしだけじゃ、ここからは抜けられないと思います」

【まだ折れています】
・5月18日のウエスタン・リーグのオリックス戦でリハビリ中だった川村友斗外野手が2軍戦に出場。
――PayPayドームでの3連戦。リハビリ組の川村選手を起用した。
「僕はあまりそこを気にしていないんで。西尾(歩真)とかは今日は5イニングまでがマックスだったんで、5イニングで代えました。川村は骨が折れた時点で、骨がくっつくまで待たなくても、自分が行けると思ったら行ってこいって話していたので。多分、レントゲン撮ったらまだ折れていますけど、できるから来ているんで。もう絶対使ってやる、すぐに2軍に呼んでやるって。明日からも2軍です」

「痛い痛いって言って、骨がくっつくまで待ってるヤツばかりなんで。そんなヤツいらんからね。骨は後遺症ないから、痛みさえ我慢したらプレーできるから、言ってこいって言ったら、アイツが言ってきました、だいぶ早く。いや普通ですよ、普通なんです、それが。あまりにもみんなゆっくりしているだけなんで」

【支配下になれない】
・7月5日のウエスタン・リーグの阪神戦後。
――仲田慶介選手が今日もマルチ安打。
「みんな打ったらそう思うでしょ。でも今日、仲田が1番怒られていたから。あのビーズリーでスチール(のスタートが)切れない。無死一塁の出塁で僕はバントのサインを出さないですよね。今日のメンバーで言うと、リチャード、野村大(大樹)、海野(隆司)、生海以外はみんな走れると思っているんで」

「あれだけクイックしない中でスタートを切れないようじゃ、支配下にはなれないです。レベルの話じゃないですよ、準備の話なんです。本多(雄一)コーチが丁寧に『このカウントでクイックはない』とか、試合前に全部伝えてくれているんですよ。そのシチュエーションでも走れないっていう。だったら凡退して帰ってきた方が怒られずに済んだんちゃうか、ぐらい怒られていましたよ。ヒット打ってるのに。でも、本当にそんなところなんですよね」

「あれで走れないと、誰も走れないです。あんなクイックをするピッチャー、日本球界にはほとんどいないんで。(渡邉)陸はその前に一、三塁で3回ぐらいスタート切りました。でも、あれも本多コーチからの後押しがあって走ったらしいんで、どこを目指して野球をやっているのかなっていう感じですね。現状で満足なんかなっていう感じ。現状で満足なら、あのプレーだと思うんで」

【貫き続けた指導法】
・ウエスタン・リーグ優勝に際しての単独インタビューより抜粋。
――Z世代の選手と目線を合わせることは難しかった。
「本来はここまで、コミュニケーションを取らなくてもいいかなと思いながら、意外にしゃべってしまっているという。そこは自分も、接し方を変えたというところかもしれないですね。ただ、コーチを飛び越えて指導したことは1回もないです。話すのであればコーチに『こういう話をした』っていうことを言うし、もしくは指導しようとした時には、担当コーチを必ず横に置いて、僕がしゃべっていることを聞かせるということはしました」

「結局、僕と選手が直接してしまうと、選手からすると上司が2人になりますよね。これが一番良くない。『監督にわかってもらっているから、別にいいんですよ』っていう構図になることが良くないんです、“1個飛ばし”が。コーチの権限、存在意義がなくなって動きが死んでしまう。それは絶対にないように、とやってきたのがこの2年間ですね。コーチの権限と責任はしっかりと守る。僕が直接、選手とやってしまうと、そういうことが起こりうるということですね」

【厳しい言い方はワザと】
・単独インタビューより抜粋。
――ストレートな発言が印象的。
「見ているなってわかっているので、あえてマスコミさんを利用させてもらっているのは、僕の中ではある。『選手に対する批判というか、コメント、マイナスな点は必ず本人に言う』っていう約束事を(ある監督が)していたっていうコピーを、15、16年前にもらったことがあるんですけど、僕はどっちかと言うと逆で、オシムさん(元サッカー日本代表監督、イビチャ・オシム氏)派で。コメントは選手が見ているだろうという前提のもとで、どっちかと言うと、キツい言い方をわざとしています。実際に会った時は、そこまで強い言い方はしていないです」

(鷹フル編集部)