首脳陣が語った“経験値の尊重” 打撃好調もベンチスタートとなった川瀬晃の胸中は

ソフトバンク・川瀬晃(右)【写真:竹村岳】
ソフトバンク・川瀬晃(右)【写真:竹村岳】

藤本監督は敗戦に「今日は2回だと思います」 二塁スタメンの三森は無安打

 ソフトバンクは23日のオリックス戦(PayPayドーム)に1-6で敗れた。先発した森唯斗投手が3回1/3を投げて4失点で3敗目を喫した。打線も相手先発の田嶋大樹投手から初回の1得点のみ。少しずつ体調不良から選手が復帰してくる中、この日スタメンを外れたのは川瀬晃内野手だった。好調から一転、ベンチスタートとなった胸中に迫った。

 20日にリーグ優勝を決めたオリックスと、クライマックス・シリーズ進出に向けて1試合も落とせないホークスとの一戦。初回1死、今宮健太内野手が9号ソロを放ち先制する。たたみかけたいところだったが、2回は1死一、三塁の好機を作ったが無得点。3回も1死から今宮が四球を選び中軸の前に走者をためたが、柳田悠岐外野手と近藤健介外野手が連続三振に終わり、田嶋を攻め切れなかった。

 今季の川瀬は対右投手の打率.205、一方で対左投手の打率.304だった。田嶋は対右打者の被打率.221、左打者の被打率.256と左打者の方が数字的にも打たれていた。内野ならどこでも守れる守備力も川瀬の持ち味。一塁で先発した野村大樹内野手は2回に二塁打。三塁だった井上朋也内野手もマルチ安打と結果で残した。一方で“病み上がり”の三森大貴内野手は2回、4回と2度の得点圏で凡退。7回の第3打席には代打を送られて交代した。

 22日に森浩之ヘッドコーチは、1軍復帰したばかりの三森について「『160キロくらいに感じました』って言っていた。そら久しぶりやったら感じるわって話もした」。病み上がりであることが打撃の感覚にも表れていたことを明かしていた中で、この日はスタメンに抜擢。試合後に藤本博史監督は「バント失敗とかね、外野フライとか。1本できていれば流れも変わっているでしょうけど。今日は2回だと思いますよ」と敗戦の要因を話したが、展開も含めて後手に回ったのは否めない。

 復帰してきた選手について森ヘッドコーチは「最終的には今まで戦ってきたメンバーで戦いたい。若手どうこうじゃなくてね、若手も頑張ってくれているけど、安心感っていうのは成績とか以外のところで力を発揮してくれると思う」と22日に話していた。厳しい戦いを乗り越えてきた選手の経験値、気持ちを尊重したいと言い「1日でも早く出たいっていう彼らの強い意思もある。晃(中村)も大丈夫と言ってくれているので、できる限り使っていきたい」と続けて説明していた。

ソフトバンク・今宮健太(左)と川瀬晃【写真:竹村岳】
ソフトバンク・今宮健太(左)と川瀬晃【写真:竹村岳】

 16日、特例2023で今宮、三森、中村晃外野手らが離脱した。川瀬は16日以降の6試合でスタメン出場して22打数9安打、打率.409の成績を残していた。主力が次々と抜けて苦境を迎えた中で、ユーティリティプレーヤーでもある川瀬がバットで結果を出したのは価値があった。離脱組が復帰して、ベンチスタートとなったこの日。川瀬はどんな胸中で受け止めたのか。

「いやいや、別にそんな。監督やコーチが考えている意図っていうのがあると思うので。そこに関しては、正直驚きもせず。(スタメンで)出ない方が1年間を通しても多かったので、特にビックリすることもなく。スタメンじゃないなら自分は途中から出る選手なので、準備だけはしっかりとしようと思っていました」

 チームが133試合を消化した中で、川瀬は6月に10日間の登録抹消があったものの、ほぼ1軍にい続けている。試合前の時点で91試合に出場して打率.220。途中出場が57試合で、先発出場が34試合。「途中から」という役割を何度も求められてきただけに、驚くことなく受け入れたようだ。直近の打撃の調子に関しても「調子は悪かったんですけど、開き直ってというか。打率も1割台でしたし、考えても仕方ないと思って。来た球に積極的にって思っていました」と言う。

 16日以降、チームは2勝5敗。若手を起用するも、苦しい状況を変えられずにいる。26歳の川瀬も「1つのチャンスだと思ってやっていましたし、CSに残れるかっていう厳しい戦いの中なので。チームに貢献しようと思いで」と明かす。ポジションが空いたのなら、川瀬にとってもスタメンに座る好機だったはず。「試合に出るチャンスは作っていきたいと思ってやっていました」と冷静な口調で足元を見つめていた。

「チーム状況もありますし、作戦もありますから。出るところで自分はしっかりと勝負していきたいと思っている。スタメンだろうが、途中からだろうが関係ない。この1軍の舞台にいるっていうことは、そういうことなので。(ベンチスタートでも)自分の良さが出ればいいなと思って、毎日やっています」

 8回の守備から二塁に入り、9回2死一、二塁では遊ゴロに倒れて最後の打者となった。残り10試合で、2位のロッテとも4位の楽天とも1ゲーム差。選手の状態を見極めて、この大混戦を抜け出すことができるのか。

(竹村岳 / Gaku Takemura)