なぜ柳町達は対左投手で使われないのか? 長谷川勇也コーチが指摘する“明確な課題”

左投手打率.133…6四球を奪うも、打席の内容は「良くないですね」

 プロ野球選手である以上、チャンスは与えられるものではない。自分でつかみにいかなければならないものだ。ソフトバンクは8日のDeNA戦(PayPayドーム)に5-6で敗れた。左腕の東の前に野村大樹内野手、正木智也外野手を起用したものの、攻略とはいかず。その一方で、スタメンから外れたのが柳町達外野手だ。相手先発が左投手の時、柳町が先発から外れる理由を長谷川勇也打撃コーチに聞いた。

 DeNA3連戦で相手先発は1戦目が今永、2戦目が石田、3戦目が東と左投手が続いた。柳町は1戦目に先発したものの、2打数無安打1四球に終わった。2戦目と3戦目には野村大が、正木は3試合連続でスタメンだった。3人は3試合で合計16打数1安打。相手投手の左右によって起用が変わり、そこから立場をつかんでいかなければならない選手に結果が生まれなかった。

 柳町は左投手に対して15打数2安打で打率.133も、6四球を選んでいる。.364と高い出塁率こそ残しているものの、左投手に対するアプローチを首脳陣はどう見て、評価しているのか。長谷川コーチに聞くと、その内容は「良くないですね」とハッキリ言い切った。

「左投手の時は安定して、出塁率こそ高いんですけど、なかなかヒットっていう形では出ていない。そこが彼の課題であり、左投手でもしっかりと打って出ていって、結果として打率.250でも打てれば、どんどん自分で自分の仕事場を増やしていけると思う。出塁率っていう大きな武器があるから、彼に関してはそこが課題」

「彼なりには工夫しているんだろうと思いますけど、もっと工夫できると思うんですよね。もっと、もっと。左投手に対して、どれくらい自分が結果を出しにいこうとしているのか、実際見えない。打席の中の姿を見たら、自分から左投手に対して『絶対に何か、感覚を見つけにいってやろう』っていうところは、正直、薄いです。もっとできますよ、あれだけの能力があるんですから」

 柳町は対右投手の打率が.311。左投手をある程度打てるようになれば、レギュラーの座がもっと近づくと長谷川コーチは言う。「寝ずに考えて、なんとか結果を出しにいくっていう、そこ(の意識)は弱いです」。レギュラーへの道筋が明確に見えているからこそ、期待の言葉ばかりが続く。チームにとってはもちろん、それだけ柳町個人にとって左投手を打つということは重要なのだ。

 正木は今季24打数のうち対右投手が7打数。柳町を含め、持ち味と課題がハッキリとしていようとも、打席数や経験を積まなければ、克服もできないのでは……という声も届きそうだが、長谷川コーチは「それはないな、それはない」と繰り返す。プロ野球選手なら、打席数を“与えてみたい”と首脳陣に思わせることも、重要な要素の1つだからだ。

「自分が打席に立っていなくても、ベンチで見ていて『俺ならこうするな』とか『こうやってやろう』という時間はこれまでもたっぷりとあった。1年目、2年目、そして去年も。でも、去年と変わったかというと、変わっていない。イコール、自分が出ていない時の左投手に対して、突き詰められていない。考える時間はたっぷりあるけど、考えていない」

「なんとなく(打席に)立っているだけでは、経験も何もない。なんとかしにいって、自分の中でも頭を巡らせて『これをやる』って決めて、それが良いか悪いか、というのが経験。なんとなく立って、慣れたから打てるとかっていう、そんなレベルじゃないから。そこはもっと彼の場合はやっていかないと」

 長谷川コーチは現役時代に通算1108安打を放った。自身が試合に出始めた時も「(相手投手の)左右で使われていましたよ」と振り返る。左投手が相手でも起用されるようになるために、乗り越えていったのは「中継ぎの左投手を絶対に打つこと」と即答する。「それしかないです。左でもチャンスあるんじゃないかっていう内容にするんだと思っていました」と、限られたチャンスをつかんできたと言う。

 1軍の舞台で左投手を打つ手応えをつかんだ瞬間を、長谷川コーチは「ありましたよ。鮮明に覚えています」と思い返す。2009年4月14日の西武戦(リブワーク藤崎台)の9回、左腕のグラマンから左前打を放った。「そこから出させてもらうようになったし、それでガッツポーズしたもんね」。自分の野球人生において、左投手を打つことがどれだけ大事なことなのか。自分の技術も気持ちも、全てを注いで乗り越えていかなければならない。

「それくらいじゃないと。ボケっとベンチで座って見ているだけで、声かかって『いけ』って言われてもね。『この投手はどうしたら打ちやすいかな』とか考えていないと、いつまでたっても無理ですよ。ずっと同じ数字のまま」。強調しておきたいのは、これは長谷川コーチなりの期待の言葉であるということ。柳町にとって、明確なレギュラーへの道筋だ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)