小久保2軍監督が願う“斉藤和巳のように” 田上奏大に2年連続開幕投手を託した期待

ソフトバンク・田上奏大【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・田上奏大【写真:藤浦一都】

「2軍の中ではエース格として引っ張っていく存在としての開幕投手」

 ソフトバンクの田上奏大投手が、3月17日の中日とのウエスタン・リーグ開幕戦で2年連続の開幕投手を務めることが5日、決まった。4回4安打1失点だったこの日の春季教育リーグ・オリックス戦後に小久保裕紀2軍監督から大役を託され「期待して選んでもらっていると思うんで、とても光栄なこと。嬉しいと思っています」と語った。

 2021年のドラフト5位で履正社高から入団。高校時代は野手で、本格的に投手に転向したのは高校3年の6月頃だった。公式戦での登板はなかったものの、最速151キロをマークし、ソフトバンクが指名した。1年目のオフに育成契約に変更となったものの、迎えた2年目に2軍で開幕投手を託され、4月には支配下に復帰した。

 4月12日に行われたロッテ戦で1軍公式戦に初登板初先発を果たすと、5回2/3を投げて2安打無失点と好投。昨季はプロ初勝利こそ掴めなかったものの、1軍で2試合に先発し、大きな経験を積んだ。今季は1軍のローテ候補にも名前が挙がり、2軍ではローテの柱として回るべき存在。小久保2軍監督も「2軍の中ではエース格として引っ張っていく存在としての開幕投手」と大きな期待を寄せた。

 この小久保2軍監督からの期待の大きさを田上自身も理解している。「2軍にいたら、やっぱりそこを取りに行かないといけないなと思っていたんで、狙いには行っていました。今年、2軍では僕が先発投手陣を引っ張っていけるようなピッチングをしていけたらなと思います」と力を込める。

 当然、2軍の開幕投手で満足などしていない。見据える先は1軍の舞台である。「今年は自分の中で初勝利は絶対しないといけないと思っているんで。2軍でもずっと勝つのは当たり前なんですけど、1軍で初勝利して、それから1軍のローテに自分も割って入っていけるようにならないといけないと思っています」。開幕投手はあくまでも足がかり。1軍の先発ローテに割って入るところを見据えている。

 小久保2軍監督は田上の姿を、偉大な“負けないエース”に重ねる。「球数は多くなりますけど、粘り強さは彼の特徴。1軍の投手コーチに戻ってきた斉藤和巳なんてランナーは出していたけど、最後のホームを踏ませなければいいんでしょっていう勝負強さがあった。圧倒的なピッチングができなくても、最後はしっかりゲームを作ってゼロに抑えてくるっていう、そういうピッチャーになってもらいたいなと思いますよね」。いずれは斉藤和巳のようなエースに。そんな思いも指揮官は抱いている。

 オフにはプエルトリコのウインターリーグに参加。「めちゃくちゃ期待されているんだなっていうのは本当に伝わるので、応えたい気持ちがある。去年よりもレベルアップした姿を見せないとなっていう気持ちが強い」。将来の右のエースになるために、2年連続のファーム開幕投手を全うする。

(取材・米多祐樹 / Yuki Yoneda)