脳挫傷からの復帰へ、苦悩と決意
見えていなくても、バットを振るしかなかった。生海外野手は今も、日々変化する体の状態と向き合いながら1軍の舞台を必死で目指している。2024年1月、自主トレ中に打球が頭部を直撃し、「左側頭葉脳挫傷」を負った。少しずつ体力は戻り、練習できる時間も長くなってきたが、症状が改善したわけではないという。
「大学(病院)の先生に『少しだけ無理してやってみよう』という感じで言われて。なるべく無理してでも、やってみようっていう感じです」
試合中には、目の前にいる投手がはっきりと見えなくなることもしばしばあった。ぼんやりと投げる動作はわかる。だが、バットに当てることは簡単ではない。「バットは振るけど、当たりません。見逃し三振も一時期めちゃくちゃ多かったんです……」。野球をする上で当たり前だった光景さえ、当たり前ではなくなった。
そんな中でも、自らを追い込む生海がいる。秋季練習では、守備練習の際に積極的にダイビングを試みるなど、アグレッシブな姿も見られる。2年前には構想外の通告を受け「正直怒りが勝っています。納得できない」という言葉も残した。その後、育成選手として再契約。あれから2年が経ち、生海が現在の状態と、胸の中に秘める赤裸々な思いを語った――。
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この先で分かる3つのこと
あの「怒り」から2年。今、球団に対して抱く本音とは
今も空いたままの「背番号37」に寄せる率直な思い
1軍への決意、生海を奮い立たせた最高の舞台とは
「キツくてもやろうという感じです。体力がないからきついのかとも思ったりしたので、今は守備練習でもいっぱい走ったりしています」
脳挫傷の症状が変わらず残る中、それでも現状を打破したい気持ちとぶつかり合う。体力をつけることも目的のひとつではあるが、「守れなかったら試合にも出られない」。まずはグラウンドに立ち続けるために、今は守備練習に重点を置いている。体力強化は練習量にも表れ始め「全体練習が終わった後も、個別練習に取り組めるようになったんです」とうれしそうな笑顔を見せる。
「だいぶ体力がついてきました。“無理やり”が良かったのかもしれないです。相当きついんですけどね。朝は頑張らないと起きれないです。立ち上がるのもきついですし、フラフラするから立つのも怖い。だけど、気合いで起きていますよ!」
2年前に語った「正直怒りが勝っています」
2年前、育成選手となった時には、簡単には受け入れられない悔しさがあった。「あの時は正直イライラしてしまいました……。納得いかなかったし、どうしても球団のせいだって思ってしまっていたんです」。自身が置かれた現状をなかなか受け入れることができなかった。それでも、今は違う。
「今は残してくれていること、野球ができる場所を与えてもらっていることに感謝しかありません」と、口にする。
支配下の時に背負っていた「37」は、今も空いたままだ。「ありがたいです。本当に嬉しいです」。新たに育成から支配下に登録される選手や、新人が加わっていく中でも、自分が背負った番号が残されている。そのことを心から喜んだ。
「もう絶対に1軍に上がります。上がるには守備も大事。まずは体力強化で守備をいっぱいやります」
今は守備を磨き、体力をつける。打撃の感覚を取り戻すことも、試合に出続けることも、その先にある。
改めて1軍を強く意識するきっかけになったのがみずほPayPayドームで行われた3軍戦だった。「PayPayドームは最高でした! 涼しいですしね。また戻ってこなきゃいけないです」。久しぶりに本拠地でプレーした時間は、目標を思い出させてくれた。まだ簡単に乗り越えられる壁ではないかもしれない。それでも生海は一歩ずつ、着実に前に進んでいる。
(飯田航平 / Kohei Iida)