異国のマウンドで掴む未来
自分には何が足りないのか。何を磨けば、次のステージにたどり着けるのか。その答えを探すため、異国の地で腕を振る。いずれも育成の内野海斗投手、飛田悠成投手、長水啓眞投手の3人が今オフ、プエルトリコのウインターリーグに参加する。約1か月半にわたる“武者修行”。待ち受けるのは、野球の技術とともに心身の強さも試される日々だ――。
「全員が行ける場所でもないので、そういうところは心に留めながら。1試合1試合が無駄にならないように、少しずつでも成長して終われるようにしたいです」
こう決意を口にしたのは、育成4年目の内野だ。今季はシーズン序盤に故障があったものの、復帰後は登板を重ねるごとに調子を上げてきた。シーズン終盤には2軍戦でも登板し、ファーム日本選手権のマウンドにも立った。多くの投手がいる中で起用された経験は、自身への期待を肌で感じる機会にもなった。
「コーチがどういう意図で僕を使っているのかというのは、感じられるところもあるので。そこは何も考えずにとかじゃなく、自分なりに感じ取って投げられたかなと思います」
積み重ねてきた成長を、次は異国のマウンドで証明する。そんな内野らが飛び込むのは、結果がシビアに問われる世界。昨年のウインターリーグにも帯同したフェリペ・ナテル3軍投手チーフコーチは、現地でプレーする選手たちについて証言する。「向こうにはマイナーリーグの選手も多く、みんなメジャーに上がりたいと思ってやっている。本当に1打席、1球に対する執着心が違う。生活のためなので」。日本とは異なる過酷な野球環境とは一体どのようなものなのか。そして3投手へ寄せる期待とは――。
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この先で分かる3つのこと
若鷹3人の自炊生活を支える、コーチからの「意外な支援」
廣瀬隆太を激変させた、現地監督からの「痛烈な問い」とは
ロッカーに銃…生き残りを懸けた現地の「容赦ないリアル」
試合は日帰り…片道2時間半の移動も
「まず移動が大変ですね。すべて日帰りなので、タフじゃないといけない。食事も自分たちで用意して臨む。だからこそ、日本の環境がどれだけ恵まれているのか、どれだけ多くの人が自分を支えてくれているのかを実感する時間になるんです。すごく人間力が磨かれて、成長できるところなんです」
野球以外の面でも、試されることは多い。ナテルコーチが昨年の経験を振り返り、まず挙げたのは移動の過酷さだ。試合開始は午後7時半。遠い球場であれば片道2時間半ほどかかることもある。試合終了が午後11時を回れば、帰り着く頃には日付が変わっている。それでも翌朝には、再び球場へ向かわなければならない。
食事も自分たちで準備する必要がある。球団スタッフの手厚いサポートを受け、プレーに専念できる日本とは環境が大きく異なる。内野、飛田、長水は3LDKの部屋で共同生活を送りながら、自炊する予定だ。米は、ナテルコーチの妻の実家が農家であることもあり、そこから支援を受ける。
「本当にありがたいです。日本からインスタントのお味噌汁だったりとか、日本を思い出せるような食材も持参します。恋しくなったらそっちも食べて、という生活になると思います」と内野。現地での生活に備え、3人で食事をしながら必要品をリストアップし、買い出しにも出かけた。慣れない環境でもコンディションを維持し、日々の練習や登板に向けて準備を整えることが求められる。
内野にとって、この1か月半は試合で結果を残すだけの時間ではない。「来年に向けて体作りもちゃんとしないといけない時期になるので。トレーニング面だったり、技術面もそうですけど、全てにおいてレベルアップして帰ってこなきゃいけない」。技術を磨き、体をつくり、異なる文化や生活環境に適応する。そのすべてを、来季の飛躍の糧とする。
銃を持ち込む選手、容赦ない生存競争
ナテルコーチは、昨年参加した廣瀬隆太内野手や大野稼頭央投手の変化を目の当たりにした。疲労がピークに達する中でも、試合に出ればガッツポーズを見せ、ヘッドスライディングで全力を尽くす。シーズン序盤には見られなかった頼もしさが、帰国する頃には表れていたという。
「だんだん慣れてくると口数も少なくなる。ご飯も食べられないよ、みたいなのが出てくる。廣瀬も最後の方は自分の課題は何なのか、それに対してどうアプローチしているのかというのを言語化してはっきり言えるようになったんです。(現地チームの)監督には『何しに来た? 何のつもりで野球をやっているんだ?』って結構熱く聞かれるんです。でも最後は、『俺はこうしに来たんだ』と思いをぶつけていたんで。これを越えた先に何があるか。自分を強く持っていないと諦めちゃうこともある。最後までやり切ったら間違いなく強くなりますよ。Day by Dayです」
ロッカーには護身用の銃を持ち込む選手もいるほどの環境。少しでも“やる気がない”と受け取られる態度やプレーを見せれば、チームメートから「あいつを外せ」と容赦ない声が飛ぶ。苦しい時に何を考え、どう行動するのか。自分自身と向き合い、壁を乗り越える経験こそが、プロとして揺るぎない土台を作る。
「1試合ごとにテーマを持って、それにトライして、収穫があればいいかなと思います」。異国の地で何を感じ、何を持ち帰るのか。支配下登録、そして1軍のマウンドへ。未来を切り拓くための1か月半が始まる。
(飯田航平 / Kohei Iida)