「初ホームランを打ったら……」
初本塁打の喜びをチームメートと分かち合った。「すごく皆さんが喜んでくれましたね」。26日の楽天戦(みずほPayPayドーム)、7回無死で庄子雄大内野手が放った打球は綺麗な弧を描いて右翼スタンドへと吸い込まれた。ダイヤモンドを回った23歳は、プロ初ホームランの喜びを豪快なガッツポーズで表現した。
「(柳町)達さんが『プロ1号』みたいな感じで1ってやってくれて、その後ろでクリ(栗原陵矢)さんが両手を上げてくれていたので、僕も『よっしゃ』となりました」
そんな中、ベンチの前で出迎えた牧原大成内野手だけが“悔しそう”な表情を浮かべていた。驚きと、苦笑いと、どこか愛おしそうな感情が混ざった顔は、ただの祝福とはひと味違う温かい空気を醸し出していた。「マジかよって言われました」と笑顔を見せる庄子。そこには日頃の密接なコミュニケーションと、先輩後輩の微笑ましい2人だけの“お約束”があった――。
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この先で分かる3つのこと
牧原大成の苦笑いの裏にあった「太っ腹な約束」とは
選手会長・栗原陵矢が試合後に明かした喜びの本音
プロ初アーチ後もブレない庄子雄大が語る理想の姿
「初ホームランを打ったら、スーツケースを買ってくれるっていう約束をしていたんですよ。なかなか打てそうになかったので、『今シーズンは無理やな』みたいな話を、つい最近マキさんとしていたんですよ。でも僕が今日打ったんで、ああいう表情だったんだと思います」
苦笑いの真相と「スーツケース」の約束
庄子は照れくさそうに笑いながら、直前に交わしたばかりの会話を明かした。今季は二遊間を組む機会が増えた2人。庄子のスタメン起用が増え始めた頃に初ホームランの約束が交わされた。ロッカーも隣の隣という縁から、プライベートでも食事に連れて行ってもらうなど急速に距離が縮まったという。それを最高の形で裏切られたのだから、牧原大のあのリアクションにも納得がいく。試合後にも「おまえマジかよ(笑)」と呆れ顔で突っ込まれたという。そのやり取りは、先輩の愛情を感じさせる微笑ましい光景だ。
歓喜の波は、牧原大だけに留まらなかった。栗原も両手を突き上げて、23歳の初アーチを喜んだ。「だって嬉しいじゃないですか、庄子がホームラン打ったら!」。試合後、嬉しそうに語っていた選手会長の言葉を伝えると、庄子は「僕もそれに応えてやっていました」と誇らしげに頷いた。
「豪太も言ってくれました。『“ようやく”打ちましたね』って」。年下の鈴木豪太投手からも、仲の良さを感じさせる祝福を受けた。だが、プロ初アーチを放ったからといって、この男が自分自身を見失うことはない。
「打たないよりは打てた方がもちろん良いです。かといって、今の僕に長打が最優先かと言われるとそうではないと思うので。小さくまとまるというわけではないですけど、シングルヒットと盗塁でチャンスメークするというところが、今の僕に求められているところだと思います」
記念すべき一発の後でも浮足立つことなく、自分の役割をしっかりと直視する。庄子らしい誠実さだ。それでも、この一本がバッティングの幅を広げるきっかけになる可能性だってある。「長打も打てて、ヒットも打てて、走れる選手になれたら。将来的には良いのかなとは思います」。俊足を武器にグラウンドを駆け回る姿の先に、思い描く未来像が確かに透けて見えた。先輩の財布を泣かせつつも、チーム全体を笑顔に変えた秋の夜。庄子雄大は、一歩一歩、確かな足取りで進んでいく。
(飯田航平 / Kohei Iida)