「本当にいろんな面においてリスペクトできる先輩」
ソフトバンクの中村晃内野手が27日、みずほPayPayドームでのオリックス戦で19年間の現役生活にピリオドを打つ。ホークス一筋でプレーしてきた“盟友”の引退に、共にチームを支えてきた男は何を思うのか。黄金期を支えてきた今宮健太内野手が見てきた中村晃とは――。プロ1年目にあった知られざる思い出、17年経っても変わらぬ2人の関係性がいま、明かされる。
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今宮健太にとって、中村晃は“特別な存在”だった。ともにホークスの中心を担ってきた柳田悠岐外野手とはまた違う存在。年齢は近くとも、どこか遠い――。それは異質な存在感であり、見本であり、尊敬する先輩だった。
「身近な先輩で言えば、柳田さんとはまた違った、本当にいろんな面においてリスペクトできる方だったなと思います。練習の取り組みとかは本当にすごいなと思いましたね。やるべきことを毎日、同じようにやっていく。どんな状況下でも何も変わることなく、ずっとやってきた姿をずっと見てきましたし、見習わないといけないなと思っていました」
2007年の高校生ドラフト3位で帝京高から入団した中村晃と、2歳年下で2009年のドラフト1位で明豊高から入団した今宮。同じ高卒で、1軍デビューはどちらも2011年。今宮は2012年、中村晃は2013年にレギュラーの座を掴み、柳田と3人で常勝ホークスを支える存在としてプレーしてきた。
今宮にとっては忘れられない、中村晃との思い出がある。
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この先で分かる3つのこと
プロ1年目の思い出、中村晃に連れて行ってもらった「焼肉」
2人きりは照れ臭い?17年の中で変化した「食事」と距離感
ロッカールームで打ち明けられた「引退報告」と受け継ぐ伝統
「僕の記憶の中では、一番最初に先輩とご飯に行ったのが晃さんだった気がします。晃さんが覚えているか分からないですけど、焼肉に連れて行ってもらったと思いますね。1年目に誘ってもらったのは確かに覚えています」
16年前、まだプロに入ったばかりで緊張の連続だった日々での出来事。明確な記憶があるわけではない。何を話したかも覚えていない。ただ、2歳上の先輩に誘ってもらい、食事を共にしたことは脳裏に焼きついている。
「怖くてご飯とかあまり誘えないし、晃さんってガンガン喋る方じゃなかったので。なかなか喋る機会もなかったんですけど」
寡黙に、背中で引っ張るタイプの中村晃と、人見知りの今宮。17年間、同じチームでプレーしながらも、その後はほとんど食事を共にしたことはなく、今宮も「晃さんとは食事に行けない」と言っていたほどだった。
食事へ行くようになるも「2人で行ったことはあまりない」
その関係性に微妙な“変化”が生まれた。お互いベテランと呼ばれる域に入り、食事を共にする機会が出てきた。
「ここ2、3年くらいですね。晃さんが選手会長になって、松田(宣浩)さんであったり、本多(雄一)コーチであったり……。いろんな先輩がいなくなったところで、世代的に言えば、僕たちがチームをまとめていけたらなって」
お互い、チームの屋台骨を背負うようになった。具体的になにか意見を交わしたわけではないと、今宮は言う。他愛もない話をしながら、チームを支える覚悟と思いを共有し合っていた。
貴重な時間――。ただ、その時間が2人だけではないのが、変わらぬ関係性でもある。
「2人で行ったことはあまりないですね。誰か他に、会話ができる人がいて。(西田)哲朗(広報)とか。2人で行ったら何の会話をすればいいか、分からないですもん」
1軍定着後、14年間にわたってチームを一緒に支えてきた先輩と後輩であり、盟友。ただ、2人で食事に行くのは緊張もあり、照れ臭くもある。中村晃と今宮は、今もそんな関係にある。
中村晃にとってもまた、今宮は特別な存在だ。引退を決断すると、柳田と今宮にだけは先に報告したという。今宮が告げられたのは、みずほPayPayドームのロッカールームだった。
ただ、不思議なことに、さほど驚きはなかった。
「晃さんは2個上ですけど、この年齢になって(引退が)近くなってくると『そういうことも考えながらやっているかな』とか思っていた部分も正直ありました。そういう人たちにしかわからない、踏ん切りの付け方というのがあるんでしょうから」
小久保裕紀監督らから松田宣浩、本多雄一、長谷川勇也(打撃コーチ兼スキルコーチ)らが受け継いできた「伝統」。中村晃の引退により、その伝承者がまた1人、グラウンドを去ることになる。
今宮はこう語る。
「晃さんも上の先輩たちを見てやってきて、僕も入った時の先輩を見てやってきて。ホークスの良き伝統を引き継ぎながら、やれている部分はあるのかなとは思います。昔ながらにしても、無くなっちゃったらダメ。無くしちゃいけない部分がある。僕が35歳になって、(周東)佑京とクリ(栗原陵矢)が30歳で、そこが意識を持ってやってくれるだろうと思っています。だから、ずっと優勝を争える位置にいるのかなと思うし、単純に強いだけじゃいられない。どれだけ戦力があっても勝てないのには理由があると思うし、どれだけ戦力が崩れても、去年みたいに誰かが出てきて上手くいくとか。それは本当に、偉大なる先輩たちがやってきてくれたことだと思います」
中村晃が紡いできた“魂”。それこそが、ホークスの強さだ。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)