3月27日に死球を受けて筋挫傷…復帰までの道のり
「どんな時も無駄な場面はない。最高の結果を求めて、いい準備をしていきたいです」。悲願だったパ・リーグ3連覇を成し遂げたホークス。自らの役割について静かに語ったのは、緒方理貢外野手だ。長期離脱から始まったシーズン。限られたチャンスで爪痕を残そうと、妥協のない日々を過ごしてきた。
今季初打席を迎えたのは、9月8日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)。外角球を左前に運び「自然な感じで打てました。あんまり“初打席”だとかは考えていなかったですね」と振り返る。20日の楽天戦(楽天モバイル最強パーク)では「8番・左翼」で初スタメン。3打数1安打と結果を残し、ポストシーズンに向けたアピールを続けている。
3月27日の2軍戦で右足に死球を受け、筋挫傷と診断された。1軍のグラウンドに戻ってくるまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。熟睡すら許されない激痛との闘い、そして観客席から見つめたチームの輝き。苦難の季節を乗り越えた男が明かす、復帰までのリアルな葛藤と感謝の思いとは――。
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この先で分かる3つのこと
1日に5回も絶叫…緒方理貢を襲った激痛と睡眠時の工夫
観客席から見たチーム…緒方理貢が抱いた葛藤と複雑な心境
初安打よりも強い思い…緒方理貢が復帰の裏で抱く感謝の形
睡眠中に絶叫して目が覚める「1日5回くらい」
「神経を痛めていたんですけど、寝相とかで動くじゃないですか。『これ』という理由はわからないですけど、本当に大きい声を出して目が覚めるというのが1日に5回くらいありました。熟睡はできないし、何回も起きながら。布団から片足だけ出して寝ていました。中に入れることもできなかったので」
ベッドで眠りに就いていても、あまりの痛みに“絶叫”してしまう――。期間としては長くなかったものの、それほどの症状が身体を襲っていた。熟睡できない日々が続けば、自然とストレスも溜まる。「何もできないだけじゃなくて、(生活にも)支障があったので。しんどかったですね」。壮絶なリハビリを乗り越えた、背番号57の本音だった。
できることも限られていた中、些細な楽しみは1軍戦を見ることだった。緒方は右足を負傷した翌日、3月28日の日本ハム戦を観戦するために本拠地を訪れた。内野席から全力で戦うチームメートの姿を見て、決意を新たにした。
「あの歓声の中でやりたいなと思いましたね。今まではチームの中にいてまた別に感じることがあったんですけど、外から見るのは初めてだったので。1つのプレー、1球にファンの方々が沸く。そもそも、開幕戦もめちゃくちゃいい展開だったじゃないですか。あらためて『いいな』と思いました」
復帰が近づくにつれて生まれていた心境の変化
リハビリ過程を終えて、2軍に合流。緒方自身が復帰へと一歩ずつ近づいていく中、気持ちに変化が生まれた。モチベーションとしていた日々の1軍戦だが「僕たちは1軍の試合に出てナンボ。みんながライバルなので。もちろん勝ってほしいし、同じ立場の選手を応援するというのもあるんですけど。難しい気持ちですよね……」。ファームにいてはいけない――。晴れ舞台に舞い戻ることが恩返しだと信じて、最善の準備を繰り返してきた。
9月1日に今季2度目の昇格。すぐに快音を響かせて、リーグ優勝の輪にも加わった。ここまでの道のりを振り返れば、感謝したい人の顔が頭に浮かぶ。
「自分がヒットを打ったことよりも、病院の先生も自分の時間に合わせて、他の患者さんもいる中で診察してくれたり、トレーナーの人たちも毎回病院に駆けつけて『どうやった?』と。一緒に考えて、復帰のプログラムを立ててくれたので。自分のヒットどうこうよりも、試合に出られるようになるまでの感謝の方が強いですね」
全力で走れるようになるまでの日々は、長かった。レギュラーシーズンの後にはクライマックスシリーズ、日本シリーズとさらなる厳しい戦いが待ち受けている。緒方の存在がチームを救う日が、きっと来るはずだ。
(竹村岳 / Gaku Takemura)