5回2死一塁に飛び出した今宮健太の好プレー
先発枠をかけた競争のマウンドであることはわかっていた。いつものように笑い、野手を頼り、腕を振り抜いた背番号64。日頃から心がけている“鬼コミュニケーション”が光った一戦だった。「野手に助けてもらいすぎです」。そう本音を漏らす上茶谷大河投手のマウンドには、不思議と引き寄せるものがある。
22日に行われた西武戦(みずほPayPayドーム)。先発した上茶谷は5回1失点と試合を作った。21日の楽天戦(楽天モバイル最強パーク)が雨天中止になり、スライド登板。小久保裕紀監督も「先発でCSに投げられるかのチャレンジ。いいピッチングをすれば候補に上がってくる」と語っていた。しっかりと結果を残し、背番号64も「CSで投げられるか、ギリギリのところだと思う。自分にとってはかなり大事な登板でした」と汗を拭った。
5回先頭に四球を与えると、犠打と源田の適時打で1点を返された。2死一塁で平沢が放った打球は二遊間へ。これを二塁の今宮健太内野手が好捕し、二塁で3つ目のアウトを奪った。野手陣との間で、1年間をかけて積み上げてきた深い信頼関係。そこには右腕が貫く独自の流儀と、同僚の栗原陵矢内野手をも呆れさせる“愛され力”があった。
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この先で分かる3つのこと
栗原陵矢に「寝たら?」と言われ上茶谷が返した言葉とは
野手に助けられる理由…上茶谷が貫く「鬼コミュ力」の真髄
栗原陵矢も絶賛!上茶谷大河が作る守りやすい「リズム」
「『もうええよ』って言われるくらい顔を合わせる」
「健太さんのプレーに僕、『わお』って言っていましたね。ありがたかったです。四球から送られて、簡単に1点を返された。悪い点の取られ方だったと思うんですけど、あそこを1点で止めてもらった。あれがヒットになっていたら、次の打者が小島選手だったので。前の対戦ではホームランを打たれていますし、そういう面でもめちゃくちゃ大きかったなと思います」
今季は35試合に登板して8勝2敗、10ホールド。先発と中継ぎの両輪をこなして、パ・リーグ3連覇に大きく貢献した。そんな右腕は春先、興味深い“本音”を漏らしていた。「野手に助けてもらいすぎですよね。それって数字で出ないんですか?」。明確な要因はわからないが、バックの好プレーにいつも救われる。その自覚があるからこそ、独特な表現で感謝の思いを口にしていた。
誰よりも明るいキャラクターの持ち主。多くの時間をともにする投手陣はもちろん、野手陣とのコミュケーションにおいては、どんなことを心がけているのか。上茶谷の答えは、いたってシンプルだった。
「“鬼コミュニケーション”を取ります。先発前だから『ゾーン』に入るとか、僕はないので。野手の人からずっと顔を見られるようにしています。『今日あいつ先発やのに何してんねん』みたいな。『もうええよ』って言われるくらい、顔を合わせていますね」
先発当日だとしても、ピリついた空気を放つことはない。「クリ(栗原)には『かみちゃさ、1回帰って寝たら?』って言われたことありますね。『嫌や! これがいいねん!』とか言いながら。人と話すのが好きなんでね」。いつも周りを笑顔にする右腕の存在。だからこそ、グラウンド上では野手もきっと“助けたくなる”はずだ。
栗原陵矢も目を細める「リズムがいいですよね」
同学年の栗原も、上茶谷が加入した昨シーズンから、1軍の舞台でともに戦うことを夢見てきた。「やっぱり嬉しいですよ」と頬を緩める。「帰って寝たら?」と思わず言ってしまうほど、野手に寄り添ってくる姿勢。当然、グラウンド上でのリズムにもつながっているという。
「かみちゃは、リズムがいいですよね。それは確実にあります。常にボールが動いているから、自然と野手の動きも良くなるのかなと。そういう影響はあるんじゃないですかね。ピッチャーとキャッチャーだけになっていないから、止まっている時間がなくて守りやすいです。投手の方からあんなに声をかけてくるのは、なかなかないことなのかなと思います」
西武に勝利したことで、ゲーム差は「10.5」にまで広がった。投手と野手が一丸となって掴んだ勝利。「慎重になりすぎず、投げられたのはよかったです」。移籍2年目でホークスに溶け込み、欠かせない戦力となった上茶谷。右腕の力がきっと、この先の戦いでもチームを救う。
(竹村岳 / Gaku Takemura)