マウンドでの頼もしさとのギャップ
想像以上の“過酷さ”に、思わず本音がこぼれた。17日に見事3連覇を達成したホークス。歓喜の輪の中で、ひときわ初々しい笑顔を見せていたのが、鈴木豪太投手だ。ルーキーでは唯一、美酒を浴びる「権利」を勝ち取った右腕。至福の時を味わったのだろうと思いきや、口から飛び出したのは、なんとも23歳らしい予想外の感想だった。
「いや、もう一旦は大丈夫ですかね(笑)」
今季は37試合に登板して3勝1敗5ホールド、防御率1.83という堂々たる成績をマークする右腕。一体、初めてのビールかけ会場で何が起きていたのか。そして、鈴木豪をシーズン最後まで1軍のタフなマウンドに立たせ続けた「あるきっかけ」とは。マウンド上の引き締まった表情とは違う、素顔に迫った。
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この先で分かる3つのこと
初ビールかけでルーキーを襲った「痛すぎる悲劇」とは
快投の裏にあった、倉野コーチからの「技術的な金言」
優勝1か月前、倉野コーチからあった指摘
初めてのビールかけの感想を尋ねると、鈴木豪は少し苦笑いを浮かべた。「思わぬアクシデント! ゴーグルが壊れたっていうアクシデントがあったんで。結構目が痛かったですね」。どうやら“戦場”は想像以上に過酷だったらしい。
倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)からも容赦ない祝福を受けていたようだったが、「もう誰からかけられたか分かんなかったです」と、多くの先輩たちに“可愛がられていた”ことを明かした。労いの意味もあったのではないかと向けると、「じゃあ嬉しいっすね(笑)。(倉野コーチにかけられていたことは)あまり知らなかったです」。どこまでもマイペースな受け答えが、なんともルーキーらしい愛嬌を物語っていた。
「その後の疲労がすごくて」
優勝というプレッシャーから解放されたことによる疲労なのかと問えば、「いや、ビールかけです」ときっぱり答える。初めて経験するお祭り騒ぎ。「それくらい、やっぱり体力を使うものなんだなと」。そうこぼす姿には、プロの洗礼を浴びたルーキーの純朴さがにじむ。
ターニングポイントになった試合
今季のターニングポイントとして、初勝利を手にした直後のロッテ戦(6月28日)を挙げた。「10回に投げて、ホールドがついたんですけど。しびれる後半の場面をゼロで抑えられたのは、僕の中で1つの自信につながった試合でした。『初勝利したのがたまたまじゃないぞ』と思わせるくらいの投球ができましたね」。
その裏には、倉野コーチとの地道な取り組みがある。「前半で横の変化をしっかり使っていくように言われてから、サイド(スロー)の僕としてのピッチングを確立していけた」。倉野コーチの助言と、それを体現した技術的な裏付けが、マウンドでの立ち振る舞いの中に自信を芽生えさせた。
優勝の約1か月前には厳しい言葉があった。「僕がちょっと投げられるようになって、浮ついていたところがあったので。1回引き締める感じで怒っていただきました」。登板しなかった本拠地での試合後に気持ちの緩みを指摘されたことも、最後まで1軍に食らいつく大きな原動力となった。
右腕はたくましい足取りでルーキーイヤーを駆け抜けている。ビールかけによる疲労も「今は大丈夫です」とスッキリした表情を見せる。これから先に待つのはCS、そして日本シリーズだ。「優勝はしたいですけど、一旦ビールかけは大丈夫かもしれないです」。にやりと語る鈴木豪の戦いはまだ終わらない。今度こそ頑丈なゴーグルを持参して、歓喜の美酒を心の底から楽しんでほしい。
(飯田航平 / Kohei Iida)