17日にパ・リーグ3連覇を達成…渡邉陸も祝勝会に参加
歓喜の輪に飛び込むべきかどうか――。迷っていた背中を押してくれた存在がいた。「やっぱりいいなと思いましたね。僕も人生で初めてだったので」。ビールかけを味わった渡邉陸捕手は、清々しく振り返る。小久保裕紀監督から授かった“褒め言葉”と、自らの立場に対する本音。美酒を浴びながら胸に誓ったのは、いつか「主役」としてこの場所に立つ覚悟だった。
ホークスは17日、球団の福岡移転後では初となるパ・リーグ3連覇を成し遂げた。喜びに沸いたグラウンドには1軍管轄の選手はもちろん、今季限りでの現役引退を表明している中村晃内野手や、春先の戦いを支えた木村光投手らの姿がそこにはあった。
「少しは力になれていたなら、よかったです。翌日は普通に練習したんですけど、ヘルメットから麦の匂いがしました」。プロ8年目の渡邉は今季15試合に出場して打率.229、1本塁打、2打点。主に上茶谷大河投手とバッテリーを組み、限られたチャンスで爪痕を残そうと必死に準備を重ねてきた。25歳が明かしたのは、一度は断ろうとしたビールかけに参加した理由だった。胸に秘めていた葛藤、背中を押されて浴びた美酒の真相に迫る。
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この先で分かる3つのこと
一度は断るも…渡邉陸の背中を押したコーチの熱い言葉とは
ビールかけで小久保監督が渡邉陸に語った褒め言葉の真意
引退する師匠・中村晃とともに叶えた渡邉陸の長年の夢
小久保監督から浴びたビールと“褒め言葉”
「(ビールかけに参加するかどうかの)希望を聞かれて、去年は断っていました。今年も断ったんですけど、村松(有人)コーチから『ぜひ』ということで。僕は大阪(で優勝が決まった時)だけの予定でした。そこで決めてもらったので、よかったです」
優勝を掴み取る前、スマートフォンが鳴った。電話の相手は、マネジャー。ビールかけへの参加の意思を問われ、一度は断った渡邉だが、強く誘ってくれたのが村松有人野手チーフコーチだ。背番号00が果たした働きを、首脳陣はしっかりと評価していた。その言葉に「嬉しかったですね」と頬を緩め、歓喜の輪に飛び込む決意を固めた。
9月15日から1軍は京セラドーム、2軍は杉本商事バファローズスタジアム舞洲でオリックス戦に臨んでいた。同じ地にいたからこそ、距離の問題を考慮する必要もない。仮に17日にリーグ優勝が決まらなかった場合、仙台には「行かないつもりでした」とも続けた。“たった1日”しかなかった、ビールかけのチャンス。どんな逆境でも諦めることなく、愚直に準備を続けた渡邉への「ご褒美」だったに違いない。
3000本も用意されたビールが、次々と空になっていく。渡邉がテレビカメラの前で思いを語っていると、頭上からビールが降り注いだ。瓶を持った小久保監督が優しく微笑んでいた。授かった“褒め言葉”もまた、大切な財産となった。
「『週に1回の中で、しっかりと準備をしてくれてよかった』というのは言われました。嬉しい気持ちもありながら、自分が目指しているのは“週1”のキャッチャーではないので。もっと頑張らないといけないです」
高谷裕亮コーチも認める成長「コツコツやった」
“相棒”としてバッテリーを組んだ上茶谷は、渡邉の存在についてこう話していた。「僕と陸は運命共同体。お互いの命がかかっている。もちろん自分のためが一番ですけど、僕たちはお互いのために頑張らないといけない」。その言葉を“知っていた”高谷裕亮2軍バッテリーコーチは、背番号00の姿に目尻を下げる。努力と準備を重ねて、成長を遂げているのは明らかだった。
「かみちゃの言葉があったじゃないですか。陸もそうなんですけど、ファームにいる選手は肝に銘じなくちゃいけない。僕らの指1本で、ピッチャーの生活が変わる。極端な話、勝敗1つで生活が変わる選手がいるかもしれないので。僕も現役の時に同じことを言われましたし、小久保監督も若手には『チームのためとか考えなくていい』と言うじゃないですか。『自分のために一生懸命にやってくれ』と。他の投手と組む時も同じだと思うけど、上茶谷があんなふうに言ってくれて、感じるものはあったと思いますよ」
2軍にいた期間は、スローイングという課題に向き合い続けた。アーリーワークからともに励んだ高谷コーチも「コツコツやっていたし、確率は少しずつですけど、確かに上がっています」と成長を認める。練習方法1つにしても、背番号00の口から「こうしたい」と明確な意見が出るようになってきた。課題と立ち位置を理解したうえで、環境に左右されることはない。その姿は“プロ”として確実に頼もしくなったはずだ。
自主トレをともにしてきた“師匠”の中村晃内野手が、今季限りで現役を引退する。「一緒にビールかけがしたい」と語っていた夢が、9月17日に現実のものになった。「晃さんが現役でいる間にできたのも、よかったです」。2月1日から禁酒をしてきた渡邉陸にとっては、久々に浴びた“美酒”。それでも歓喜の瞬間を振り返る表情に、笑みはなかった。「次は主力として、浴びてみたいです」。プロとして準備を重ねる渡邉陸なら、必ず叶えられる。
(竹村岳 / Gaku Takemura)