「練習をおろそかにしたくなかった」
歓喜に沸くチームの中に、前田悠伍投手の姿はなかった。17日、京セラドームで行われたオリックス戦に勝利し、パ・リーグ3連覇を達成したホークス。胴上げにも、祝勝会のビールかけにも、背番号41の姿はない。高卒3年目の21歳は、チームが頂点に立ったその瞬間を、どこで見ていたのだろうか――。
「準備が一番大切なので。胴上げやビールかけに参加してから移動して、今日練習することもできましたけど、嫌でした。練習をおろそかにしたくないので」
歓声に包まれる大阪から遠く離れた仙台の夜。チームが頂点に立った一方で、前田悠自身のシーズンはまだ終わっていない。歓喜の輪を自らの意思で離れたのは、「登板2日前には現地に入る」というルーティンを徹底して守ったからだ。胴上げの瞬間がいつ来ようとも、自身の準備を一切妥協しない。優勝の余韻さえ断ち切ってルーティンを貫いた。そんな左腕が見据えるものとは――。
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この先で分かる3つのこと
優勝の瞬間を見た直後に前田が「すぐ画面を切った」理由
仙台入りを志願した前田にコーチが投げかけた「言葉」
13勝目がかかる登板を前に前田悠が明かした「本音」
タクシーの中で見た歓喜の瞬間
「クリ(栗原陵矢)さんが捕った時に、ちょうどタクシーに乗ったところでした。飛行機を降りて、タクシーですね。その時に優勝が決まりました」
チームが試合を戦っていた時間は空の上だった。仙台空港に降り立ち、携帯で試合を見始めたタイミングが、まさに優勝の瞬間だったという。それでも左腕は「決まったなと思って、すぐ切りました。ホテルまで遠いので、ゆっくりしていました」。胴上げの瞬間までは見ることなく、体力回復の時間に充てていた。
その愚直なまでのプロ意識が、高卒3年目にして負けなしの12連勝という成績を支えてきた。前田悠が事前に仙台入りする意向を伝えた際、倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーターとの間でこんなやり取りがあったという。
「本人が集中したいということで。こういうパターンで『今日移動できるよ』と打診はしました。でも、あくまで本人から『集中したいので。可能であればそうさせてもらえますか』と言ってきました」
首脳陣としても、胴上げやビールかけの瞬間は経験してほしいものでもあった。だが、「決まらなかったら、明日(19日)は当然重要な試合になることも本人はわかっていたから」と前田悠の意思を尊重した。
タイトルの「意識はしない」
今季はここまで一度も負けを記録することなく、先発ローテーションの一角として腕を振ってきた。13勝目を挙げれば、最高勝率のタイトルを獲得する条件を満たすだけでなく、最多勝のタイトルさえも現実味を帯びてくる。
「僕は1試合をしっかり投げれば良いだけというか。とりあえずこの1試合しかないので。しっかりと良い準備ができればいいかなと思います。そこ(タイトル)は意識はしないですけど、結果的にそうなればいいと思います」
胴上げの輪で笑顔を見せる前田悠を楽しみにしていたファンも多いだろう。だが、左腕は「寝れないのは嫌なので」と淡々と語った。直前に控える先発登板に向けていつもの準備をする姿はさすがの一言だ。13勝目をかけて、19日のマウンドに上がる。
(飯田航平 / Kohei Iida)