3年前のZOZOマリンで流した涙
2026シーズン、ホークスは3年連続のリーグ優勝を飾りました。鷹フルでは主力選手はもちろん、若手やスタッフにもスポットライトを当てながら今シーズンを振り返っていきます。シーズン終盤の8月26日、ZOZOマリンスタジアムのマウンドで打ちひしがれたルーキーの鈴木豪太投手。その夜、ホテルの食事会場で大津亮介投手が“笑顔”でかけた言葉は「お前のせいで負けたな――」。“3年前の悪夢”を経験した背番号19だからこそ、伝えられた思いがありました。
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胸を突き刺すような敗北感も、その一言で救われた気がした。サヨナラ負けを喫した8月26日の試合後――。宿舎の食事会場では肩を落とすルーキーを囲むように、1人、また1人と投手陣が集まった。「めっちゃへこんでいましたね」。鈴木豪の様子を振り返ったのが大津だ。
落ち込むのも当然のシチュエーションだった。同日のロッテ戦。2点リードの9回に杉山一樹投手が痛恨の同点打を浴びると、延長10回にサヨナラ本塁打を打たれ、マウンド上で立ち尽くしたのが鈴木豪だった。ルーキーながら大事な場面を任され、がむしゃらに走り続けた右腕にとって、プロ初黒星は忘れられない記憶となった。
鈴木豪がホテルの食事会場に向かうと、松本裕樹投手と津森宥紀投手がすでに座っていた。そこに着席すると、上茶谷大河投手、大竹風雅投手、前田悠伍投手も加わった。生まれたのは、傷心のルーキーを励まそうとする投手陣の輪だった。大津も空いていた席に腰を下ろすと、沈み込んだ鈴木豪の表情を見て声をかけた。「お前のせいで負けたな」――。
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この先で分かる3つのこと
大津亮介の「毒舌の励まし」に秘められた、3年前の失敗談
失意のルーキーを包み込んだ、ホークス投手陣の神対応
プロ初黒星の夜を経た鈴木豪太が「愛だな」と感じたワケ
大津が流した涙「ここでやらかすか」
「いや、めっちゃへこんでいたので。少しふざけて楽にしようと。気にするなじゃないけど、初めての経験だったと思うので。打たれたのがCSとか日本シリーズじゃなくてよかったし、『全然いいでしょ』みたいな。『おまえのせいで負けたけどな』って。もちろん、ふざけながらですよ!」
その場が一瞬にして和やかな空気に包まれた。大津だからこそできた、ド直球な“励まし”。鈴木豪の姿に重ねたのは、自らのルーキーイヤーの記憶だ。3年前の2023年、同じZOZOマリンスタジアムで行われたCSファーストステージ第3戦。延長10回にサヨナラ打を浴び、シーズンが終了した。「後がないところで『ここでやらかすか』という感じだった」。あの時の絶望感は、今でも大津の胸に刻まれている。
「僕の場合は、自分がシーズンを終わらせちゃったので。豪太に関しては、まだまだ全然いい。むしろルーキーでここまで投げられているんで。同じように1年目に中継ぎで投げていた身としては、すごいと思います。優勝チームで今こうやって勝ちパターンにも入っているのはすごいことなので。『落ち込んでる時間はないと思うよ』という感じでしたね」
CSという後がない土壇場と違い、まだまだ挽回がきくペナントレースの最中。自責の念に押し潰されそうな後輩の心を、大津なりのユーモアで励ました。
「やっぱりチームを負けさせてしまった、俺のせいで負けちゃったという気持ちは、絶対に本人にもあると思うので。でも後がない試合じゃなかったし、そこまでへこまなくていい。フォローのつもりで声をかけました。ああいう気持ちを経験した方が、野球人生のプラスになると思うので」。優しい口調と表情でこう語る大津も、今季は先発陣の柱として躍動した。
鈴木豪太が感謝した“愛だな”
大津や先輩たちの温かさは、しっかりと鈴木豪の心に届いていた。「大津さんからは、ふざけて『お前のせいで負けたな』と言われましたけど、それも愛だなと」。一夜明け、23歳の表情に暗さはなかった。宿舎の部屋では被弾した際の映像を何度も見返し、反省点を冷静に分析していた。「フォークをあの高さに投げてしまったことだけが反省点でした。落ち込んではいないです。打たれないピッチャーはいないと思うので。そこはいい経験になった」。失敗から目を逸らすことはなかった。
「ツモさんやマツさんも『切り替え、切り替え』って声をかけてくださった。引きずっている先輩って、ホークスにはいないんです。僕も切り替えてやっていくしかないと思いました。『あのサヨナラホームランがあったから、この時に抑えることができた』と思えるような経験にできればいいと思います」
先輩たちの背中からプロとしての切り替え方を学んだ日。自身初の黒星が、また一つ大人へと成長させた瞬間だった。リーグ3連覇を成し遂げた今シーズン。投手陣の絆がルーキー右腕を立ち直らせた。かつては大津も付けていた背番号「26」。大事なものは静かに受け継がれる――。先に待つ頂上決戦のマウンドでも、鈴木豪太は力強く腕を振り続ける。
(飯田航平 / Kohei Iida)