「僕らは同じチームだから」
背番号25の体を後ろから包み込み、優しくかけた言葉があった。ロベルト・オスナ投手が口にした思いは、重圧がかかる場面でミスをした庄子雄大内野手の気持ちを軽くするものだった。「いつも庄子は、本当にいいプレーをしてチームを助けてくれているから」――。ベンチの後ろから庄子の背中に腕を回し、助っ人守護神が伝えた言葉とはどのようなものだったのか――。
16日に京セラドームで行われたオリックス戦。両チーム無得点で迎えた7回のマウンドに上がったオスナは、2本の安打を許して1死一、二塁のピンチを背負った。続く太田が放った打球は庄子が守る遊撃に転がったが、グラブから打球がこぼれ落ちる。すぐさまボールを拾い直して一塁走者を二塁で封殺したものの、併殺を奪うことはできなかった。その後、場面は2死満塁に変わり、オスナは紅林を渾身の直球で見逃し三振に斬って取った。
「紅林は、自分の中ではパ・リーグの中で1、2を争う素晴らしい打者。うまくいかないこともありますけど、今日は三振を取ることができて嬉しいですし、安堵しています」
そのシーンをこう振り返った右腕。ベンチに戻った直後、庄子の背後からそっと寄り添い、包み込むように語りかける姿があった。マウンドの孤独を知る背番号54は、庄子の耳元で一体どんな言葉を囁いていたのか。
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この先で分かる3つのこと
ミスした庄子の肩を抱き、オスナが囁いた「救いの言葉」
守護神の温かな想いに胸を打たれた庄子の「次への誓い」
マジック「2」点灯の裏で、2人が見せた「無心の覚悟」
「伝えたのは、『全然気にするな。これから前を向いて頑張ればいいし、いつも感謝しているよ』ということ。誰かのおかげで勝つこともあれば、何かがあって負けてしまうこともある。僕らは同じチームだし、全員で勝たないとダメ。エラーも野球の一部なので、みんなでカバーしてやっていきたいと思っているよ」
オスナはその瞬間の会話を笑顔で振り返った。ピンチを無失点で切り抜けたオスナに対し、庄子は「すいません、ありがとうございます」と先に伝えていたという。「オスナからは『我々はチームメイトだから、あなたがエラーをしたら私がなんとかカバーするよ』という言葉をかけてもらいました。本当にあそこでチェンジにしてくれて……感謝しかないですね」。優勝争いという重圧の中でプレーを続けている23歳は、右腕に頭を下げた。
オスナの言葉に感謝…「次は僕が」
オスナにとって、それは決して表面だけの慰めではなかった。「庄子はいつも本当にいいプレーをしてチームを助けてくれています。素晴らしい選手でも、エラーはしてしまうものです」。日頃から庄子が見せる泥臭い献身と奮闘を知っているからこその言葉だった。味方のミスを自身の投球で帳消しにする時もあれば、助けてもらうことだってある。その分厚い胸の内にある仲間への尊敬が、庄子を励ます言葉へとつながった。
これには庄子も胸を打たれた。「次は僕がいいプレーをして、オスナだったり、投手陣を助けられるように。死に物狂いで、初心を忘れずに、ワンプレーを必死にやっていきたいなと思います」。失敗を恐れて小さくなるのではなく、目の前のことに全力で集中する。右腕の一言で、もう一度前を向く覚悟が芽生えた。
チームは延長10回に4点を奪い、8連勝。優勝へのマジックはついに「2」となった。歓喜の時が近づき、周囲が熱を帯びる中でも、オスナと庄子が語ったのは無心で“その瞬間”へと向かう決意だ。「優勝は大事ですけど、まずは明日の試合に勝つことが大事」と右腕が冷静に語れば、庄子も同調するように「目の前の1試合に全力で向かって行くだけです」と言葉を重ねる。一丸となって3連覇を掴もうとするチームに隙はない。
誰かが転べば、誰かが手を差し伸べ、背中を叩いて再び走らせる。オスナが見せた温かな抱擁には、そんな思いが込められていた。
(飯田航平 / Kohei Iida)