常勝軍団だから感じるもの
高まる緊張感の中で抱いたのは、初めての感情だった。首位を走り、マジックを順調に減らすチーム。“常勝軍団”でなければ味わうことのできない心境が、この男をさらに進化させる。庄子雄大内野手が9日の日本ハム戦後に語ったのは、普段は感じたことがない重圧だった。
5-4で勝利した9日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)。庄子は2本の安打を放ち、遊撃でも好守を披露するなど、この日の勝利に貢献した。試合後、小久保裕紀監督が「このまま、ホークスのショートを取るんだという気持ちでやっているでしょうからね。今日は良いアピールになったと思います」と頷いた活躍の裏には、優勝のかかるシーズン終盤ならではの“緊張感”があった。
勢いに乗る若手が示す、順調なステップアップに見えるかもしれない。だが、ペナントレースが佳境を迎える中で、背番号25が背負うのは目に見えない重圧だ。ひとつのプレーが勝敗を左右する中で、どのように結果を残し、どのような思いでグラウンドに立っているのか。プロ2年目で、内野の要を任されている男がその思いを明かした。
会員になると続きをご覧いただけます
この先で分かる3つのこと
9回1点差の緊迫感…庄子が「いつでも来い」と臨んだ裏側
6回の安打を生んだ一塁走者・柳町が見せた好判断の舞台裏
一塁上の拍手に応えた柳町が明かした庄子への飾らない本音
日増しに感じるワンプレーの重み
「シーズン序盤に比べれば、ワンプレーの重みというか……。試合を重ねていくごとに、マジックが減っていくごとに、強く感じるようにはなりましたね」
特にそのプレッシャーを感じたのが、2点リードで迎えた9回の守備だった。守護神・杉山一樹投手が1点差に詰め寄られ、なお2死一、二塁となった場面だ。
「あの場面は同点も許されないですし、最後のバッターは五十幡さんで足が速い。『飛んできてほしくない』という気持ちではないんですけど、それでもやっぱり緊迫感はありましたね。『いつでも飛んで来い』という思いで準備はしていました」
緊迫した場面でショートを守る庄子には、初めて味わう独特の雰囲気があった。「バッテリーを含め、守備陣みんなが『ここで終わらせるぞ』っていう感じでいたので。緊張しましたね」。素直に吐露したその一言に、グラウンドに立つ選手が背負う重圧が詰まっていた。
柳町に送った拍手
それは打席の中でも同じだ。主に下位打線を任される庄子は、「なんとか塁に出るという気持ちは毎打席持っています」と自らの役割を語る。8番、9番からチャンスを作れば、上位打線には頼れる先輩たちが控えているからだ。この日もマルチ安打の活躍を見せた23歳が感謝したのは柳町達外野手だ。
庄子の3打席目は、2点リードで迎えた6回1死一塁の場面だった。ライト前に運んだ打球は、ノーバウンドでキャッチされるかどうかという打球判断が難しい当たりだった。ボールがこぼれたことを確認すると、一塁走者の柳町はすぐにスタートを切り、二塁でのフォースアウトを阻止。一塁上の庄子が二塁へ向かって手を叩くと、柳町もそれに応えるジェスチャーを送った。
「あれは一塁ランナーだったら、誰もが難しい判断の打球だったと思います。達さんに感謝しかないですね。あのヒットは」。庄子が照れくさそうに振り返ると、柳町は「行くかどうか迷ったんですけど、セーフになって、庄子のヒットにできて良かったなと思います」と、飾らない本音を語る。ギリギリの打球判断も、チームにとっては大きなポイントになりかねない。そして、アピールを続ける庄子にとっても凡打になるのと安打になるのとでは心境も違ってくる。
「落ちるボールをうまく拾えてライト前に落とせたので。2本とも僕らしいというか。これを続けていければ、もうちょっと結果もよくなるのかなという印象はありますね」
“主力”として戦う今シーズンの庄子。プレッシャーも日に日に増しているが、真正面から立ち向かう。これまでに感じたことのない緊張感の中で、1プレーに全力を注ぐ。その姿もまた、日増しにたくましくなっている。
(飯田航平 / Kohei Iida)