終盤戦でも凡事徹底「取れるアウトを取る」
どんな状況だとしても、徹底的に準備を重ね、野球に向き合う姿勢は変わらない。1勝の重みが増す終盤戦なら、その頼もしさは何倍にも増していく。「取れるアウトを取る。取れる点を取る。この時期になっても、やることはそんなに変わらないと思います」。そう語ったのは、川瀬晃内野手だ。自分自身の原動力は、2度と味わいたくない“あの悔しさ”――。
チームは8月25日から3カードにわたってビジターゲームを戦った。8試合で4勝3敗1分。あらためて勝つ難しさを実感しながらも、着実にマジックを減らしている。8月30日のオリックス戦(京セラドーム)でスタメン起用された川瀬は、2本のタイムリーを含む2安打2打点。観戦に来ていた家族の前でヒーローとなり、「いい姿を見せられてよかったです」と笑顔で話した。
優勝へのマジックナンバーは「18」。4日からは2位・西武との直接対決を迎える。堅実なプレースタイルが持ち味の28歳は、なぜこんなにも献身的に「凡事徹底」を貫くことができるのか。
厳しかった高校時代の練習、キャプテンの経験、ホークスで出会った先輩。その理由は数多く存在するだろう。その中で、川瀬が挙げたのは「あの悔しさは刻まれていますし、野球人生の中でも忘れることのない日だと思います」――。4年前に経験した“悪夢”を、きっぱりとした口調で振り返った。
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この先で分かる3つのこと
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2022年に喫したV逸…川瀬晃にも刻まれる苦い記憶
「目の前で優勝を逃したり、たくさん失敗してきたので。いい意味で経験させてもらった。それは絶対に忘れてはいけないので。そういうのがあるのかなと」
2022年10月2日、勝てば優勝という状況でロッテ戦を迎えたが、逆転負けでリーグ優勝を逃した。出場こそなかったものの、川瀬もベンチ入りしていた一戦。「ああいう負け方をして優勝を逃したのは、自分にとってもチームにとっても悔しい経験だったので。同じことはしたくないということですね」。今も2位には5ゲーム差をつけているが、勝負は最後の最後までわからない。身を持って知っているからこそ、開幕からすべての試合で川瀬は準備を怠らない。
4年前の“あの悔しさ”を知る本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチは、川瀬の存在に信頼を寄せる。「集中する場面が上手ですよね。常にスイッチはオンなんですけど、ベンチでは常に考えているし、観察もしている。ショートとしても、グラウンド全体を見ているので。勝つためには必要不可欠な存在です」。庄子雄大内野手とともに、遊撃として役割をこなす。優勝をかけた状況で負けた――。その経験を、決して無駄にしてはいけない。
「彼だけが思っているのではなくて、1つ勝つというのはチーム全体で思っていること。(2022年のような)経験をしていない選手もいますけど、そうやって経験してくれた人が引っ張ってくれたら、いい方向に行くんじゃないかなとは思いますね」
貴重なタイムリーも“結果オーライ”は許さな
ヒーローとなった30日のオリックス戦。2回無死二塁のチャンスで、川瀬に打席が回ってきた。初球に対してバントの構えを見せたが、バットを引いてボールに。ストライクであれば、バントを仕掛けるつもりだった。ヒッティングへと変更し、結果的には左前に弾む適時打を放ったが、ベンチの指示は右打ちによる進塁打だった。“結果オーライ”を許さないところも、やはり川瀬らしい。
「チームバッティングなので、たまたまじゃいけないなと思います。僕みたいな選手は、こういう厳しい戦いの中でもサインプレーが多くなる。そういうのはしっかりと決めて行きたいです。(終盤戦で)緊張もしますけど、自分の中では準備をすることが一番。そうすれば体も動いて気持ちもほぐれますし、プレー中でも思っていることを表現できる。体が勝手に動くくらい準備できればベストですし、それに尽きると思います」
パ・リーグ3連覇を目指す道のり。マジックを「0」にするまで、絶対に油断はしない。「自分に求められている役割というのがあるので、それを理解しながらプレーしていきたいですね」。重圧のかかる終盤戦。悪夢を乗り越えて準備の大切さを知った川瀬晃の存在が必ず頼りになる。
(竹村岳 / Gaku Takemura)