27歳が誓った「自分に勝つ」
期限を過ぎても、その姿勢が変わることはない――。育成2年目の大友宗捕手は29日、ファーム・リーグの広島戦(タマスタ筑後)で9回の先頭打者として打席に立つと、中前打を放って出塁した。「良いのが久しぶりに出ました」と、追い込まれたカウントの中で、しっかりと結果を残してみせた。
快音とともに放たれた痛烈な打球には大友の“気迫”が宿っていた。その姿に、斉藤和巳2軍監督も「追い込まれながら、しっかり反対方向にツーストライクアプローチができた」と目を細める。
育成選手にとって、7月31日は大きな節目となる。その日がシーズン中に支配下登録を行える「期限」だからだ。大友の願いは届かず1か月が過ぎた。気持ちの変化が起こりそうな中で、育成最年長の27歳は今、どのような思いで過ごしているのか――。期限が過ぎた直後、斉藤2軍監督との会話で、大友が自ら“お願い”したことがあった。
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この先で分かる3つのこと
・大友宗が斉藤2軍監督へ明かした“お願い”の真意とは
・大友の姿勢に影響を与えた2人のベテラン選手とは
・ファーム2位…急成長を証明する「守備指標」
「もし自分の行動に何か思うことや、違う方向に行っていたら言ってください」
その言葉の背景にあるもの
大友は斉藤監督との会話の中で、このような言葉を口にした。その真意は、自分自身の取り組みに「変化」が見えてしまうことへの怖さだった。
「自分ではやれているつもりでも、他人から見たら違うこともある。そんなに多くは喋らないですけど、監督はそこをしっかり見てくれていると感じますし、たまに会話した時にそういうことをポンと言ってくれるので。『何かあれば言ってください』と伝えました」
支配下登録期限が過ぎたからといって、野球人生が終わったわけではないが、多くの感情が入り混じったことだろう。それでも自身が納得のいく道のりにするためにも、姿勢に変化が表れることを何よりも恐れた。高校から大学、社会人、独立リーグを経てホークスに入団した苦労人。そんな27歳は、今抱いている心境を静かに語る。
「評価はされるんですけど、あくまでも自分がどうだったかを大事にしたいなと。『そろそろ自分に勝つ』みたいなことを思っていて、(大切にしたいのは)行動がプラスに働いているかどうか、とか。自分はどちらかというとそれが弱い方だと思っているので。落ちる時もあるし、できない時もあるから。それでも頑張ってやりたいと思っているので、だからこそです」
その思いに影響を与えたのが、中村晃内野手や嶺井博希捕手といったベテラン選手の姿だった。2軍にいようとも自分自身に必要なことを黙々と取り組む姿勢が、大友の胸に響いた。「僕もああいう選手になりたいです」。そう口にする表情には、どこか清々しささえ感じられる。
数値が示す進歩…「ブレることなくやれている」
2年目を迎え、技術的な進歩も明らかだ。捕手のスキルの中で、近年注目されているのがフレーミングの技術。「手応えはめちゃくちゃあります。去年に比べてもよくなっていると思います。数値的にも上がっていて、2軍でも上のほうにいると言われています」。フレーミングでどれだけ試合に貢献したのかという指標では、ファームの捕手の中でも2番目の数字を叩き出している。大友が必死に磨いてきた技術が確かな数値として表れている。
「ブレることなくやれているなと感じています。期限は終わりましたが、やることを変えずに自分ができることをしっかりやって、自分自身の成長に目を向けるように意識しているので。落ち込んだりはないです」
当然ながら、いい知らせがないまま期限を迎えることには、想像できないほどのもどかしさや悔しさがあるだろう。だが、下を向いてはいられない。大友の言葉からは、そんな思いがひしひしと伝わってくる。今年の7月に27歳を迎えた育成2年目。年齢的にも今季にかける思いは強かったはずだ。それでも、自分自身が納得する形を追い求める。そこにたどり着くまで、大友は必死に食らいついていく。
(飯田航平 / Kohei Iida)