脳裏に焼きついた残像
こらえきれない思いが、満面の笑顔になって弾けた。廣瀬隆太内野手が放った今季1号には、しっかりと進化の証が刻まれていた。19日の日本ハム戦(エスコンフィールド)。4回1死一、二塁の場面で左腕・細野が投じたフォークボールを捉えた打球がレフトスタンドへと消えていくと、三塁ベースを回る廣瀬の顔にこぼれるような笑みが広がった。ベンチ前で迎えるナインと力強くハイタッチを交わすその姿には、特別な手応えがにじんでいた。
16日に約1か月ぶりとなる1軍復帰を果たした25歳。その間の2軍生活で取り組んできたことが結果となって現れた一打でもあった。その背景にあるのは、脳裏から消えることのない“ある打席”の残像だ。「あれが一番残っていますね」。いつでも瞬時に思い出せる悔しい記憶――。屈辱を上書きするために、泥臭い試行錯誤を重ねてきた。
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この先で分かる3つのこと
・廣瀬の脳裏に消えず残っていた「屈辱の打席」の真実
・2軍降格時にコーディネーターが渡した「左投手攻略資料」
・課題の「半速球」を完璧に捉えたスイング改造のポイント
忘れもしないシーンだ。6月10日に行われた阪神との交流戦。初回2死満塁という好機で打席に向かった廣瀬は、技巧派左腕・大竹が投じた初球のチェンジアップを打ち損じ、三塁ゴロに倒れた。
「絶対初球真っすぐはないだろうから、『一番自信がある球で来るだろうな』と考えた時に、それがチェンジアップでした。それを狙っていたけど、思った以上に球がこなくて、空振りしそうになって。自分の想像を超えた球でした」
狙い澄ましたはずの半速球。捉えられそうで捉えられなかったことと、チャンスで凡退した悔しさが鮮烈な残像となって焼きついていた。2軍に降格した際には、荒金久雄コーディネーターから廣瀬の現状と左投手を打つための資料が手渡された。「打てなかった残像っていうのは、絶対にバッターの中に残っている」。荒金コーディネーターがそう語る通り、狙い球を捉えきれなかった悔しさを振り払うために、真正面から向き合った。
見直したスイングのメカニズム
取り組んだのは、スイングの根本的な見直しだった。半速球を捉えるために、バットの軌道の長さを出すメカニクスの改善に没頭した。その間も2軍では好調を維持。8月16日に昇格し、迎えたのが19日の日本ハム戦だった。直球を意識しながらも、高めに来た細野のフォークボールを、廣瀬のバットは滑らかに、そして力強く捉えた。
「半速球の球をしっかり捉えられたのは、今まであまりなかったことだったので。そこは進歩でした。技術的にメカニクスが良くなってきているので、そういう半速球も捉えられるようなバット軌道の長さが良くなってきていると思います」
そう語りながら少し照れくさそうに笑った廣瀬。その表情は、自らの成長に対する手応えを感じているようだった。脳裏に焼きついた過去から逃げずに、技術を高めて1軍に帰ってきた。本拠地に帰ってきて迎えた22日のオリックス戦でも、1安打2四球で勝利に貢献した背番号33。まだ手に残る感触と塗り替えた残像を胸に、打席で貢献し続ける。
(飯田航平 / Kohei Iida)