9試合ぶりの先発「最後に1本出て何とか」
思いを乗せた打球が右翼線で弾んだ。16日の楽天戦(みずほPayPayドーム)。「7番・二塁」でスタメン出場した今宮健太内野手が、この日の8回に迎えた4打席目でようやく快音を響かせた。3番手・江原のボールを捉えた打球は二塁打となり、6点目の起点となった。
スタメンは8月6日の日本ハム戦(同)以来、9試合ぶり。久々の先発起用に応えたい。その一心で立った打席だった。
「どの状況下でも、ここに居させてもらっているので。『何とか』という思いで常にやっています。久しぶりにスタメン抜擢された中で、古謝相手に(結果が)出なかったというのは痛かったんですけど。最後に1本出て何とか、とは思います」
淡々とした口調の奥に、悔しさと安堵が入り混じった。
この日任されたのは二塁のポジションだった。8月に入って今宮が出場した計7試合のうち、代打での起用が3回あり、先発出場は三塁手で2回、二塁手が2回だ。遊撃のポジションに就いたのは、6月28日のロッテ戦(ZOZOマリン)が最後。以降の2か月近く、途中出場も含めて、一度も本職である遊撃を守っていない現状にある。
プロ入りから長くショート一筋でポジションを守り抜いてきた今宮は、この状況をどう受け止めているのか。
「まあ文句が言えるような成績を残していないんでね」
直近の出場4試合連続で安打が出ているとはいえ、ここまで打率.214。首脳陣に起用したいと思わせるだけの結果を残せてこなかった自身に矛先を向ける。
この間、庄子雄大内野手が台頭し、川瀬晃内野手も存在感を示している。2人が遊撃を分け合う現状を今宮も否定はしない。
では、今宮が遊撃を守ることはないのか――。この問いに、本多雄一内野守備走塁コーチが明かした“狙い”は、極めて具体的なものだった。
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この先で分かる3つのこと
本多雄一コーチが語る今宮健太の遊撃起用の可能性
名手の起用位置が変わったデータ上の明確な理由
ポジション変更の打診にもやりがいを感じる胸中
本多コーチはキッパリと、こう強調した。
「まだ(今宮の遊撃の可能性が)消えているわけじゃないので。そこだけは言っておきます」
遊撃手の選択肢が首脳陣の中で消えているわけではない。ただ、庄子と川瀬を中心に据えているのには明確な理由、意図がある。
「健太の守備範囲的なものももちろんあるんです。数字に出ているんでね、そこは」
かつて絶大な守備範囲の広さを見せ、5度のゴールデン・グラブ賞に輝いた名手も35歳になった。その類稀なる技術やリーダーシップは変わらないものの、加齢による肉体の衰えがないはずがない。
実際のデータにもそれは現れている。株式会社DELTAのデータによれば、守備範囲の広さを示す指標「RngR」において2014年が18.7、2015年は11.9という驚異的な数字を残していたが、2021年は4.2、2022年は3.0に。怪我に悩まされることも増え、2023年にはそれが-8.9と大きく落ち込み、2024年は-1.2、2025年は0.4となった。
今季もここまで今宮の「RngR」は0.4。35歳にしてプラス指標を維持しているのはさすがと言えるが、これに対して庄子は3.0、川瀬は1.5。遊撃手にとって重要なこの守備範囲で、数字上は庄子と川瀬が今宮を上回っている。
加えて、急成長を遂げている庄子への評価が高まっているという側面もある。
「庄子も去年より安定というか、スピードも出てきて。いろんな経験をして『これがいい、これがいけなかった』とかを試合の中で経験できているのは一番大きいかなと思います」
本多コーチはこうも語る。
「負担がないポジションも“思いやり”だと思うんですよね。ショートは肩も要るし、足も使わないといけない。もちろんセカンドも同様なんですけど、距離が短い。一試合の中で球が飛んでくる打撃方向、データだったりも全部兼ね合わせて、晃をセカンド、庄子をショートでいくときもあるし、その逆もある。健太に関してもサードに入ったり、セカンドに入ったりはある。負担が全てじゃないけど、今の段階での適性ですね」
長く険しい143試合のペナントレース。シーズン終盤ともなれば、選手たちは満身創痍の状態で戦っていることがほとんどで、痛みを抱えていない選手は皆無だ。打球の傾向等も分析し、体への負担も考慮しながら、首脳陣は最適な守備配置を日々模索しているという。
「現時点で、ホークスが勝つためにはどうすればいいかを考えたらこの状態。健太がどうのこうのじゃなくて、ホークスが勝つためには現状はこれなんで」
本多コーチはこう強調した。目の前の1試合、今日この試合で勝つためにベストな布陣はどれか。その選択の繰り返しが、現状に現れている。
今宮もまた自らに与えられた役割を受け止めている。
「庄子がしっかり今やっている中で、セカンドで使うのかと考えれば、ショートで使った方がいい。これから先のこともあるだろうし。僕自身、今こうやって(1軍で)やれているのもセカンドの打診があって、サードの打診があってというところなので、そこはそこでやりがいを感じてやっています」
遊撃へのこだわりも、矜持も捨てたわけではない。ただ、勝つために必要とされる場所に立ち続ける。それが今宮健太という選手の在り方だ。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)