8回のチャンスで凡退…直後の守備で好プレー
同じミスはもう絶対にしないと心に刻んだ。帽子を飛ばしながら、全力で白球を追う。追加点も許されない状況で見せた決死のダイブに、スタンドからは拍手が注がれた。ベンチへと引き上げる笹川吉康外野手の表情に笑顔はなかったが、その胸中には確実に変化が生まれている。
14日に行われたファーム・リーグの阪神戦(タマスタ筑後)。2点ビハインドの8回2死二塁で、背番号44はワンバウンドした球に手を出し、3球三振に倒れた。直後の9回表に迎えたのは、2死三塁のピンチ。岡城が放った打球が右中間に飛ぶと、これを右翼の笹川がダイビングキャッチした。その裏の攻撃ではジーター・ダウンズ内野手が同点の2点中前打を放ち、引き分けに終わっただけに、笹川の好守備はチームの勝敗を左右するビッグプレーになった。
8回の打席では空振り三振となったが、振り逃げの可能性を諦めず、一塁までしっかりと駆け抜けていた。2軍降格から2か月。他の誰でもなく、笹川自身が「落ちた理由」を理解している。首脳陣も証言した“変化”――。プロ6年目を迎えている24歳は、ただひたすらに自分自身と向き合っている。
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降格から2か月…自ら語った「落ちてきた理由」
「僕は切り替えの部分で、2軍にいるというところもあると思うので。(凡退した後の守備も)プレーがかかる時には整理をつけられるように。まだ完璧ではないんですけど、守備にしっかりと切り替えられるようにとは思っています」
9回に見せたダイビングキャッチも、直前の打席から悔しさを引きずっていなかった証。「心がけるようにはしていますけど、凡打した後に守備でいいプレーができたのはよかったです」と汗を拭う。一塁まで駆け抜けるのも、この日だけに限ったものではない。アウトだと決めつけることなく全力疾走するのは、ここ数か月に渡って笹川が継続している姿だ。
「凡打だとしても、諦めずに走ること。落ちてきたのもそれが理由なので、このチームではルールを守らないと使ってもらえない。続けていくだけです」
5月14日に登録を抹消されて以降、ファームでの調整が続いている。最後の1軍出場となったのは13日の西武戦(みずほPayPayドーム)で、5回1死一塁で打席に入ると、打球は二塁手の正面へ。併殺崩れにはなったものの、笹川はファーストベースを駆け抜ける前に足を緩めてしまっていた。一走に残ったが、直後には牽制球でタッチアウト。自分自身の課題は「気持ちの切り替え」だと、突きつけられた一戦だった。
斉藤和巳監督も認めつつある変化「信じているけど」
2軍に降格して以降、時間をかけながらも目線は少しずつ前を向くようになってきた。象徴的だった試合は、7月12日の広島戦(由宇)。8回1死満塁のチャンスで見逃し三振に倒れると、背番号44はベンチに戻ってきた。悔しさを押し殺しながら、発した言葉は「勇さん、お願いします!」――。想いを託す力強い声が、ベンチへと響き渡っていた。次打者だった野村勇内野手は、左翼席に飛び込む満塁弾。お互いにカバーすることもまた野球なんだと、学んだ瞬間だった。
一丸となって引き分けに持ち込んだこの日の阪神戦。笹川の変化も、葛藤も、誰よりも近くで見てきた斉藤和巳2軍監督もこう語る。
「(変化が生まれていると)信じているけどね。気持ちの切り替えというのは、あいつにとっては課題なので。一塁まで走るのも、それはもうホークスの徹底事項。自分で判断しない。セルフジャッジしない。どこに可能性があるかわからないし、走塁はホークスの売りなので。そういう意味で言うと、うちからすると当たり前のプレーかな」
凡打だとしても、諦めずに全力疾走する。1軍選手たちは徹底している“当たり前のプレー”だ。周囲から「変わった」と思われるためには継続するしかない。笹川も「これだけ(の期間)2軍にいる。ずっと指摘されていることでもありますし、僕は1軍にいくためにやっているので」と自らに言い聞かせる。少しずつではあるが、確実に24歳の姿は変わり始めている。
(竹村岳 / Gaku Takemura)