記者会見でキッパリ「前田投手にできるなら俺もできます」
新たな一歩を踏み出す晴れ舞台で、堂々と口にした。「同じ年なので、俺もできます」。ここまで9勝0敗、防御率1.93という圧倒的な成績で先発ローテーションを支えている前田悠伍投手に対し、熱いライバル心を抱いているのが張峻瑋(チャン・ジュンウェイ)投手だ。
7月27日に念願の支配下登録を勝ち取った右腕は、背番号「17」を与えられた。ホークスに入団して2年目の今季は、ファーム・リーグで11試合に登板して5勝1敗、防御率2.81。47回2/3を投げ45三振を奪うなど、着実に成長を遂げてきた。今年3月にはワールド・ベースボール・クラシックのチャイニーズ・タイペイ代表に選出。日本戦でも登板を果たし、最速155キロをマーク。打者10人を1安打に封じ込めた。
2005年11月14日生まれの20歳。同じく支配下昇格を果たした小林樹斗投手、ルイス・ロドリゲス投手とともに、みずほPayPayドームで行われた記者会見に臨むと、インタビュアーから「同学年の前田悠伍投手の活躍をどう見ているか」と質問された。右腕の答えは「同じ年なので、前田投手にできるなら、俺もできます」――。特別な思いを抱いていることが表れていた言葉。自らの発言の真意を、改めて明かした。
会員になると続きをご覧いただけます
この先で分かる3つのこと
前田悠伍への強気発言に込められた、張峻瑋の「真意」
炎上で3軍降格…コーチ陣も絶句した苦悩の裏側とは
背番号「17」を提示され、張峻瑋が感じたある期待
2023年に行われた18歳以下のW杯…決勝で激突
「高校生で出場した台湾での国際大会の時から、日本代表のエースとして活躍する素晴らしい選手と知ってましたので。1軍の舞台で9勝を挙げているのも、もちろん知っています。日々の努力もあって、すごい良いピッチャーだなと思っていますから」
2023年、2人は18歳以下の代表チームに選出され、ワールドカップを戦った。9月10日に行われた日本対チャイニーズ・タイペイの決勝戦。先発した前田悠は7イニング制の一戦で1失点完投勝利を収め、日本を初の世界一に導いた。大舞台になればなるほど力を発揮する左腕が「球場の全てがアウェーという雰囲気だったんですけど、めちゃくちゃ楽しかったです」と振り返ったピッチングは、張の胸に今でも刻まれているほどだ。
張自身は決勝戦での登板はなく、マウンドにできた歓喜の輪をベンチから見つめた。前田悠の姿も「本当に強い投手だなと。あの緊張感、プレッシャーの中で、あそこまで素晴らしい投球ができるので」と鮮明に覚えている。そこから別々の道を歩んだ結果、今度はホークスで同じユニホームを着ることになった。
支配下を掴んで迎えた7月27日の記者会見。前田悠に対する思いは、あくまでも会見の“流れ”の中で口にした言葉だったのか、それとも本当に対抗心を抱いて日々の練習を過ごしてきたのか。細かいニュアンスを問われると、張は後者であることを認めた。
「同じ年齢なのに1軍ですごく活躍をしていますので。自分も負けないように。悠伍に追いつきたいという気持ちを持って、これからも練習に取り組んでいきたいです」
3軍降格でコーチから「目も合わせてくれない」
昨年から張の姿を見守ってきた奥村政稔2軍投手コーチも、その成長を振り返る。
「1年目の時はもっとすごかった。審判の判定にカッとしたり、キャッチャーにも『キャッチングが悪い』と言ったり。一時期は『平常心で投げます』と言っていたんだけど、それだと“良さ”がなくなっていたんですよね。気持ちとパフォーマンスが比例するタイプ。だとしたら、悠伍に負けたくない、藤原(大翔)に負けたくない。そういう思いは確実に力になっていると思います」
4月1日、ファーム・リーグのヤクルト戦(戸田)では3回7失点と崩れ、斉藤和巳2軍監督からは「この結果を真摯に受け止めないといけない」と厳しく言及された。この登板をきっかけに3軍へ降格。奥村コーチも「そこからが大変だったみたい。他のコーチが言っていたのは『目も合わせてくれない』と。自分が遠征から帰って話した時にはだいぶ整理ができていたんだけど、みんな『チャンがやばい』と言っていましたね」と、苦悩の裏側を代弁した。
変化を感じたのは、5月中旬。きっかけになったのが、同学年の藤原が支配下登録されたことだ。「今までそんなにウエートもしていなかったのに、体作りの意識も変わった。傾斜でどんな練習をしないといけないのか、その意識も変わった。もともと能力はありますから。1つ1つ、よく乗り越えてくれた」と奥村コーチ。「ええ番号もらったな」。そう声をかけると「(徐)若熙投手の隣。期待(の表れ)というのはわかっています」と返ってきたそうだ。
前田悠も、張や藤原ら同学年の存在に「同じピッチャーですから。競争する存在です」と語っていた。「本当に、球団、監督コーチ、支えてくださる皆さんに感謝しています。熱い戦いがあると思うので、これからも頑張っていきたいです」。新たに背番号17を背負った右腕は謙虚に意気込みを口にした。頼もしすぎる「2005年世代」がきっと、ホークスの投手陣を背負って立つ。
(竹村岳 / Gaku Takemura)