雑誌「anan」を見て「これはスケベだわ」
「スケチェ」の名付け親を直撃した。上沢直之投手の口から返ってきたのは、エースならではの奥深いロジック。“沢村賞右腕”と比較しても、大津亮介投手の「すごみ」は明らかだった。
球団公式から動画が公開されたのは、5月2日だった。上沢が眺めているのは、大津をはじめ松本裕樹投手、野村勇内野手、正木智也外野手、柳町達外野手がモデルとなった雑誌「anan」。その中でも大津のカットに「この顔をしてたら“スケべチェンジアップ”投げるわ」と破顔し「家に1冊、保管用1冊、あと鑑賞用。最低3冊は固いです」と語っていた。
グラウンドでは見られない素顔を捉えた動画は、瞬く間にファンの間で浸透。大津の決め球を表すキャッチーな“流行語”が生まれた瞬間だった。練習を終えて、雑誌を見つめるソフトな空間の中、「スケチェ」という表現はどのように降ってきたのか。理由が「技術論」であることも、上沢らしかった。
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この先で分かる3つのこと
「スケチェ」命名の舞台裏…雑誌「anan」から生まれた名フレーズ
沢村賞右腕・金子千尋との出会い…上沢のチェンジアップ観を変えた衝撃
より抜けている?上沢直之が絶賛する大津亮介の超技術
「あんまり見ないボールの軌道なので。人と違うのはいいじゃないですか」
大津のチェンジアップは110キロ台で、上沢は130キロ前後。直球と同じようにしっかりと腕を振れば、自然とスピードも出る。だからこそ、背番号19が生み出している球速差は唯一無二の真骨頂だ。32歳の先輩も「110キロ台というのは相当難しい。腕を振って緩急をつけるのは簡単そうに見えて一番難しいですし、すごく技術があると思いますよ」と続けて語った。
フォーシームと同じ回転で投げるのも、技術の1つだ。「バッターはスピンが見えると言うので。真っすぐと同じにした方が見分けがつきづらいです。最初の握りで大体決まりますね。どんな回転がするのか、回転せずに落とすのか」。多彩な球種を持つ上沢。チェンジアップの投球割合は全体の10%にも満たないが、時には決め球としても強い威力を発揮している。
金子千尋から受けた衝撃「本当にただの遅い球」
チェンジアップの精度をもっと高めたい。きっかけになったのは、沢村賞右腕との出会いだった。
日本ハム時代の2019年、金子千尋投手(現在は投手コーディネーター)とチームメートになった。通算130勝を挙げ、2014年には沢村賞を獲得。オリックスのエースとして君臨した右腕のウイニングショットこそが、チェンジアップだった。大津の「スケチェ」とも似ていそうな印象だが、大先輩と一緒にキャッチボールをした時の衝撃が、今も忘れられない。
「僕は金子千尋さんと会って、一緒にプレーするようになってから“真っチェ”みたいなチェンジアップを投げるようになりました。金子さんはすごかったですよ。キャッチボールで捕ったら、全然すごさはわからないです。本当に、ただの遅い球。驚くような落ち方をするわけでもないし、とにかく同じ腕の振りで遅い球を投げる。それがすごいんだろうなと思いますね」
落差が大きいわけではなかったという“魔球”。キャッチボールで「チェンジアップが来る」とわかっていれば、「ただの遅い球」だった。それがバッターとの真剣勝負になれば、誰にも真似できないウイニングショットになる。上沢も「結局、それができるのが一番すごいですよね」と大先輩からの学びを振り返っていた。金子と大津、2人のチェンジアップを比較すると「キャッチボールしてみて、抜けている感じで言えば大津の方があるかもしれないですね。より遅いので」と印象を口にした。
誰にも真似できないウイニングショットへのリスペクト。そして、モデルを演じた大津の表情を見て、脳内に降ってきたのが「スケチェ」というワードだった。上沢が「本当はもうちょっと球速差をつけたいんですけどね。125キロくらいで投げたいんですけど、難しいです」と話せば、大津も「上沢さんがつけたことで全国に広がったので、とてもありがたいです」と照れ笑いした。難易度が高い球種であることは間違いない。ここまでチームトップの9勝を挙げている背番号19。後半戦も「スケチェ」を駆使して、先発ローテーションを引っ張ってくれるはずだ。
(竹村岳 / Gaku Takemura)