杉山一樹の苦悩…1軍“3年目”で直面する2球種の壁 開幕直後、藤井皓哉にだけ打ち明けた「相談」

  • 記者:竹村岳
    2026.07.29
  • 1軍
マウンドでロジンに触れる杉山一樹【写真:栗木一考】
マウンドでロジンに触れる杉山一樹【写真:栗木一考】

リーグ3位の21セーブも「負けがついている」

「3年やって一人前」と言われる世界。絶対的な存在感を示してきた守護神もまた、苦悩を打ち明けていた。「僕の場合は、厳しいところはありますね」。静かに口を開いたのは、杉山一樹投手だった。理想と現実の狭間で思い悩む中、藤井皓哉投手にだけは「切実な相談」をしていた。

 チームは93試合を消化して58勝34敗1分け。2位に5.5差をつけ、首位で前半戦を終えた。背番号40も左手骨折による離脱はあったものの、35試合に登板してリーグ3位の21セーブをマーク。防御率は3.55ながら、33イニングを投げて54三振を奪うなど、相手を圧倒する投球は健在だ。

 今月23日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)では、3点をリードした9回に同点3ランを浴びた。一定以上の結果を残しながらも、右腕の中だけで続いていた試行錯誤。シーズン折り返しが見えてきた7月上旬、右腕は自身の状態について「良くないですね。僕の場合は負けがついているし、やっぱり防御率。そこが一番、投手の実力が出ると思っているので。もっと下げていきたいです」と語っていた。

 直面しているのは“3年目の壁”。「直球とフォーク」という己の武器に危機感すら感じていた右腕は、密かにモデルチェンジを模索していた。葛藤の渦中で、同じ悩みを経験してきた盟友・藤井にだけ打ち明けた胸中。そして、相棒である海野隆司捕手とともにマウンドで張り巡らせている「伏線」とは――。守護神が試行錯誤の末に行き着いた、進化への覚悟に迫る。

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この先で分かる3つのこと

盟友・藤井に悩みを相談…杉山一樹が背中を押された「助言」とは
相棒・海野とマウンド上で張り巡らせていた「伏線」の正体
モデルチェンジかスタイル貫徹か…守護神が下した決断とは

「ここ2年くらいは同じままで勝負しているので」

「交流戦の時は確かに調子も良かったんですけど、セ・リーグとの対戦はデータも少ないので参考にならない。(パ・リーグとの対戦が)また始まってから、3人で終わるというのもあまりない。僕の場合は基本的に2球種ですし、ここ2年くらいは同じままで勝負しているので。前年よりも上げていかないと、厳しいところはあるのかなと思いますね」

 2024年の春季キャンプ中、首脳陣に中継ぎ起用を直訴してシーズン50試合登板を果たした。昨年はシーズン途中から守護神として君臨し、65試合に登板。31セーブを挙げて、自身初のタイトルを獲得した。着実に成長を遂げているのは間違いないが、相手も研究を重ねてくる。「直球とフォーク」というスタイルに、壁を感じていたのは杉山自身だった。

 今年は春季キャンプからツーシームの習得をテーマに掲げ、シーズン中もカーブを投じるなど工夫は凝らしている。自ら試行錯誤しながらも、右腕は開幕直後に盟友である藤井に胸の内を打ち明けていた。

「このことは藤井さんに相談をしたんですけど、『新しいことに挑戦するよりも、真っすぐとフォークのキレ。これまで使ってこなかったコースもあるし、まだまだできることはあると思うから、そっちの方がいいんじゃない?』という話をしてくださったので。今もそうしています。真っすぐだとスピード、フォークなら精度と変化量。配球の組み立てとしても、まだまだ(2球種というスタイルでの)可能性はあると思ったので」

 2023年、先発に挑戦していた藤井はカーブやスライダーを用いていた。しかし、リリーフとしては杉山と同じく直球とフォークを活かすのが持ち味。だからこそ、誰よりも背番号40への理解は深い。「相談したのは、4月の最初の方だったと思います」。他に選択肢を見出すことはもちろん大切だが、まだまだ突き詰められる――。そんな言葉に心から納得し、改めて自分だけのスタイルを信じて腕を振っている。

試合を締めて喜ぶ杉山一樹と海野隆司【写真:栗木一考】
試合を締めて喜ぶ杉山一樹と海野隆司【写真:栗木一考】

海野隆司と張り巡らせてきた「伏線」

 7月は防御率5.23と苦しんでいるが、5月と6月は計17試合に登板して失点はわずかに「1」。調子の波に左右されるのではなく、さらに良いピッチングを求めて小さな変化を重ねてきていた。配球についても、海野隆司捕手と細かくコミュニケーションを取ってきたという。

「点差がない時は“冒険”できないですけど、ある程度余裕のある時は海野と『次に戦う時の伏線』といつも言っています。インコースを1球でも見せるだけで、全然違うので。何かできることは常に探しています。抑えなので、基本的には3人で終わりたいですし、やっぱり三振を取りたい。守っている方々もスパンと終わった方が楽だと思うので。前に飛ぶと何が起こるかわからないですし、三振を求めてやっていますね」

 33イニングを投げ54三振と、ずば抜けた成績を残しているのは確かだ。疲れも溜まってくる夏場で「去年のこの時期も、ちょうど三振が取れないことがあったんですよね。切羽詰まる時ほど、それは(三振の数に)現れているのかなと思います」と現状を分析した。藤井や海野をはじめとした周囲のサポートに、感謝の気持ちは絶対に欠かさない。だからこそ、杉山自身もさらなる高みを目指す向上心は常に抱いているつもりだ。

「(ロベルト・)オスナも調子がいいですし、まっちゃん(松本裕樹)もいいピッチングをしている。ヘルナンデスも帰ってきましたし、他のみんなにも乗り遅れないように。頑張りたいです」。高く厚い壁も、必死に努力して乗り越えていけばいい。そうやって杉山一樹は、一流のクローザーへと成長してきたのだから。

(竹村岳 / Gaku Takemura)