1点ビハインドで3投手が無失点の好投
静かなる反骨心が、マウンド上で熱を帯びていた。21日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)。1点ビハインドの緊迫した展開の中で、7回に木村光投手、8回に岩井俊介投手、9回は中村稔弥投手がマウンドに上がった。打線はあと1本が出ずに1点差のまま敗れたが、3投手が演じた無失点リレーには、スコア以上の重みがあった。
「大きい意味があるよね。流れは断ち切れなかったけど、ああやってビハインドで投げるピッチャーが踏ん張ってくれることで、明日にも繋がるし、彼らにとっても次回の登板に繋がる。そこが一番大きい」
ブルペンで見守っていた若田部健一投手コーチ(ブルペン)は、3投手の踏ん張りに確かな価値を感じていた。さらに若田部コーチは、いたずらっぽく笑いながら「日頃ビハインドでしか出られないピッチャーは“飢えている”。いかに自分がチームのために投げられるかっていうことしか、おそらく考えていないので。それは岩井に聞いて」と続けた。敗戦の裏側で、この3投手はどのような気持ちでマウンドに上がっていたのだろうか――。そこには三者三様の心がけがあった。
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この先で分かる3つのこと
1軍復帰の木村光が絶対阻止を誓ったこととは?
岩井俊介がブルペンで漏らした「本音」とは?
中村稔弥が逆転を呼び込むために心がけた「意識」
「ホームランだけは打たれちゃダメだっていう意識がありました。高く浮かないように、ホームランがあるバッターには打たれない配球をしようと考えて投げました。あのまま繋げば全然勝つチャンスがあると思っていたので、とにかくゼロで、と考えていました。1軍に戻ってきて1試合目だからこそ、余計にいつも以上に思っていました」
7回、再昇格後の初マウンドに上がった木村光は試合後にこう振り返った。味方の反撃を信じ、細心の注意を払って1点の重みと向き合った姿がそこにはあった。6月22日に抹消され、1か月もの時間をかけて再調整した。この日に登録されたばかりだったが、その期間を意味あるものにするかのような投球を披露した。
「いつ投げれんねん」に込めた思い
8回のマウンドに上がった岩井はどうだったのか。「これ以上、点差を広げられないという思いでいきました。今までは大差じゃないと投げられなかったんですけど、こういう僅差の場面で投げて抑えられたので。もしかしたら、いい場面で投げられるチャンスが来るかなとも思うので」。若田部コーチから「飢えている」と名指しされた真意を尋ねると、岩井は人懐っこい笑顔で続けた。
「飢えてました。『いつ投げれんねん』ってブルペンで言ってました。若田部さんは『待っとけ』しか言わないんですよ(笑)。関係性があるから言えるんですけどね。優しいので、冗談っぽいことも言える感じです」。そんな右腕の思いを、若田部コーチはしっかりと受け取っていた。今季4試合目の登板となった岩井は走者を背負いながらも、2三振を奪う見事な投球で9回にバトンを繋いだ。
意識したリズム…信じた味方の逆転
そして9回、最後の攻撃へ望みを繋ぐためにマウンドへ向かった中村稔もまた、内に秘めた熱い思いを持っていた。意識していたのは、裏の攻撃に流れを呼び込むための投球。そこには味方への絶対的な信頼があった。
「負けていたので、テンポ良く、リズム良くっていうところを意識して投げました。やっぱり、そういうピッチングが求められてくると思うので。(ホークスは)打線が強いので、最後みたいなワンチャンスもある。そのためにも全力で、ビハインドで登板するときは無失点で、打線にリズムを持ってこられるようなピッチングを心がけていました」
木村光は「丁寧さ」で一発を警戒し、岩井は「飢え」から来る力強さで相手を圧倒、中村稔は「テンポ」で裏の攻撃へとリズムを繋いだ。アプローチは違っても、3人が抱いていたものは“自分がここで流れを変える”という強い意志に他ならない。1点ビハインドの中で役割を全うしたことは、今後の投手起用の幅が広がることにもなるだろう。それはチームにとっても個人にとっても大きな意味がある。試合には敗れたが、球場を後にする3人の背中には、確かな充実感があった。
(飯田航平 / Kohei Iida)