14日の日本ハム戦では代打で決勝打
独自の目線で選手の本音に迫る新連載「鷹フルnote」。今回は柳町達外野手の登場です。チームを勝利に導くような貴重な一打を放つ背番号32は、自分自身のヒットゾーンを「打つべき球」と表現することが多いです。では、「打つべき球」とはどんなものなのか? 明かされた2度の成功体験。そして「ターニングポイント――。『この一球』と思える打席だった」という決定的な瞬間を振り返りました。
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14日の日本ハム戦(エスコンフィールド)、柳町は同点の9回1死一、二塁の好機に代打で登場した。最後は高めに浮いたスライダーを左中間にはじき返す決勝打を放った。今季、代打での成績は5打数4安打、打率は驚異の8割と集中力が光る。試合後、ヒーローインタビューで口にした言葉には、まだ興奮の色が残っていた。
「つないでくれたチャンスだったので、自分が決めてやろうという思いで打席に入りました。(外野の頭を)越えてくれと祈りながら走っていたので、ホッとした気持ちです。カードの初戦でお互いの投手陣が素晴らしいピッチングをしていたので、最後に勝ち切ることができて本当によかったです」
昨シーズンは最高出塁率のタイトルを獲得するなど、飛躍の1年となった。一方で、プロ7年目の今シーズンは51試合に出場して打率.241、0本塁打、25打点。5月には不調で登録を抹消されるなど、試行錯誤を続けている。そんな中でも勝負強さは健在。夏場を戦うチームにおいて、欠かせない存在として打線に名を連ねている。
試合中の談話や囲み取材において、自身の一打を「打つべき球を打てた」と表現することが多い背番号32。柳町にとって「打つべき球」とは、どんなものなのか。29歳が自らの価値観を深く語った。
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この先で分かる3つのこと
柳町達を変えた2つのターニングポイント
明かされた打撃哲学「打つべき球」の真相とは
プロの世界において柳町達が明かす「一番大変なこと」
大切なのは「ダメな時にどれだけ耐えられるか」
「ピッチャーの失投じゃないですか。投げたい場所じゃないところに投げたボールかなと思います。バッティングの基本は甘い球を捉えることですし、ピッチャーは打てないところを狙って投げてくるわけなので。そうじゃないところに来た球を、しっかりと捉えるのが大事だと思いますね」
投手の意図と技術が揃ったボールはなかなか弾き返せない。柳町自身も「(コース)ビタビタに決まった球は簡単には打てない。ある程度、甘くなった球をしっかり打つという意識ではいますね」と静かに語る。打席の中で心がける割り切り。だからこそ、投手の「失投」を逃してはいけない。ほんの少しでも内側に入ってきたボールを捉えられるように、常に集中力を磨き上げている。
慶大時代は4年間で通算113安打を記録。ヒットマンとしての技術を高めてプロ入りを果たしたが、1年目の2020年はわずか1安打に終わった。「球の速さとか、曲がりの遅さ(打者の手元で変化する)は感じました」。アマチュア時代からさらにレベルアップした投手陣への対応に、当初は苦労した。そのうえで「でも、今思えば……」と、プロの世界における重要な要素を口にした。
「“維持”することが一番大変ですね。プロの投手はみんな、いい球を持っているので。こちらも高いパフォーマンスを長い間維持するのが、難しいことだと思います。いい時はみんな打てるので。ダメな時にどれだけ耐えられるかだと、今になって思いますね」
毎日のようにゲームがある半年間のペナントレース。体力面はもちろん、好調をキープする“引き出し”も必要だ。若手をはじめ、他の選手たちも虎視眈々とレギュラーの座を狙っている。どんな時も絶対に「隙」を見せず、チームの戦力であり続けるために重要なのが「維持」すること――。ホークスの厚い選手層を突き抜け、必要不可欠な戦力になってみせた柳町が言うからこそ説得力があった。
柳町達にとって2度の「ターニングポイント」
柳町が振り返る2度の成功体験。1つ目は2024年8月8日のロッテ戦(ZOZOマリン)、プロ入り初の4安打を放った試合だ。佐々木朗希投手から3度快音を響かせ「いいピッチャーから打つのは自信になりますし、あの時は確か、あまり調子が良くなかったんです。いろいろと自分の中で変えながら3本も打てたので、自信になりましたね」。シーズン終盤に差し掛かる夏場、好投手から結果を残せたことは自分の中でも印象深い。
もう1つは自らも「『この一球が』と思える打席でした」と挙げた一戦だ。2025年4月23日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)。左腕・曽谷の146キロを捉え、右翼テラスに飛び込む1号ソロを放った。
オフから長打力アップをテーマに掲げ、ライト方向に力強い打球を放つための取り組みを重ねてきた。背番号32にとって、この一発は練習の成果を実感できる瞬間だった。「抜けた真っすぐだったんですけど、左ピッチャーのあのコースを引っ張ってホームランにできたのは自信になりましたね。今までならファウルにしかならないようなところを捉えられたので」。同年はキャリアハイとなる6本塁打を放ったが、進化し続けるという自らの思いがこもった一撃でもあった。
今季はここまで84試合を消化し、チームは2位の西武に3ゲーム差をつけて首位を走っている。一戦の重みが増す終盤戦、試合を決める一打を放てるように集中力を高めていく。「色々(バッティングを)変えたり、試行錯誤することも大事ですけど。怪我なくやらない限り、そのきっかけも掴めないので。そこが一番難しいかなと思います」。そう語る表情は、どこまでも頼もしい。これからも柳町は「打つべき球」を絶対に逃さない。
(竹村岳 / Gaku Takemura)