入団時から見てきた成長
試合後に見せる素の表情を指揮官は見逃さなかった。育成3年目を迎えた大泉周也外野手が1日の終わりにふと覗かせる、グラウンド上とは違った表情だ。今季も7月末の支配下登録期限が迫る中、試合後も1人で黙々とバットを振り続ける。社会人、独立リーグを経てプロ入りした26歳。否が応でも、自身の現在地と“タイムリミット”を意識する日々を過ごしている。
昨年は、自身と同じ左打ちの外野手で、なにより同い年の山本恵大外野手が支配下登録を勝ち取った。「期限」という2文字が頭をよぎる中、大泉の背中を押し続けているのが、プロ入り時からその成長を見守る斉藤和巳2軍監督の存在だ。指揮官は大泉とどのように向き合い、どんな言葉を交わしているのか。その声がかけられるのは、決まって2人きりになれる瞬間だった――。
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この先で分かる3つのこと
大泉の表情を見逃さない指揮官が、声をかける瞬間とは
大泉の邪念を吹き飛ばし、救いとなったメッセージとは
「和巳さんに言われると…」大泉が明かした指揮官への本音
大泉が声をかけられるタイミング
「試合が終わって、1人で練習している時とかに話してくださるというか。2人になるタイミングですね。練習が終わって、僕が最後までいる時とかに結構話しますね」
大泉は指揮官から声をかけられることについて、自身の表情に理由があるからだと分析する。「僕も多分、悩んでいる感じとかが出ちゃうんですよね。考え込んじゃうタイプなので。そういうところを見て、『どうした? そんな顔して』って声をかけてくださるんだと思います」。強がっていても隠しきれない焦りや不安を、斉藤2軍監督はどんな時も気にかけてくれていた。
指揮官は昨年の出来事も踏まえ。26歳の心情をこう推し量った。
「昨年は山本(恵大)が支配下になった。その状況の時は致し方ない部分はあるけど、大泉の気持ちを考えると、なんともいえないやろうなという部分はあったので」。今年に関しても、大泉が期限を強く意識していることを理解した上で、「試合に入ると我々は何の手助けもできないので。ただ祈るだけ」と親心を覗かせた。
不安を拭う指揮官の言葉…「堂々と帰ってこい」
斉藤2軍監督との対話は大泉の胸に確かに響いている。言葉を交わすことで気持ちに変化があるのかと問うと、「めちゃくちゃあります。吹っ切れるというか、割り切れる。邪念が消えるというのはすごくありますね」と、熱を帯びた口調で語る。
最近の言葉で響いたのは「割り切れ」「腹を括れ」という真っすぐなメッセージだ。「打てる球は打てるし、打てない球は打てない。そういう腹の括り方です。全部を全部、綺麗にやろうとしちゃっていたので。『割り切って堂々と帰ってこい』って言ってもらいました」。心の淀みが晴れるたび、それは確かな結果へとつながっていった。
6月終了時点で打率.291、4本塁打、19打点をマーク。支配下選手の登録期限は残り1か月を切った。「去年からですけど、『絶対に諦めるな、最後まで諦めるな』って言われます。やっぱり和巳さんに言われると……」。大泉はそこで一旦言葉を区切って、こう続けた。「僕はもうプロの世界に入った時からずっと見てもらっているので。自分の性格も理解してくださっていて、いつもすごくいいタイミングで声を掛けてくださる。気を遣わせてしまうのが“僕の弱さ”なんですけど」。指揮官への感謝を胸に、支配下への扉をこじ開ける。大泉はこれからも堂々と打席へ向かう――。
(飯田航平 / Kohei Iida)