柳田悠岐が体現した「100点のシナリオ」 周東佑京との異例お立ち台のワケ、“王会長の日”の舞台裏

  • 記者:竹村岳
    2026.06.17
  • 1軍
5月24日の日本ハム戦でヒーローとなった柳田悠岐【写真:栗木一考】
5月24日の日本ハム戦でヒーローとなった柳田悠岐【写真:栗木一考】

5月24日の日本ハム戦…柳田&周東がヒーローインタビュー

 交流戦を14勝4敗で終え、3年連続のリーグ制覇へ勢いの出てきたホークス。5月24日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)は「OH SADAHARU LEGACY DAY」として行われ、最大4点差をひっくり返して逆転勝利を挙げました。この日、ヒーローインタビューでお立ち台に上がったのは“チームの顔”である柳田悠岐外野手と周東佑京外野手。なぜこの2人が選ばれたのか? その舞台裏を西田哲朗広報が明かします。事前に描いていた「100点のシナリオ」を、見事に体現した背番号9。そして、試合前に恐縮しながらポツリと漏らしていた本音とは――。

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 鷹フル読者の皆さん、こんにちは。交流戦も終えて、シーズンの折り返しが見えてきましたね。「母の日」に行われたロッテ戦のヒーローインタビューの裏側が好評だったとお聞きしたので、今回は「OH SADAHARU LEGACY DAY」についてお話ししようかなと思います。結果的に選出したのは、一時同点となる3点三塁打を放った周東、そして2ランと決勝犠飛という活躍を見せた柳田さんでした。

「王イズムを形に残しましょう」と城島(健司)CBOが考案して、この試合のプロジェクトは始まりました。ドーム内にホークスの歴史が詰まった通路を作ったり、こうやって王さんの名前が入ったイベントをスタートさせたり……。ホークスの伝統を作った偉大な方の考えがいつまでも続いていくように――。そんな思いで、この日本ハム戦を迎えたと思います。そして僕が密かに抱いていた「願い」を、柳田さんが叶えてくれました。

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この先で分かる3つのこと

柳田&周東のヒーローインタビューの舞台裏
柳田悠岐が体現してみせた「100点のシナリオ」とは
西田広報が明かす、現役引退を決断した瞬間

「試合前から柳田さんがヒーローになることが100点だと」

 僕の中でも王さんの考えを体現している人、これから引き継いでいく人がいます。もちろん柳田さん、中村晃さん、今宮健太は“象徴的”な存在ですよね。僕も(別媒体の)コラムで書いたことがあるんですけど、「その3人が王イズムを一番継承していく選手」という書き方をしました。牧原(大成)もいますし、その次の世代で言えば周東や栗原(陵矢)になっていきますよね。彼らがしっかりしないと、ホークスの伝統は守られない。特に周東と栗原は、これからのホークスを引っ張っていく2人です。

 僕は広報を務めているうえで、どんな時も「100点」のシナリオを考えます。例えばですけど、柳町(達)と正木(智也)が一緒に活躍したらお立ち台に上げやすい。上沢(直之)の登板日に近藤(健介)が打てば、それもセットにできますよね。その日の先発投手や対戦相手、試合展開、協賛していただいているスポンサー……。本当にさまざまな要素があって思い通りの展開にならないこともありますが、満点を目指さないとプロじゃないので、あの日本ハム戦に関しては、王イズムを継承している選手がヒーローになることが理想的でした。

 そういう意味でも、あれは運命の試合でした。まさに、僕は試合前から柳田さんがヒーローになることが『100点』だと思っていました。チームを引っ張ってきた存在でもあり、王さんとのエピソードもありますから。

 当時はまだチーム状況も決して良くありませんでした。次世代を担う前田悠伍が先発して、先制されてしまったけど、打ち勝っての逆転勝利。王さんの力、これがホークスの野球だと強く思いました。柳田さんも「自分の力じゃない」というコメントをしていましたが、89番を背負っているだけで、ものすごいパワーがあったはず。ファンの皆さんも強く感じたと思いますが、僕としてもすごい試合を見られたと感動しました。柳田さん、周東がヒーローになるという展開も含め、偶然じゃなくて、必然とまで言える1日だったのではないでしょうか。

 試合終盤となり、いよいよヒーローを決めていきます。勝ち越し犠飛の柳田さんは当然、決定。そしてこの日に限っては「柳田さんだけ」じゃなくて、周東も上げようと決めていました。シーズン中だと、スター選手を2人も上げることはめったにしません。若手とベテラン、投打の立役者をセットにしたりすることがほとんどなので。だけど、あんな試合を見せられたら、2人に上がってもらいたくなりますよね。ちなみに試合前、偉大なレジェンドの皆さんと一緒に整列してセレモニーに出た柳田さんは「俺まだ現役よ?」と、恐縮しながら話していました。

背番号89のユニホームで本塁打を放った柳田悠岐【写真:栗木一考】
背番号89のユニホームで本塁打を放った柳田悠岐【写真:栗木一考】

構想外通告を受けその場で現役引退を決断

 僕個人としても、王さんとのエピソードを話そうかなと思います。2017年オフにトレードでホークスに入団し、翌年のシーズンでは3試合連続本塁打を経験しました。その前ですかね、王さんから一言だけ、バッティング練習をしていたら「もっとこうやるんだ」と声をかけていただきました。そしたらホームランを打つことができたんですけど、結果以上にいただいた言葉の力がすごかったんです。背中を押してもらえますし、打席の中でも自信が湧いてくる。3戦連発だなんて、それこそ僕だけの力じゃなかったと思いますね。

 ホークスに入団して驚いたのは、レギュラー陣がとにかく率先して動くこと。あとはどんな時も手を抜かないことです。例えば、バッティング練習にしても、ベテランの人は軽く合わせて打つようなこともあります。ですが、ホークスは、全員が1球目から全力で打つんですよ。ノックも1球1球が本気ですし、誰よりも声を出す。それまでの自分が「甘かったな」と思わされました。松田(宣浩)さん、柳田さん、今宮がやっていることがどこまでも“当たり前”。そして、この伝統を作っているのが王さんなんだなと。

 2020年オフに構想外通告を受けました。球団に呼ばれて来季の契約を結ばない旨を伝えられたのですが、僕はその場で「もうやるつもりはないです」と伝えました。誰にも相談することなく、現役引退を決意しました。

 実際、他の選択肢はあったんですけど、ホークスというチームでダメだったら、どこに行ってもダメだと思ったからの決断でした。移籍してきた時に感じた“衝撃”があったから、このチームでユニホームを脱ぎたいと思いました。ここに来ていなかったら、僕の人生はなかった。それくらい腹を括っていたので、ホークスで過ごした現役時代、裏方としてサポートしている今は本当にやりがいがあります。自信を持って、胸を張って「ホークスはいいチーム」だと言えますね。

 ちなみにですが、6月13日のヤクルト戦(みずほPayPayドーム)。野村勇選手がヒーローインタビューになって、お立ち台で“持ちギャグ”をしてもらいました。今はまだ言えないのですが、これは伏線です。このヒーローは、自画自賛できる、誰も取れない『150点』を叩き出せたと思った瞬間でした。その答え合わせが、いつかできることを祈りながら、全力で選手たちを応援していこうと思います。

(竹村岳 / Gaku Takemura)