野村勇“大迷宮”からの脱出劇 変化を加えた週末の過ごし方…決意の1か月「もう一生当たらんわ」

  • 記者:竹村岳
    2026.06.15
  • 1軍

1月の自主トレ中に漏らした言葉「僕の打ち方って」

 選手の知られざる本音に迫る連載「鷹フルnote」。野村勇選手の6月編をお届けします。5月から1か月間、スタメンを外れ続けた日々。きっかけを掴みためにも、1年以上も継続していた“鉄のルーティン”に、ある変化を加えることを決意していました。「大迷宮。もう2度とヒット打てへんと思っていました」。いかにして復活を遂げたのか、その全貌を明かしました。

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 交流戦のラストウィークで4本塁打を叩き込んだ。走攻守で、身体から溢れ出る躍動感。ようやく野村らしさが生まれてきた。「日頃からハセさん(長谷川勇也打撃コーチ兼スキルコーチ)や裏方の人が、どうやったら僕のバッティングがよくなるか考えてくれたおかげです。ありがとうございます!」。今季1号を放ったのも開幕してから74日目だった。背番号99が口にした“大迷宮”とは――。

「僕の打ち方って、なんかやばいですよね。変じゃないですか?」

 自虐的にそう笑ったのは、1月の自主トレ期間中の出来事だ。近藤健介外野手のような美しい打撃フォームではないと自覚していた。野村いわく自身のスイングは、持ち前の身体能力をフルに活かしたもの。同時にその言葉は「野村だからできる打ち方」ということも意味していた。

 2024年秋から、どんな時でもウエートトレーニングを継続。そこには「同じことを続けることでメンタル面の安定を図る」という明確な目的も存在した。1年以上も継続してきた自分だけの“鉄のルーティン”。ただ、5月以降、スタメンを外れ続けた日々の中で、そこにメスを入れることを決断していた。

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この先で分かる3つのこと

1年以上も続けた“鉄のルーティン”に加えた変化
HRではなく…「ついにきた」と思えた会心の一打
長谷川勇也コーチの“何も言わない”アドバイス

デーゲームの時でもやり始めたウエートトレーニング

「デーゲームの時は体もキツくて、ウエートはナイターの時しかしていなかったんです。でも、もっとレベルアップせなあかんと思って、デーの試合後にやり始めました」

 126試合に出場した昨シーズンは、疲労も考慮してデーゲームの時はウエートトレーニングをしていなかった。しかし、今年は出場数も激減。「体力が有り余っているので」と、土日にも体を鍛える新しいルーティンに変えた。高重量をあげて、達成感を得る。自分を納得させるためにも、貫いてきた日々の流れに変化を加えた。

「前から僕、重いのしか持っていなかったんですよ。スピードを重視するようなメニューもあるんですけど、あまり“やった感”がないので、いらんかなと思っていた。でも、どこかでやらなあかんのはわかっていましたし、試合にも出ていなくて体力もあるので、ここからやろうかな、と。週末の土日、デーゲームの時にトレーニングできたら『1週間やり切れた』とも思えるので」

 5月9日のロッテ戦から6月9日の阪神戦まで、ちょうど1か月間、スタメン出場がなかった。その期間に与えられた打席はわずか「9」。打率も1割中盤まで落ち込み「二度とヒットを打てないと思っていました。もう一生、当たらんわって。『いつか復調してくれ』とかホンマになかったですよ。もう無理だと思っていたので」と本音が溢れる。それでも、どんな日もアーリーワークからバットを振り込み、長谷川コーチの言葉に耳を傾けて打開策を探してきた。

「ついにきた」――。

 野村にとって、手ごたえを掴めたヒットがある。会心のホームランではなく、6月11日の阪神戦、7回1死に畠から放った中前打だ。捉えたのは129キロのスライダー。「僕はストレートに合わなかったら、変化球のタイミングも分からなくなる」。基本的にスピードボールを狙うというのがスタイル。相手バッテリーが緩急を使ってきて、対応できるかどうかが、野村にとって大きなバロメーターだった。崩されることなく理想的なアプローチができたのは、自身の復調を強く感じさせた。

「(1号と2号の)ホームランまでも、実は(調子は)そんなだったんですよね。ただバットには当たるようになっていたので、自分の中でも考えながら。それであの日(11日)、2打席目がレフトフライだったんですけど『ちょっときたな、この感じならいけるかな』と思っていました。バットの軌道とか、いろいろ要素はあるんですけど、3打席目のセンター前で『やっときたな』と思いましたね」

長谷川勇也コーチも「フォームのことは言わないんですよ」

 サポートしてくれた人たちにも感謝しかない。「僕以上に考えてくれる」というのは、心からの本音だ。

「ハセさんも、フォームのことは全然言わないんですよ。今回も(見直したのは)始動のタイミングだけなので。他にも、吾郷(伸之チーフアナリスト)さんにも難しいことは言われないです。僕、見た感じのことを言ってほしいんですよね。技術的な細かいことよりも、アバウトな意見がほしいので。だから打撃投手の方とか、裏方さんに『どうですか』と聞くことが多いのかもしれないです」

 野村に中にも当然「動かしてはいけない芯」がある。それを理解したうえで、開幕以降は打開策を探す日々が続いた。もう二度と打てないかもしれない――。「大迷宮」とすら表現した暗い道のりを抜けることができたのは、たくさんの人に支えてもらったから、そして野村自身が諦めなかったからだ。

「プロ野球、長くてもそんなにはできないじゃないですか。僕も今年(12月)で30歳ですし、妥協せずにやり切らないと。やりたいことを全部やって、クビになるなら仕方ない。毎日が勝負なのは変わらないです」

 悲壮な決意を語った表情を、最後に少しだけ緩めて、こう続けた。「やっと“開幕”しました」。19日からはリーグ戦が再開する。チームとしても、ここからさらに加速していきたいところ。野村勇の存在が、必ずリーグ3連覇を成し遂げる重要なピースになる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)