上茶谷大河らの役割が「一番大変」 逆転負けの裏で…最後の3イニングに見えたブルペンの”思惑と収穫”

  • 記者:高橋純平
    2026.06.15
  • 1軍

勝ちパターン以外の投手の頑張りが光った12日のヤクルト戦

 12日に行われたヤクルト戦(みずほPayPayドーム)は悔しい敗戦に終わりました。2点リードの6回に一挙4点を失い、そのまま逆転負け。ファンの方も肩を落とす試合だったことでしょう。ただこの試合、僕は今後のホークスを占う上で大きな収穫を感じることができた一戦となりました。

 その理由は7、8、9回を投げた鈴木豪太投手、中村稔弥投手、伊藤優輔投手の無失点リレーがあったからです。なぜ、そう感じたのか――。その背景には、あまり知られていないリリーフの“運用方法”があります。派手ではない仕事でしたが、僕はこの3人に光るものを感じました。

 この日のホークスの先発は前田純投手。打線は2回までに2点を先行し、前田純投手は5回までパーフェクトという素晴らしいピッチングを披露していました。ところが6回、連打と四死球で満塁のピンチを背負った左腕は、岩田選手に同点タイムリーを浴びて降板。2番手の上茶谷大河投手も流れを止められず、最終的にこの回だけで4失点。逆転を許しました。

 点を取られただけでなく、ホークス投手陣が安打を許したのもこの6回だけ。いわゆる“魔のイニング”となりましたが、その後の3イニングを無失点に抑えたことが重要でした。勝ちパターンではない投手たちが、2点差という僅差のままバトンをつないでいき、逆転の可能性を残し続けた。これは簡単そうに見えて、リリーフの投手にとってはすごく難しいことなのです。

 そこには、ブルペンの知られざる実情が絡んでくるのです。

 

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この先で分かる3つのこと

高橋純平が知る試合前に決まるブルペン運用の実態
勝ちパターン温存の裏で若田部コーチが語った実情
重圧を背負い「一番大変な道」に挑む中継ぎ陣の葛藤

 この日のブルペンは、決して楽な「台所事情」ではありませんでした。直前の阪神3連戦では2、3戦目がいずれも接戦となり、勝ちパターンを担う木村光投手、松本裕樹投手、杉山一樹投手が連投を強いられていました。

 そのため、この日は松本裕投手が3連投を避けるためにベンチ外となり、2連投中だった木村光投手と杉山投手も、できれば肩を作らせたくないという状況。首脳陣にとっては勝ちパターンの投手を軒並み“温存したい”という思惑の中で迎えた一戦でした。

 試合後、若田部健一投手コーチ(ブルペン)に話を聞かせていただきました。

1回からブルペンで待機していた鈴木豪太投手の好投

 「先発が6回以上投げてもらわないと中継ぎに負担がくる。ましてや、阪神戦でああいう形になっているわけで、そうなると今日、ホイホイと(リリーフを)出す状態ではないから」

 本来の「勝利の方程式」が使いづらい。こうした状況では、リリーフ陣の起用は非常に難しくなります。

 中継ぎの運用そのものは、僕が現役だった頃から大きくは変わっていません。試合前練習の段階で投手コーチからその日、どのタイミングでブルペンに入るかを伝えられます。そこで、自分がどういう役割を担うかを各投手が把握します。

 1回からブルペンに入る投手は、先発が早々に降板した際に長いイニングを投げる役割。3回から入る投手も、ロングリリーフとしての役割を担います。4回以降は2イニング先の登板、つまり6回の登板予定なら4回にブルペン投球を行う、といったように、逆算して順番が組まれます。勝ちパターンの投手は5回ごろから準備に入っていく。試合前の段階で、その日の役割はある程度決まっています。ブルペンに入るまではロッカーで過ごしたり、トレーニングをしたり、各々の過ごし方で出番に備えます。

 この試合でいえば、鈴木豪太投手が初回からブルペンで準備していました、中村稔投手、伊藤投手も試合序盤からブルペンに入っていたはず。そういった投手は準備を繰り返しながら、試合終盤までブルペンで待機し続け、マウンドで自らの役割を果たす――。これは外から見る以上に難しい。現役時代、その難しさを知った身として、はっきり言えます。

 それは6回に逆転を許した上茶谷投手にも言えることです。リリーフで1番難しいのが、現状の上茶谷投手や木村光投手、津森宥紀投手が担っているポジション。競った展開の5回や6回、また僅差のビハインド展開やイニング途中での登板など、状況が多岐にわたる役割です。

 若田部コーチもこう力を込めました。

 「上茶谷とか津森とか、あとは(木村)光とかが一番大変なんだよ。これはもう、誰しもが通る道。スギ(杉山)にしろ藤井(皓哉)にしろ、しんどい6、7回をみんなやって、勝ちパターンにステップアップしていく。今は、そういう投手たちが投げているので」

 決まった役割の中で、しんどい場所を経験し、結果を残した者が勝ちパターンを担っていく。リリーフというのは、そういう仕事です。

 この日の上茶谷投手は、決して“緊急登板”だったわけではありません。首脳陣も、そして当の選手たちも、様々な試合展開を想定して準備を進めています。「前田純は(試合序盤を)抑えていても、突然やられることがある。『まさかあそこで』とは、僕らはならない」。若田部コーチが話した通り、上茶谷投手も入念に準備を整えていたそうです。

 様々な可能性を考慮した上で順番を組む。慌てて役割を二転三転させるようなことは滅多にありません。あくまで結果はあとからついてくるもの。プラン通りにリリーフ陣を運用しての結果なので、若田部コーチに悔やむ様子はありませんでした。

 「先発がやられた後に、中継ぎが試合を落ち着かせるというのがだいぶできるようになってきた。それは中継ぎの防御率に、いい具合に反映されているんじゃない」

 負けた試合を僅差のまま締める。1試合として見れば地味でも、こういう試合を続けていけるかどうかが今後に響いてきます。登板こそなかったものの、翌13日の試合には勝ちパターンの投手たちがしっかりと控えていました。今後に控える夏場の連戦、終盤の競り合い――。効いてくるのは、間違いなくこういう積み重ねです。

 みなさんには勝った試合の投手だけでなく、負け試合を淡々と締めた投手たちにも、ぜひ目を向けてほしい。今日のような試合は「秋につながる1試合」だと、僕は感じました。