スチュワート&木村光が口にした海野への感謝
小久保裕紀監督が「大きかったですね」と大絶賛する働きぶりだった。チームの勝利のために体を張り、身を粉にした9イニング。「よかったです」と胸を撫で下ろしたのは、海野隆司捕手だ。スローイング、ブロッキング、洞察力が光った一戦。背番号62が見せた献身的な姿を、深く紐解いていく。
1点差を制した11日の阪神戦(みずほPayPayドーム)。試合の流れを読み切ったのは、5回1死二塁の場面だった。熊谷が試みたセーフティバントは、一塁線に残りフェアとなった。まさかの形でピンチは広がり、先発のカーター・スチュワート・ジュニア投手もかなり入り込んでいるように見えたシーン。海野がベンチを見つめると、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)がマウンドへ向かった。
しっかりと時間を使って、考えを擦り合わせた。呼吸を整えて、立石を3球三振に仕留める。続く中野を中飛に打ち取ると、スチュワートは帽子を取って雄叫びを上げた。タイムを取った海野にはどんな意図があったのか。バッテリーを組む投手を輝かせるため、自分自身の「価値」を証明するために背番号62はマスクを被っている。
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この先で分かる3つのこと
マスクを被りながら証明し続ける「自分の価値」
守備中に海野隆司が感じた「気持ち悪さ」
スチュワート&木村光が語った感謝とは
「守備ができなかったら自分の価値はないので」
「自分が気持ち悪さを感じたら、マウンドには行くようにしているので。それはタイミングも含めて。来てほしいというところもあれば、今は来るところじゃないと(思われる)時もあるので。そこは見極めながら、ですね」
“気持ち悪さ”とは、試合が動きそうな「流れ」を意味しているだろう。頭を整理して、考えを擦り合わせるためにも間(ま)を取ることは重要な選択だ。スチュワートも「あそこで時間を作ってくれたことで冷静になれた。あれも野球の一部なのかなと思います。後続に対しても『頭は熱く、ピッチングは冷静に』じゃないですけど。0点で切り抜けられたので、よかったです」。海野が取ったタイムの意味を理解し、感謝の言葉を口にした。
同点とされた6回1死一、三塁では二盗を阻止。このワンプレーを小久保監督は「今日の勝因」と大絶賛した。盗塁阻止率.500はパ・リーグ2位。明らかに成長した姿を見せ続けていたが、そこに海野自身の「価値」が存在する。
「(スローイングで大切にしているのは)正確さじゃないですかね。あとはタイミングを含めて、捕球した時にちゃんとランナーがどこにいるのか、どれくらいのスタートなのかを見て、早めに投げた方がいいのか瞬時に判断しています。しっかりと自分の仕事をしていかないといけない立場ですし、守備ができなかったら自分の価値はないので」
2死満塁をしのいだ木村光も「信頼って大事なんだなと」
昨シーズン、日本シリーズで激突した阪神との試合は、終盤まで試練が続く。7回に登板した木村光投手は、2死満塁の大ピンチを迎えた。5番の大山に対して、追い込んだが、4球目のスプリットがかなり手前でワンバウンド。だが、ここで海野は見事なブロッキングを見せ、バッテリーミスを防いでみせた。背番号68にとっても、海野に対する信頼がさらに厚くなる一球だった。
「これまでスプリットを2回ホームランにされていて、無意識でゾーンに投げるのが怖かった。絶対に失投しないという意味でも低めに叩きつけちゃいました。手前すぎて話にならなかったですけど、それくらいの意識があったので。ああやって止めてもらえるので自分も思い切って投げられますし、海野さんにも『止めるから低めに投げてこい』と言われていて、本当にありがたいです」
結果的に大山を空振り三振に仕留めた。5球目のラストボールも、ワンバウンドになるスプリットだった。「あれも『低め、低め』というジェスチャーがあったから。海野さんのおかげであそこに投げられましたし、キャッチャーの信頼ってすごく大事なんだなと思いました」。ブロッキングにおける技術の高さは、投手の信頼に直結する。海野が磨いてきた全てが、発揮されたような一戦だった。
ブロッキングについて海野は「ピッチャーがしっかりと低めに投げられるように、信頼してもらえるようにというところです」と振り返った。勝つことで評価される捕手というポジション。今チームが見せている破竹の勢いには、海野の存在が大きく貢献しているはずだ。
(竹村岳 / Gaku Takemura)