山本恵大のバックホームに周東佑京が飛び跳ねた理由…追いかけていた“弟子の28試合″「一緒にできて嬉しい」

  • 記者:飯田航平
    2026.05.18
  • 1軍
見事なバックホームでピンチを救った山本恵大【写真:加治屋友輝】
見事なバックホームでピンチを救った山本恵大【写真:加治屋友輝】

山本恵大の右肘に埋まる3本のボルト

 まるで子どものように、純粋な喜びを爆発させた。17日の楽天戦(楽天モバイル最強パーク)、チームにとって5試合ぶりの勝利を呼び込んだのは、「6番・右翼」で今季2度目のスタメン出場を果たした山本恵大外野手のバックホームだった。完璧な送球で走者を刺した瞬間、誰よりも高く跳びはね、両手を突き上げて笑顔を浮かべた男がいた。センターからその送球を見つめていた、周東佑京外野手だ。

 1点リードで迎えた6回2死二塁。平良が放った打球は一、二塁間を破った。二塁走者が本塁を狙うも、山本恵の寸分の狂いもないノーバウンド送球がミットに収まりタッチアウト。その判定に敵地はため息に包まれた。5回にも佐藤の打球を好捕した背番号77は「ライトフライは、ちょっとドキドキしながら追ってました」と試合後に照れくさそうに振り返った。しかし、その後に見せた迷いのない腕の振りは、チームの窮地を救うに十分すぎるものだった。「飛んできたらホームで刺すイメージはできていました」。そう言い切る山本恵の表情には、頼もしさすら感じられた。

 この捕殺を誰よりも喜んだのは、間違いなく周東だった。2人は1月の自主トレを共にした「師匠と弟子」の間柄。今季、開幕を2軍で迎えた山本恵は、一時は4割を超える打率を残しながらも、1軍から声がかかるのをひたすら待ち続ける日々を送っていた。なぜ、周東はこれほどまでに後輩のワンプレーに感情を揺さぶられ、自分のことのように喜んだのか。山本恵が懸命なプレーを見せていたファームでの「28試合」を熱い眼差しで見守り続けた背番号23の想いと、2人が育んできた強い絆があった――。

会員になると続きをご覧いただけます

この先で分かる3つのこと

愛弟子の好プレーに周東が笑顔を見せた本当の理由
山本恵大の自慢の強肩に隠された、右肘を巡る「歴史」
周東が明かした、山本が1軍に生き残るための「課題」
山本恵大【写真:加治屋友輝】
山本恵大【写真:加治屋友輝】

周東がチェックし続けた山本の姿

「バックホームは『肩強いな』と思いました。自主トレでも一緒にやってきていたので嬉しかったです。2軍でもずっと打ってる中で、なかなか上がれなかったので。今はこうして(1軍で)一緒にプレーできていますし、そこの嬉しさもありますね」

 周東は試合後、実感を込めて深い歓びを明かした。驚くべきは、愛弟子の活躍を“数字”だけで追っていなかったことだ。「もちろん結果も見ていましたけど、盗塁も3つしていましたし。『どういう感じで盗塁してんのかな。どんな打席だったのかな』って映像で見ていたりもしていたので。頑張ってるなって思っていました」。自身も1軍で身も心も削りながらプレーしているにもかかわらず、離れていても弟子の動向を映像で細かくチェックしていたという。並々ならぬ愛情が、爆発的な笑顔の理由だった。

 山本恵も、自身のプレーを細かく見られているとは思いもしなかったという。「本当ですか? 師匠なんで、めちゃくちゃ嬉しいです」と、少年のように目を輝かせた。

 背番号77の自慢である強肩の裏には、知られざるストーリーがある。高校3年夏の大会前、右肘の手術を経験した。「今もまだ3本ボルトが入っているんですけど、これはずっと抜かないやつなので。1回肘の骨を取って、腸骨を入れて。ボルトが3本入れています」。そんな肘の状態でありながらも「結構肩には自信があるんで」と笑ってみせるところも山本恵らしい。

「僕も佑京さんと野球をやりたいと思って1軍にきたので。こうして色々お世話になったので、一緒にやりたいじゃないですか。その気持ちは2軍にいる時もずっとありました」

 胸の奥に秘めていた想いを言葉にした26歳。2軍でどれだけ結果を出しても声がかからない日々に心が折れそうになっても、「やってやろう」という気持ちは絶やさなかった。センターとライト、師弟で外野に並び立つその光景は、ずっと描き続けてきたものだった。それは周東にとっても同じはずだ。

ベンチでハイタッチをする周東佑京【写真:加治屋友輝】
ベンチでハイタッチをする周東佑京【写真:加治屋友輝】

周東が語った、山本恵が1軍に残るための課題

 この日、山本恵は試合の終盤で交代した。その現実について、周東はあえて厳しい言葉を選んだ。「現状、最後まで守れないですし、連敗中だったし。今日は勝たないといけないゲームだったというのもあると思います。課題は守備と走塁なんで。でも守備の面で、今日のように見せられたら、より1軍に残れる可能性も増えると思うので、彼の野球人生においても良かったなと思います」。嬉しさの反面、1軍で生き残るための課題を語ったが、これこそが2人の中で成り立つ、本物の信頼関係だ。

 交代を告げられた山本恵自身も、現在地を痛いほど分かっている。「レギュラーを張るということはそういうことだと思うので。最後まで出ることもそうですし、『今日のピッチャーがこの人だから出られない』とかじゃなくて、どのピッチャーでも出られるように。そういうところからやっていきたいと思います」。師匠の背中を追いかけ、1軍のピースとなるために――。ボルトの埋まる右腕を誇らしく掲げた表情には、さらなる高みへ歩みを進める決意がにじんでいた。

(飯田航平 / Kohei Iida)