号泣から2日後…徐若熙を笑顔にした藤田悠太郎の言葉 “朝イチ”の再会に見えた表情の変化

  • 記者:竹村岳
    2026.05.10
  • 2軍
藤田悠太郎と言葉を交わし笑顔になる徐若熙【写真:竹村岳】
藤田悠太郎と言葉を交わし笑顔になる徐若熙【写真:竹村岳】

徐が2軍本体に合流…真っ先に声をかけた藤田

 涙のノックアウトから2日後。助っ人右腕に声をかけたのは、20歳の若鷹だった。「普通に『おはようございます』と言った感じですけどね」。徐若熙投手とのやり取りを明かしたのは、高卒3年目の藤田悠太郎捕手だった。

 徐は4日の西武戦(ベルーナドーム)に先発登板したが、初回に4失点。2回にも2点を失うと、マウンドから降りる時には目に涙を浮かべていた。「チームに迷惑をかけてしまった。本当に申し訳ないです」。4回14安打7失点で今季3敗目を喫し、試合後には2軍での再調整が決まった。小久保裕紀監督も「1回、やり直した方がいい」と言及していた。

 関東から帰福し、2軍に合流したのが6日だった。午前9時にナインが集合。選手それぞれが体を動かす時間になると、真っ先に藤田が駆け寄った。その思いには“捕手らしさ”がたっぷりと詰まっていた。

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この先で分かる3つのこと

涙の降板から2日。徐若熙の表情に見えた変化
高谷コーチも絶賛。孤独な助っ人を救う気遣いの心得
20歳の捕手が磨く信頼への言語化「少しずつ」

外国人選手との距離感「最初は声をかけてみます」

「話したいから声をかけに行っただけですけどね。ルオシーさんとライブBPで組んだことがあったので、普通にコミュニケーションを取りたいなと思ったからです。探したんですけど、近くに通訳さんがいなかったので……。2人で話していたら、中国語の挨拶を教えてもらいました」

 チームで中国語の担当通訳は2人。そのうちの1人である李易諭通訳とは、3軍時代からやり取りを重ねて親交を深めてきた。徐とも2月の春季キャンプ中にバッテリーを組んでいたこともあり、初対面ではなく、久々の再会だった。「最初に話した時は『よろしくお願いします』から始まって。無口ではあったんですけど、きょう話したら表情も柔らかくなっていたので『慣れてきたんやな』と思いました」。表情の変化を見逃さないのも捕手として大切なこと。「ルオシーさん」と呼ぶところにも、20歳らしさが表れていた。

 今季、高卒3年目を迎えた藤田。昨シーズンは1軍で2試合に出場するなど、着実に経験を積んでいるところだ。育成にも多くの助っ人選手を抱えるホークス。外国人選手との距離感について、藤田はどんなことを心がけているのか。

「基本的に、最初は僕から(声かけに)行ってみます。あとは、あっちから話しかけてくれるまで待ちますかね。あんまり行かないかもしれないです。その中で、自分が話したいことはしっかりと話せるように。今はそれくらいがいいのかなと思って意識しています」

 外国人選手も、性格は人それぞれ。自分だけのルーティンや“空間”を持っている助っ人も少なくない。それをリスペクトしながら、適度な距離感を心がけているという。「外国人から見たら、僕はいつも子どもっぽく見られるんですよね」。照れ笑いを浮かべたが、捕手として見せる行動の1つ1つが、信頼へとつながっているはずだ。

久々の再会となった徐若熙と藤田悠太郎【写真:
久々の再会となった徐若熙と藤田悠太郎【写真:

藤田の行動を高谷コーチも絶賛

「ものすごく大事なことだと思います」。藤田の行動を絶賛したのが、高谷裕亮2軍バッテリーコーチだ。現役時代、シーズンを終えて助っ人選手が帰国する際、必ず空港まで見送りに行っていた高谷コーチが言うから説得力がある。表情や仕草、ルーティンなど些細なところに目を凝らし続ける。

「もうなんでもいいから話したらいいんですよ。『おはよう』とか『飯食ったか?』とか、そういうのでもいいんです。僕たちも海外にいけば、外国人なわけじゃないですか。通訳がいても、やっぱり孤独なんですよ。だからこそ『俺のことを見てくれているんだ』と思ってもらえるようにコミュニケーションは取っていきたいし、そういうところから少しずつ『お前に受けてほしい』となっていけばいいじゃないですか」

 今季から2軍管轄となった高谷コーチは、藤田の成長についても目を細める。斉藤和巳2軍監督をはじめ、首脳陣が若鷹に求めているのは思考の「言語化」だ。バッテリーでミーティングをしていても「思っていることを伝えて、ちゃんと相手もわかってもらわないといけないので。捕手にとっても言語化はすごく大切です。『藤田はこういうことが言いたいんだろうな』というのは少しずつ伝わっています」。準備を重ねているからこそ、言葉に深みが生まれる。その努力は、首脳陣にもしっかりと届いていた。

 技術はもちろん、気遣いもプロとしては大切な要素。ファームでマスクを被りながら、一歩ずつレベルアップを遂げている。「なんでも、ここから勉強していけたら」。筑後で汗を流している20歳の若鷹は、捕手として欠かせない貴重な才能を持っている。

(竹村岳 / Gaku Takemura)

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