柳町達が「燃えるものがありました」 目の前で申告敬遠…長谷川コーチが耳打ちした言葉

  • 記者:福谷佑介
    2026.05.05
  • 1軍
勝ち越しの2点二塁打を放った柳町達【写真:加治屋友輝】
勝ち越しの2点二塁打を放った柳町達【写真:加治屋友輝】

「なんとかして勝ち越そうという思いで打席に入りました」

 二塁ベース上でグッと拳を握り締めた。ソフトバンクの柳町達外野手が見せた、気持ちのこもったガッツポーズだった。チームを勝利に導く勝ち越しの適時二塁打。目の前の悔しさを晴らす一振りだった。

「自分の中で燃えるものがありました」

 球団を通じたコメントにも柳町の思いがこもっていた。

 5月5日に行われた西武戦(ベルーナドーム)。1点ビハインドで迎えた5回、周東佑京外野手の適時打で同点に追いついた。さらに近藤健介外野手の四球、牧原大成内野手の犠打で1死二、三塁とチャンスが拡大。続く栗原陵矢内野手を迎えると、西武ベンチが選択したのは申告敬遠だった。

 1打席目、2打席目と安打を放っていた4番との勝負を避け、次打者の柳町を相手に選んだのだ。この選択を目の当たりにした背番号32の胸中には湧き上がるものがあった。そして、その横で静かに耳打ちする人物がいた。

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この先で分かる3つのこと

申告敬遠の直前、長谷川コーチが授けた助言
3ボールからスイングを仕掛けた、打席での思考
不調にもがきながらも、前を向く柳町の覚悟

「なんとか……なんとかして勝ち越そうという思いで打席に入りました」

 目の前の打者が歩かされて、悔しさを感じない選手はいない。3球連続でボールとなった4球目、本来なら1球待つような場面でもスイングをかけていった。「甘く来たら打ってやろうと思っていた。ちょっと空振りしちゃったんですけど、その後にいいバッティングができたので良かったです」。3ボール1ストライクとなった5球目のフォークを泳ぎながらも右中間へと弾き返し、走者2人を本塁へ迎え入れる勝ち越し適時二塁打とした。
「バッター有利のカウントだったんで、思い切って振りに行った結果、良かったなと思います。ボールだったんですけど、それを泳ぎながらしっかり打てたので良かったです」。試合後に冷静に振り返った言葉の通り、最後は反応で仕留めた見事な一打だった。

 栗原が歩かされる直前のこと。一塁側ベンチ前で出番を待つ柳町の肩を抱き、声をかけた人物――。それが長谷川勇也打撃コーチ兼スキルコーチだった。

 柳町はその場面をこう振り返る。

「『いつも通りにちゃんと行け』という感じでしたね。アプローチの話だったので。狙い球というよりかは『センターに入っていって』という話をされました」

 昨季、最高出塁率のタイトルを獲得した柳町だが、今季はここまで打率2割台前半に沈んでいる。本調子にない打者に対して送ったシンプルな言葉。頭の中を整理して打席に入らせるための助言になったに違いない。

 この日は第3打席に決勝打を放ったものの、残る4打席はいずれも凡退に終わった。小久保裕紀監督が「それ以外の打席内容をもう少し上げないと」と語ったように、まだまだ万全とは言えない。当人も「もっとこれから状態を上げていくしかないかなと思ってます」と認める。

 なかなか状態が上がらずとも、試合は待ってくれない。もがきながら、なんとか状態を上向かせるしかない。「やるしかないので。なんとか明日以降も集中して挑めたらなと思っています」。復調の確かな足がかりになるように――。屈辱を力に変えて放ったこの一打をキッカケにしたい。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)