東浜巨、2軍生活に「慣れたら終わり」 盟友・嶺井博希の存在…冗談に滲むお互いの“本音”

  • 記者:竹村岳
    2026.04.23
  • 2軍
嶺井博希と東浜巨【写真:竹村岳】
嶺井博希と東浜巨【写真:竹村岳】

1か月前に漏らした本音「正直、苦しかった」

「この環境に慣れてしまったら、それこそ終わってしまうので」

 14年間のプロ生活で通算76勝。投手陣最年長の東浜巨投手は今、タマスタ筑後で若鷹とともに汗を流している。実績を積み上げてきた自負があるからこそ、自分自身を甘やかすことは絶対に許さない。孤独に牙を研ぐ背中。そこには1軍の“熱”への狂おしいほどの執念と、無言で支え合う盟友・嶺井博希捕手の存在があった――。

 ファーム・リーグで今季4度目の登板を果たしたのは、16日の阪神戦(日鉄鋼板SGLスタジアム)。先発としてマウンドに上がると、5回1/3を投げ1安打、7三振と結果を残した。「でも、フォアボールを4つも出してしまった。それが現実だし、内容で言えば悔しい感じではありました」。課題に対する強い意識は絶対に忘れない。1軍を見据えた調整は、日々の工夫にも明確に現れている。

 オープン戦では2試合に登板して防御率9.00。3月1日の西武戦(アイビースタジアム)で喫した7失点が尾を引く数字となった。開幕ローテーションを争った1か月間に「正直、苦しかった」。自らの状態に苦心し、リアルな本音すら漏らしていた。

 開幕してから1か月ほどが経ち、東浜の表情は、確実に充実感を取り戻している。手放してはいけない1軍の“熱”、調整段階で見せ続ける圧倒的な“数”、そして盟友――。背番号16が、いまの胸中を激白した。

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続きの内容は

「慣れたら終わり」東浜巨が守り続ける“1軍の基準”
調整において、あえてブルペンの回数を増やす理由。
「首を振れば答えが出る」盟友・嶺井博希と描く再起の青写真

調整の中で増える「傾斜の回数」、思い返す若手時代

「ちょっとずつ良くなってきていると思いますね。当然、工夫もしながら、一歩ずつ進んでいる感覚。あとは精度の問題だと思いますね。もっといいものを増やしていって、中身を濃くしていきたいです」

 先発投手が行う調整。登板間隔が「中6日」であれば、ブルペンでの投球練習は1度だけが通例だ。しかし、ファームでチャンスを狙い続ける背番号16は、あえて傾斜の上で投げる回数を増やしているという。「球数は多く投げないですけどね。1回で30球、40球くらい。感覚を常に体に入れている感じです」。その理由は明快。「僕たちは平地で仕事しないじゃないですか」。職場はマウンドの上。そう言い切る口調が、どこまでも深く“ピッチャー”を理解しているように聞こえる。

 プロ1年目の2013年、即戦力として期待されながらもわずか3勝に終わった。2軍では悔しさのあまり、登板翌日でも100球を超える投げ込みをすることも珍しくなかった。そんな若手時代に、今の姿はどこか重なる。「センスがある人はできるかもしれないけど、僕は数をやって覚えてきた。変化球の精度はそうやって覚えていくしかないので。だから傾斜で投げる回数を増やしているのはあるかな」。不器用を自認する右腕が辿り着いた、泥臭くも純粋な反復の境地だった。

 東浜の言葉に、誰よりも深く共鳴しているのが、1歳下の嶺井だ。沖縄尚学高、亜大でバッテリーを組んだ相棒。「あいつもふざけた感じで『朝早くから来てダラダラ動きたいんです』と冗談っぽく言うけど、しっかりやっている。プライベートでも話を聞いたら、やっぱり『DeNA時代の先輩がそうやっていたから』と言っていた。いいなと思ったことを、純粋に継続できる能力が嶺井のいいところだよね」。一切の隙を見せることなく、早朝から準備するベテラン捕手の姿勢を、背番号16も静かに見守っている。

 3月20日の阪神戦(タマスタ筑後)で、久々にその嶺井とバッテリーを組んだ。結果は7回途中まで投げて2失点。「この試合が、状態が上がるきっかけになりましたね。やっぱり嶺井は、ピッチャーをどうにかしたいとすごく思ってくれている。僕も『ここはこれを投げたい』と思って首を振るけど、嶺井もわかっているから『これでしょう?』と次のサインを出してくれる。どんな時も大体2回、3回で決まる」。

 東浜からの絶大な信頼に、嶺井も照れくさそうに微笑んだ。

「高校、大学も合わせたら、もう9年も一緒にやっているんですかね。呼吸が合わない方がおかしいかもしれないですね。意識をしているわけではないですけど、巨さんが自分を汲み取って投げてくれるので。『合わせてもらっている』という感じだと思います」

3月20日の阪神戦でバッテリーを組んだ嶺井博希と東浜巨【写真:竹村岳】
3月20日の阪神戦でバッテリーを組んだ嶺井博希と東浜巨【写真:竹村岳】

東浜巨と嶺井博希が見せる“無言のコミュニケーション”

 嶺井は「お互いに年を取ったんじゃないですか」と笑ったが、2人の姿は確実に若手の“お手本”になっている。3月の阪神戦をベンチから見守った高谷裕亮バッテリーコーチは「あの2人の呼吸の合い方は、若い選手にも本当に見習ってほしい。踏んできた場数もあるんですけど、“理解する”というのはどういうことなのか。何も言わなくても伝わるような、高い水準でプレーしていますよね」と唸るしかなかった。

 2軍で重ねた4度の登板。最多の球数は4月3日の巨人戦(Gタウンスタジアム)での「97」だった。他の投手との兼ね合い、首脳陣の意図を理解しながら、東浜は「やっぱりもっと投げたいんです」と本音を漏らす。6月には36歳を迎える右腕だが、1軍への“渇望”は強くなるばかりだ。

「110球、120球を基準にしていないと。90球でOKと思っていたら、1軍だと出力も上がるだろうし。当たり前の質を常に自分の中でマックスにしておかないと、いざという時に後悔もすると思う。この世界は、何が起こるかわからない。自分の軸だけはどんな時も“上”に置いておかないといけないし、常に緊張感を持って準備しているつもりではいますね」

 準備に妥協はない。後悔もしたくない。「もっともっと投げたい」――。純粋な渇望を原動力に、東浜はまだマウンドという「仕事場」に向かっていく。

(竹村岳 / Gaku Takemura)

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