木村光が開幕戦で払拭した苦い記憶 上沢直之からのバトン…5か月前とは“全く違う意味”の褒め言葉

日本ハムとの開幕戦で6回に登板した木村光【写真:栗木一考】
日本ハムとの開幕戦で6回に登板した木村光【写真:栗木一考】

昨年CSファイナル第3戦以来となる公式戦での上沢→木村光の投手リレー

 悔しさを糧にして、4年目で掴み取った初の開幕1軍――。チームの2026年初戦で好救援を見せた木村光投手は安堵の表情を浮かべた。「上沢(直之)さんが粘って投げてくれていたので、とにかくチームに負けを付けないように、と思っていました」。育成入団から這い上がり、まばゆいスポットライトの中で力強いボールを投げ込んだ右腕。脳裏に刻まれているのは、“10・17”の苦い記憶だ。

 27日、みずほPayPayドームで行われた日本ハムとの開幕戦。25歳の右腕は4-4の同点で迎えた6回、先発・上沢直之投手の後を受けて2番手としてマウンドへ。勢いに乗る日本ハム打線を三者凡退に打ち取り、チームに勝利の流れを引き寄せた。小久保裕紀監督も「あのポジションでよく投げてくれた」とその働きを称賛した。

 公式戦、プレーオフで上沢-木村光のリレーが実現したのは、奇しくも敗戦を喫した昨年10月17日の日本ハムとのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第3戦以来だった。この試合は、3点ビハインドの7回2死満塁という絶体絶命の場面で、木村光は上沢からバトンを受けた。しかし結果は走者一掃の適時二塁打。試合の行方を決定づける痛恨の一打を許した。

 あの記憶から5か月が経った今、右腕は「もちろん、その時のことはまだ覚えています」と振り返る。今でも忘れない悔しさ――。しかし開幕戦の降板後にベンチで2人の間で交わされた言葉は、半年前とは決定的に違っていた。

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「ナイスピッチ」の響きを変えた、木村光の成長と上沢の絆
忘れられぬCSから半年。刻んだ「もう二度と」の誓い
15試合連続無失点!右腕がマウンドで得た余裕

「あの時は悔しい思いをしましたし、『もう2度とこういうことがないように』と自分の中で思いました。でもああいう打たれた悔しい経験があって、今があるのかなとは思いますね」

 大舞台での苦い経験が、背番号「68」を確実に強くしていた。「去年の日本シリーズやCSを経験して、気持ち的に余裕ができたというか。きょうも『もし自分が投げるなら絶対に抑えたい、負けを付けないようにしたい』とは思っていました」と開幕戦の投球を振り返った。

 マウンドに上がれば、超満員の本拠地の大歓声が耳に入らないほど集中していた。「緊張はしましたけど、やるべきことをやるだけだと思っていたので」。常に準備を怠らない姿勢が最高の結果を呼び込んだ。

5か月前とは違った「ナイスピッチ!」

 上沢がホークスに加入した昨年から、遠征先で食事を共にするなど私生活でも野球の技術面でも多くの助言をもらってきた。「大好きです」と言い切るほど、最も尊敬する先輩の一人だ。

 昨季のCSでは失意のままベンチに戻ると、上沢から「ナイスピッチ。お前は悪くないよ」と労いの声をかけられた。この日も、3つのアウトを取り終えてベンチに戻ると同じように「ナイスピッチ!」と迎えられた。しかし、それは半年前とは違った。今度は自らの腕で先輩からのバトンをしっかりと繋ぎ、受け取った“賛辞の言葉”だった。

 それでも現状には満足していない。「自分は結果を残し続けなければならない立場なので。明日以降も同じパフォーマンスを繰り返せるようにしたい」。そう語りつつも「あの時とは違う投球ができたのは嬉しかったです」と、最後は思わず笑顔をこぼした。

 掴んだチャンスは逃さない。昨シーズンの9月5日の楽天戦(みずほPayPayドーム)から8試合連続無失点でシーズンを終え、対外試合では現在15試合連続で無失点を継続中。「中継ぎとして自分がいいピッチングをできたら、上沢さんに限らず先発で頑張っている人を鼓舞できると思うので。頑張りたいなと思います」。木村光は躍進し続ける。

(森大樹 / Daiki Mori)