庄子の左手に…ありあわせのファーストミット
プロ2年目にして開幕1軍の切符をほぼ手中に収めた庄子雄大内野手。その左手には見慣れぬ“ミット”がはめられていた。主戦場のショートとセカンドだけでなく、サードの守りもこなす23歳。新たに挑戦しているのはファースト守備だ。内野の全ポジションを守れるよう「指示」を出したのは、小久保裕紀監督だった。
シーズン開幕を間近に控えた24日、みずほPayPayドームで行われた全体練習。庄子はファーストミットを手に、本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチのノックを受けた。難しい打球をダイビングキャッチするなど持ち前の守備力を示したが、本人の口から出てきた言葉は意外なものだった。
「ファーストは大変ですね。何なら内野の全ポジションの中で一番難しいんじゃないかなっていうくらいです。いざゲームになると、また色んな動きも入ってきますし。ショート、セカンド、サードを含めて全部練習しないといけないなと思っています」
“ファースト・庄子”のオプションは、なぜ生まれたのか? そこには首脳陣の明確な狙いがあった。23歳が明かしたのは、指揮官から指令を出された瞬間に抱いた思い、そして今季にかける決意だった。
会員になると続きをご覧いただけます
続きの内容は
本多コーチが明かす「勝利の方程式」の全貌
打撃より優先!庄子が磨き上げた「唯一の武器」
「外野、極論は…」庄子の“究極の覚悟”とは
「ファーストの練習を始めたのは、本当にここ1週間くらいです。試合前の練習中にサードでノックを受けていた時に、監督が僕ではなく本多コーチに『庄子にファーストも守らせておいて』と言われました。その後に本多コーチから『ファーストに入る可能性もあるから練習しておこう』と説明を受けた感じですね」
ファーストの経験について「初めてです。少年野球で1回やったかな……くらいのレベルです」と話す庄子。小久保監督から指令を受けてから、急いで契約しているメーカーに「今すぐ使えそうなやつありますか」と尋ね、ありあわせのミットを借りている状況だという。
本多コーチが明かした「勝利の方程式」
現在、二人三脚で庄子の守備練習に付き合う本多コーチは、新たなチャレンジの狙いについてこう説明する。
「本来はあまり(見える)景色とか角度とかを変えたくないというのはあるんですけど。やっぱり勝つための“方程式”がピッチャーにあるように、野手も色んなポジションを動かしていくというところも、昨年はいい形でできたので。控えでいうと昨年は川瀬(晃)ですよね。今年は庄子も(開幕)1軍に入ったので。そういう役割が増えていくかなという状況では、ショートとセカンド、今はサードも練習していますけど、彼にとっては必要な部分だと思います」
ゲーム展開によっては、山川穂高内野手の代走で庄子が出場するケースは十分に考えられる。そこで庄子がファーストを守ることができれば、守備要員として他の選手を起用する必要がなくなり、ベンチワークにより幅が生まれる。「そういう場面もあると思います」と本多コーチも同調する。
庄子自身にとっても、ファースト挑戦は願ったり叶ったりだった。「守れるところが多くなれば、出場機会も自ずと増えると思うので。外野だろうが、極端に言えばキャッチャーだろうが、やれと言われたところでしっかり自分の役割を果たすことが第一優先だと思っています」。プロ野球選手にとって、何よりもの仕事はグラウンドに立つこと――。庄子の考えは単純明快だ。
プロ2年目を迎える今シーズンに向け、何より磨いてきたのは課題の打撃ではなく、守備と走塁だった。
「バッティングはあまり気にしていないというか……。まずは守備と走塁を100パーセントできないことには、このチームで1軍に残ることすらできないと思っているので。1月の自主トレから、まずは守備と走塁を重点的に強化してきました。とにかく守りと走りで『こいつは外せない選手だな』と思わせてからがスタートだと思っています」
そんな思いで臨んだオープン戦では、打席に立った数こそ多くないものの、打率.333(12打数4安打)と結果を残した。「限られたチャンスしかないだろうなと思っていたので。打席も守備も走塁もそうですけど、与えられた機会で何か1つでも良い印象を首脳陣に残せるか、というのを常に意識していました。それが良い方向に出たのかなと思います」。
まずはチームに求められる存在になる――。その決意が実を結び、まずはスタートラインに立った23歳。わずかなチャンスでも逃さない。これも“フォア・ザ・チーム”の1つの形だ。庄子雄大の存在は、2026年のホークスにとって大きなものとなるに違いない。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)