秋広優人ら7選手の2軍降格 裏側を徹底的に“掘り下げ”…首脳陣が笹川吉康に感じていた“予兆”

大江竜聖、秋広優人、笹川吉康(左から)【写真:加治屋友輝、栗木一考】
大江竜聖、秋広優人、笹川吉康(左から)【写真:加治屋友輝、栗木一考】

首脳陣が交わした“会話”…7選手降格の舞台裏

 期待しているからこそ、“苦渋の決断”があった。ホークスにとって最後のオープン戦となった22日に行われた広島戦(マツダスタジアム)。選手たちは“3.27”の開幕メンバー入りへ向け、春季キャンプから実戦機会の場で必死にアピールをしてきた。しかしこの日、秋広優人内野手、大江竜聖投手ら7選手へ2軍降格が言い渡された。「最後の最後、試合中に決めた」。首脳陣が下した決断の裏側に迫った――。

 オープン戦のラストはなんとも後味の悪い結果で終わった。8回に逆転した直後の9回2死一塁。代打・秋山翔吾外野手の打球を右翼に入った笹川吉康外野手が痛恨の後逸。同点に追いつかれる失策となり、小久保監督も「プロとして恥ずかしい」と断罪した。

 この日の9回2死まで、指揮官は笹川をプロ入り初の開幕1軍メンバーに考えていた。しかし試合後に一転。「笹川はファーム。きょうの最後のプレーです」と“1つのミス”で降格が決まったという。試合後にコーチ陣の間で交わされた“会話”――。そして7選手の降格理由を、首脳陣の言葉から掘り下げた。

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続きの内容は

笹川のミスは必然だった?村松コーチが明かす「驚きの予兆」
3発の秋広をあえて落とした、指揮官が貫く「役割の順位」
大江ら4投手はなぜ。倉野コーチが明かす「選考理由」

「あそこで一番やってはいけないプレーが起こっているわけで。これはもう今の1軍の現状では、試合には出られないなと。もう1回2軍に行って、きょうのミスを体にも心にもすべてに刻んで、見つめ直す必要があると思う」

 重い口調で笹川のミスを振り返ったのは、大西崇之外野守備走塁兼作戦コーチだ。試合終盤から雨が降り、外野の芝が滑りやすい状況だった。しかしそれも含めた状況判断が「プロなので当然不可欠」であり、それほどまでにこのワンプレーを重く捉えた。

 村松有人野手チーフコーチは「以前にも若干、“そういうこと”が起こりそうなプレーがあったので、そこは指摘されていた。やっぱり(ミスが)出るべくして出たのかなというところは当然だった」とはっきり語った。「あのプレーがやっぱりチームの士気に関わるところでもあるので」。自分を見つめ直してほしいというのが、試合後の首脳陣の間で交わされた共通見解だった。

 笹川は20日の広島戦(みずほPayPayドーム)で2点適時打をマークすると、この日も適時打を放つなど、最後の最後までアピールを続けていた。首脳陣も未来のレギュラー候補として期待する23歳。「シーズンはまだ始まっていないわけやから。必ずまた、彼がチームの戦力として帰ってきてくれると思うし。だからあえて今、そういう決断した」と大西コーチは明かした。

秋広の未来を期待するからこそ…指揮官が下した決断

 オープン戦でチームトップの3本塁打を放っていた秋広も降格となった。小久保監督も春季キャンプで「去年の秋とオフでこんなに変われるんだなと。目に留まりました」と評価していた大砲候補。レギュラーとしての飛躍を期待するからこその判断だ。

「後ろ(試合途中)から行く選手じゃないので。代打でも3番手になる。(誰かが)故障や病気の時にパンと入れるように、今はファームでやらせておくという(判断)。彼にも『チーム編成的にそうするから』と説明はしました」

 1打席限定の代打ではなく、ファームで実戦を積ませる。「僕のメンバー編成は1位から17位まで野球が上手い順ではないので。ベンチの役割においての順位を決めているので」という指揮官の考えが色濃く反映された形だ。この春のアピールを認めたからこそ、昨季は開幕2軍から打撃タイトルを掴んだ柳町達外野手のように、秋広がスタメンとしてチャンスを掴むことを期待している。

 そして、栗原陵矢内野手が5年ぶりに再挑戦することで“混沌”としていた捕手争い。「キャッチャーは2人が濃厚ですかね」と指揮官が明言していた中、降格となったのは渡邉陸捕手だった。オープン戦では6打数4安打3二塁打と持ち前の打撃でアピールは見せたものの、6試合の出場に留まった。

 昨年チーム最多の105試合でマスクを被った海野隆司捕手、そして昨年の開幕マスクを被った谷川原健太捕手が1軍に残る。小久保監督も「とりあえず捕手の体制は2人でいくので。陸に『1回ファームでやってこい』と話しました」と説明した。細川亨1軍バッテリーコーチも「キャンプから休まずにアーリーワークをやっている。いい形で姿が変わってきている」とその成長を認めていた。

倉野コーチが明かす評価…広島戦で行われていた“最終テスト”

 そして4選手の2軍行きが決まった投手陣。リリーフ陣にとっては、この日がまさに“最終テスト”だった。倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)も「本当にきょうの結果次第というのはありました。ただきょう一日だけで決めたわけでもない。今までの積み重ねの結果として、最終判断になった」と明かした。

 体調不良で出遅れていた左腕の大江については「状態がまだ上がっていない」と指摘。それでも倉野コーチは「左のサイドは貴重な存在。大江は他の人が持っていないものを持っているので。早く状態を上げてほしいなというのはありますね」と早期復活を期待した。状態が上がらない中で、左投手という理由だけで1軍に置いておくのは、本人にとってもチームにとってもマイナスになるという冷静な判断だった。

 この最終局面で、ともにルーキーの稲川竜汰鈴木豪太は1軍に生き残った。一方で、22日の試合でタイムリーを許した大江、失点を喫した育成の大竹風雅投手が降格となった。小久保監督も「きょうの最後の最後まで、本当に試合中に決まりました。きょう結果を残した選手は残そうということになりました」と語った。

 そして津森宥紀投手は15日のDeNA戦で満塁弾を許すなど、5試合で防御率7.71。昨オフに現役ドラフトでロッテから加入した中村稔弥投手も3試合で防御率6.00と、共に思うような結果を残すことが出来なかった。倉野コーチも4投手について「『1日も早くいい状態にして、入れ替えが起きる時に1軍から呼ばれるように頑張ってくれ』という話はしました。現状の評価というところなので。これが全てではないので」とエールを送った。

 昨年も1軍昇格した選手が即座に結果を残し、ヒーローとなった光景は何度も目にした。通達を受けた選手たちにとって、今は到底受け入れがたい現実かもしれない。しかし、この悔しさを糧に再び1軍の舞台で輝く日まで――。今はその瞬間を楽しみに待ちたい。

(森大樹 / Daiki Mori)