明石コーチとともにお願い「いただけませんか?」
手に吸い付くようなバットの感触とともに、完璧に捉えた打球は防球ネットすら超えていこうかという勢いで右翼に飛んでいった。2月28日に行われた社会人・日本製紙石巻との練習試合(生目第二)。B組の「7番・一塁」で先発した佐倉侠史朗内野手が豪快な一発を放ち、その存在をアピールした。
試合開始の2時間ほど前、佐倉は明石健志R&Dグループスキルコーチ(打撃)とともに、ある人物の元を訪れていた。「バットをいただけませんか?」。佐倉の願いを快諾し、自らのバットをプレゼントしたのが栗原陵矢内野手だった。譲り受けた“相棒”から放たれた豪快アーチ――。3年目の20歳に一連の経緯と、行動に至った思いを聞いた。
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続きの内容は
選手会長・栗原陵矢への「憧れとライバル心」の真意とは
柳田悠岐から学んだ、体躯を活かす「秘訣の食事術」
三冠王を目指す20歳が語る「支配下」への道筋
「元々は渡邉陸さんのバットを1本もらって、それがめちゃくちゃ振りやすかったんですよ。それで、栗原さんも同じ型のものを使われていて。さすがに陸さんから2本をもらうのもアレかなと思って、明石コーチに相談したら『じゃあ、栗に一緒にもらいに行こうぜ』と言ってもらえたので。それでお願いさせてもらいました」
普段は1軍の主力選手と育成の違いもあり、「あまり会うことはないですね」という佐倉。それでもいきなりのお願いに栗原は「全然いいよ!」と気さくに応えてくれたという。自らのバットで後輩が一発を放ったことを聞くと、「使ってました? マジで? やるねぇ!」と笑みを浮かべていた。
昨年は柳田にもバットを“おねだり”…どん欲さも武器に
将来の主軸候補として大きな期待をかけられている20歳にとって、今季は“勝負の1年”となる。「もう3年目なので。今年が終わってクビになってもおかしくないし、そこはめっちゃ頑張らないといけないなと思っています」。その危機感は、今年から選手会長を務める栗原への思いにも表れている。
「サード、ファーストと自分と同じポジションを守る選手なので。当然憧れもあるし、でも自分的にはライバル意識は持っていますし。上でプレーしている人が、どういうバット使ってるのかという興味もありましたね」
昨年には筑後でリハビリに励んでいた柳田悠岐外野手からもバットを3本貰った。いずれも折れてしまったが、今もロッカールームで大切に保管している。柳田からは食事のアドバイスも聞くなど、先輩に対しても物怖じせず、どん欲に知識を吸収しようとする面も佐倉の大きな強みだ。
1か月にわたる宮崎でのキャンプも打ちあがり、これから2026年シーズンが本格的にスタートする。「現状は結果としては出ていますけど、まだまだ物足りないところはあるので。長打率という部分でも、きょうのホームランが(今年の実戦で)初の長打だったので。コンスタントにツーベースも打てるようにならないといけないですし、強い打球をもっと打っていきたいなと思っています」。
高校時代は“四天王”と呼ばれ、プロでの目標に「三冠王」を掲げる佐倉。持ち前の恵まれた体躯に加え、自らのレベルアップのための行動力も備える20歳。新たに手にした“武器”を使いこなし、1日でも早く支配下をつかみ取って見せる。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)