25日の台湾・中信兄弟戦では左翼へ豪快な2ラン
6年目を迎えた井上朋也内野手の表情がとにかく明るい。25日の台湾・中信兄弟戦(台北ドーム)では4回に左翼席へ豪快な2ランを叩き込むと、8回には逆方向への見事な右前打を放った。23日の侍ジャパンとの強化試合でも2安打をマーク。打ちまくっているから自然と笑顔も生まれる……というわけでもない。
「今は早く実戦が来ないかなと。とにかく楽しみっす。ここ最近では余裕で一番楽しみっす。これまでは『打てなかったら落ちる』ってことばかり考えていたので。もう捨て身っすよ」
こう話していたのは、まだ宮崎春季キャンプが始まったころだった。第3クール以降から組まれたライブBPや紅白戦では気合が空回りし、なかなか結果が出ない時期もあった。それでも繰り返していたのは「楽しい」の言葉だった。
さらに井上の変化が如実に表れた場面があった。それは打撃ではなく走塁面だ。25日の試合では8回に安打で出塁した後に二盗を決めた。さらに23日の侍ジャパン戦でも記録には残らない“ワンシーン”があった。首脳陣も目を細める23歳の変貌ぶりに迫る。
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小久保監督が打撃よりも盗塁を称賛した「真意」
「アウトになってもいいや」と語る心境の変化
長谷川コーチが明かす打撃好調の理由「例年だったら…」
「サインが出た時に積極的に走って。打つだけじゃなくてね。(走塁の)タイム的にはそんなに遅い選手じゃないので、今日もいけたらいくかなと思いながらね。バッティングもずっと良いですからね」
中信兄弟との試合後、小久保監督が声を弾ませたのは井上の盗塁について問われた瞬間だった。井上はここまで1軍での通算盗塁はゼロ。昨季のウエスタン・リーグでも3盗塁(盗塁死は1)と、決して積極的に走るイメージはない23歳だが、今年は何やら様相が変わってきている。
これまでになかった「アウトになってもいいや」
23日の侍ジャパン戦。7回1死で中前打を放った井上は、2死後に野村勇の打席でスタートを切った。結果は見逃し三振に終わりチェンジとなったが、ここも果敢に二盗にチャレンジした。
「走っていいよっていう(グリーンライトの)サインが出ていたので。足は遅くないっていうだけで、決して速いわけではないですけど、常に先の塁を意識してやってます。練習試合なので、『アウトになってもいいや』くらいの気持ちで今はやっていますね」
これまで失敗ばかりを恐れていた男が「アウトになってもいいや」と考えられるほどまでに変わった。その意識は持ち前の打撃にも好影響を与えている。長谷川勇也打撃コーチはこう解説する。
「迷いなく振り切ってくれているので。キャンプ序盤からずっと強く振れていますよね。去年と比べて(技術面で)特別大きな変化はないと思いますけど、迷いがないので。例年だったらどうしてもバットの軌道とか腕の使い方をすごく気にしていた選手なんですけど、今年はそういったそぶりもないので。このままいってくれればと思います」
井上自身もキャンプ序盤にこう話していた。「今年は長打を増やしたいというのもそうですし、とにかく強く大きく振る。やっぱり去年は(スイングが)小さかったですよね。そこは意識してます」。そして、中信兄弟との試合後には再びこう口にした。「チャンスをもらったらできるだけアピールするだけなので。楽しみます」。その表情が全てを物語っていた。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)