今宮健太の“本気”を感じた紅白戦 読み込んだ「味方のデータ」…振り逃げに透けた決意

全力疾走を見せる今宮健太【写真:栗木一考】
全力疾走を見せる今宮健太【写真:栗木一考】

「3番・遊撃」で今年初の実戦に臨んだ

 野球人生の岐路に立たされた選手の“悲壮な決意”は、常に聞く者の心を揺さぶる。そういった言葉は、これまでの取材で何度も聞いてきた。それでも、1つ1つの「行動」から強い覚悟を感じさせられることは、それほど多くはない。

 宮崎キャンプ第5クール初日の19日、A組では今春3度目となる紅白戦が行われた。白組の3番・遊撃に入ったのが、今宮健太内野手だった。打つ方では3打数ノーヒットに終わったが、守備では持ち前の堅実なプレーを披露。今年初の実戦を無難にこなした印象だった。

「もう怪我をしたら『終わり』だと思っているので」――。これまで5度のゴールデン・グラブ賞を受賞し、昨季は前人未踏の100本塁打&400犠打を達成するなど、ホークスを長年支え続けた34歳は危機感をはっきりと口にする。この日の紅白戦で見せた“2つの行動”からは、その思いが偽りではないことがはっきりと表れていた。

 その1つは6回の場面だ。白組の先頭打者だった今宮は、打席に入る前にアナリストと何やら会話を交わしていた。この回からマウンドに上がったのは伊藤優輔投手。今宮の目線はアナリストが用意した“資料”に注がれていた。

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続きの内容は

記者が今宮健太の姿に感じた偽りのない“決意”
たった一言を残してバスへ…心を揺さぶられた「背中」
「怪我をしたら終わり」に“矛盾”する全力疾走

「あれは伊藤投手のデータですね。身内の球種とか軌道とかって知らないので。それを(今宮は)確認していました。チームメートのデータにまで目を通すことをやっている選手とやっていない選手で分かれますけど、きょうに限ればグラウンドに出てまでやっていたのは今宮さんだけでしたね。ベンチの中で(相手投手の特徴を)なんとなく聞く選手がほとんどかなと思いますけど。あれだけガッツリと確認する選手はほとんどいないですね」

 今宮の行動を明かしてくれたのは、松葉真平アナリストだ。シーズンに入れば試合中に対戦相手のデータを確認する選手は多いが、この日の紅白戦はもちろんチームメートが相手。それでも今宮は念入りに伊藤の特徴を頭に入れていた。

今宮健太(中央)と松葉真平アナリスト(右)【写真:栗木一考】
今宮健太(中央)と松葉真平アナリスト(右)【写真:栗木一考】

アナリストにつぶやいた「一番苦手なタイプですね」

「(伊藤は)カット系のピッチャーなので。今宮さんは『一番苦手なタイプですね』みたいな話もしましたね」。その行動から透けるのは、“たかが紅白戦”で終わらせないという今宮の思いだった。「S組で14日から合流して、この時期にすでにそういう意識でやられているのは本当にすごいと思いますね」。松葉アナリストも背番号6の決意を感じ取っていた。

 もう1つ印象的なシーンがあった。初回の第1打席で今宮は追い込まれると、ワンバウンドの変化球を空振りした。この場面、マスクをかぶった栗原陵矢内野手は捕球することができず、ボールを見失う間に今宮は一気に二塁を陥れた(結果は振り逃げ)。

 この一連の流れにも今宮の覚悟が見て取れた。振り逃げの可能性を常に頭に入れていたからこそ、すぐさま一塁にスタートが切れた。そして、栗原の処理がもたついているのを見逃さず、二塁まで到達した。

「怪我をしたら終わり」と話す34歳が見せた全力疾走。そこにレギュラー再奪取への決意が浮かぶ。どんな舞台でもアピールすることを忘れない行動に、今宮らしさが詰まっている。

 紅白戦後、球場を後にする今宮に声をかけると、「いつもやっていることなんで」の一言だけを残しバスに乗り込んだ。今更語るまでもないという思いが伝わってくる背中に、また心を揺さぶられた。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)