「世界一になって、またいい顔で会えるように」
いよいよ来月から開幕するワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。周東佑京外野手は世界一に輝いた前回大会に続き、侍ジャパンのユニホームに袖を通すことになった。「世界一になって、またいい顔でみなさんと会えるように頑張っていきたいと思います」。ファンの前で堂々と宣言し、ホークスの春季キャンプを打ち上げた。
今やホークスにとどまらず、全国の野球ファンから認知される存在となったスピードスターを、温かな眼差しで見つめる男がいる。「大学生の時から見ていますからね。これだけ活躍しても人間的に変わっていないんじゃないかなと思いますし、いい意味でしか成長していないような気がします」。周東をプロの世界に導き、長年見守り続けてきた“恩人”だからこそ語れる、背番号23の軌跡とは――。
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続きの内容は
スカウトが驚いた選手会長としての「意外な成長」とは?
走塁意識は「高くなかった」…若き日の周東に見た可能性
「打てない」と言われても…スカウトが感じていた「秘めた才能」
「性格面で言えば、素直なところは変わっていないですよね。ただ、まさか選手会長を任されるとは……。やることはちゃんとやる子でしたけど、リーダーシップがあるタイプではなかったので。コツコツと実績を残して、信頼を得たからこそ任されたと思います。それは本人の努力の結果ですし、そういう部分ではすごく大人になったと思いますね」
そう語るのは、周東をアマ時代から知る作山和英アマスカウトチーフ補佐だ。「前に出るタイプでもないですし、どちらかと言えば謙虚。自分の立ち位置の“見積もり”も高くはなかったので。こういう業界なので自信家な人間はたくさんいますけど、そこの根本は変わっていないですね。これだけタイトルを取っても、『こいつ過信してるな』という部分が見えたこともないですし。いい意味でしか成長していないような気がしますね」。
アマ時代に感じていた“もったいなさ”
今でこそ周東の超人的なスピードは誰もが知るところとなったが、作山スカウトはプロ入り前の印象をこう語る。「アマチュアの時も速かったですけど、そこまで走塁の意識は高くなかったのかなと。『もっと無双できるのにな』と思えるほどの足だと思っていましたね。経験さえ積めば、いずれ無双してくれるとは思っていたので」。その予感は見事に現実のものとなった。
圧倒的な走力とは対照的に、長年の課題は打撃力だった。しかし、作山スカウトはこう断言する。「期待値はありましたよ。プロに入れば周囲は厳しい目で見るから、『あとは打てればね』みたいな声も聞こえてきましたけど、僕はアマチュア時代からバッティングセンスはいいと思っていたので。多少非力な部分はありましたけど、足が速いのは筋肉の質が良い証拠なので。タイミングが合った時の飛距離は『お、こんな飛ぶんや』という印象でした。たから、バッティングもノーチャンスではないだろうなと思っていましたね」。
自主トレ期間や春季キャンプで2人は顔を合わせることもあるが、最近は食事に行くことはないという。「最近は全然ないですね。あれくらい(の立場)になったら『もう勝手にしてくれ。もっと心配な子がいるから』と。彼の性格的にも心配はしていないし、あとは結果が伴ってくれればいいなと思っていたので。僕からしたら盗塁王のタイトルを取ってくれただけで十分。『周東を取ってよかったな』と思えるところまでいってくれましたね」。そう語る作山スカウトの表情は充実感に満ちていた。
「まさかホークスに入って、ここまでの選手になってくれるなんて……。そんなビジョンはなかなか持てるものでもなかったですよね。本当にスカウト冥利に尽きるなと。もうありがたい話です」。数々のアマチュア選手を見てきたスカウトの口から出た“最大級の賛辞”――。それこそが、周東佑京の存在価値を如実に表していた。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)