小久保監督の目にも留まった秋広の“変貌”
3か月で遂げた“変貌”――。「去年の秋とオフでこんなに変われるんだなというので、目に留まりました」。小久保裕紀監督が驚きの声を上げたのは、秋広優人内野手の姿だった。フリー打撃ではバックスクリーンから右翼スタンドへ柵越えを連発。オフ期間を経て、最も変わった選手として名前が挙げられた。
昨年5月に巨人からトレード加入した23歳は、6月13~15日のDeNA3連戦で移籍後初本塁打を含む2度の勝利打点をマーク。3日連続でお立ち台に上がり、強烈なインパクトを残した。しかし7月3日にファームへ降格すると、その後は本塁打ゼロで2軍のままシーズンを終えるという悔しい1年を過ごした。
オフシーズンは11月から山川穂高内野手のもとでハードな練習をこなすと、1月は巨人・坂本勇人内野手のもとで自主トレに参加。打撃練習では高い放物線を描き、「成果が出ているのかな」と3か月の手応えを口にした23歳。しかし続けたのは「でも、そんな甘い世界じゃない」という言葉だった――。そこには今まで様々な重圧や挫折を味わってきたからこその“答え”があった。
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続きの内容は
過去の失敗が教えた「目先の変化」を捨てた覚悟
山川・坂本両師匠と積んだ「4倍の練習量」の真実
小久保監督が太鼓判を押す「近藤健介との共通点」
「正直、今までがフォームを変えすぎていたというか。大きくフォームを変えてから、実戦に入ってすぐ打てるほど、そんな甘い世界じゃない。でもそれを分かってはいたけど、どうしても目先の結果が欲しくて。ヒットが出ても、ダメになるとすぐ変えて、それでまた変えてという繰り返しだったので」
春季キャンプは、巨人時代も含めた6年間で5度目のA組スタートとなった。一方でこれまで実は開幕1軍が1度もない。「この時期に打球が飛ぶのは当たり前というか。去年も(中田)翔さんとトレーニングをしてきて、体も一番良い状態で入れるようにしていたので。今が良くても、やっぱり大事なのはここからというか……」。
オープン戦が始まると結果を求め、「コロコロ変えてしまった」と振り返る。だからこそ「自分を信じて一貫性を持っていきたい」と強い覚悟を口にする。
「去年までを“良い失敗例”にしたい。今、自主トレでやってきたことを突き通そうって思えるのは、これまでの経験があるからだと思います。多少の細かい修正は大事だと思いますけど、ぶれずにやっていきたい。その中で結果を出さなきゃいけないっていうのが難しい世界ではあるんですけど」
2人の師匠とのトレーニング「4~5倍はやっていた」
強い言葉を口にできるのは、“2人の師匠”と厳しいトレーニングを積んだ3か月間のオフがあるからだ。「今年は『これで打てなかったらしょうがない』ってくらい練習したので。今までやっていたトレーニングの4~5倍はやっていた。打球の飛距離はもちろん、体も強くなったと思います」と自身で成長を実感している。
山川からは、11月に自主トレを始めてすぐに「軸足の折れと体重移動」との指摘を受け、すり足から足を少し上げるフォームに変えた。「打球も強くなりましたし、角度も上がるようになっている。フォームもしっかり足を上げてタイミングをとったほうが強さは出ている。言われていないと発見できていなかったと思うので、大きかった」と手応えを口にする。
新フォームを体に染みつかせるかのように、アーリーワークから練習後の個別練習まで室内でバットを振り続ける。小久保監督も今の姿に「『近藤(健介)みたいに強く振りながらも打率を残せるんじゃない』という話を昨シーズン中にして。『もったいないな』って印象の打撃スタイルだったのが、今はあの身体を活かせている感じがします」と高く評価している。
今シーズンの目標は「ビールかけ」。2年連続で巨人、ホークスと所属チームがリーグ優勝する姿を2軍で見届けた。「すごく悔しいシーズンだった。なんとしてでもチームに貢献して、優勝の場にいられるように頑張りたいと思います」。未完の大器が覚醒する瞬間を誰もが待ち望んでいる。
(森大樹 / Daiki Mori)