周東の決意がにじんだ一言「5年後といっても35歳」
「5年後といっても、まだ35歳ですからね。どうなるか分からないでしょ」。23日に契約更改交渉を終えた周東佑京内野手。囲み取材で報道陣から「ホークスで現役を全うしようという決意があったのか」と問われ、答えたのが冒頭の言葉だった。「まだ35歳」――。その表現に、周東の強い“覚悟”が浮かんだ。
プロ野球界では「スピードタイプの選手は寿命が短い」と言われがちだ。加齢に伴い、持ち味が失われることで、現役引退へのカウントダウンが早まるというのがその理由だ。「やっぱり足の速い選手って怪我をして早く(現役生活が)終わりがちなところを、35歳までの契約をいただいたので。『そんなのに負けんなよ』って言われている気もしますね」。周東自身もその“通説”を意識している様子だった。
5年の長期契約を結ぶことに「迷いもあった」と正直な思いを明かした一方で、サインをしたからには、それに応える自信も当然ある。新たな道を切り開く覚悟を決めた男が挙げたのは、10年前に“レジェンド”が打ち立てた記録だった。
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続きの内容は
本多コーチ・今宮と比べた自己分析の“結論”
「スピードタイプ短命説」を覆す覚悟とは
後輩たちの道標となればいい…29歳の強い思い
「糸井(嘉男)さんも35歳で53個も走っていますし、なにをもって短命かっていうのも分からないじゃないですか」
周東が口にしたのは、2016年に当時日本ハムの糸井嘉男さんが35歳でマークしたシーズン53盗塁の“偉業”だった。10年前の出来事であっても糸井さんの年齢、そして盗塁数をさらりと出すことができたのは、それだけ強い意識があることの証だ。
自己分析によって導いた可能性「僕は後ろにずれ込むかも」
1軍に定着しはじめた2019年ごろには、口癖のように「いつ壊れてもいいという覚悟でやっている」と話していた周東。その考えはプロで年数を重ねるごとに、少しづつ変化していった。そんな中で球団から提示された「5年契約」。その重みは、自身が一番わかっている。周東が自己分析で導いたのは、30代になってもパフォーマンスを維持できる可能性だった。
「本多(雄一)コーチとかも(引退は)早かったですけど、あの人の場合は若い時からずっとレギュラーで出て、その蓄積があったかもしれない。今宮(健太)さんもそうですけど、20代前半からずっと出て、この何年かは怪我がちになっているのは、少なからず影響はあると思います。あれだけ運動量の多いポジションで、あれだけ長いこと守ってるっていうのは、どうしてもトレーニングだけで補えない部分が少なからずあるのかなと。それが原因なのかは分からないですけど、僕の場合は出ている期間が短いので。それが後ろにずれ込むかもしれないですよね」
プロ野球界の“常識”を覆すことが、大型契約を結んだ「責任」だ。「去年もそうですけど、(年俸が)1億円になって色んな人から『ここで満足するな』と言われましたし。僕みたいな選手がもっと大きな契約を取れたら、今までにないというか……。これからの選手の希望にもなるなと思ったし、このチームでやれるのが一番だなっていうのはずっと念頭にあったので」
野球人生で大きな決断を下した29歳の目は、すでに未来を見据えている。自らの歩みが、後輩の道標になればいい――。そんな強い覚悟がにじんだ5年契約だった。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)